
もはや国民食として、日本を代表する食として世界の人々から愛されているカレー。中でもレトルトカレーはこの数年で次々に新商品が開発され、スーパーには定番から専門店の味を再現したこだわり派まで、常時数十種類の商品が並ぶ。空港やSA(サービスエリア)も同様。地元の名物を具材にする商品が土産売り場に置かれるなど群雄割拠の様相を見せている。
超ピンポイント〟な場所の味を再現
そんなレトルトカレー界隈で話題となっているのが、社員食堂やバスセンターといった〝超ピンポイント〟な場所の味を再現した商品だ。
これまでに監修したカレーは200品以上、年間850食以上カレーを食するというカレー研究家の一条もんこさんは、この現象をこう分析する。
「総務省の家計調査によると2017年にレトルトカレーの購入金額がカレールーを上回りました。このあたりから様々な企業が独自のカレーを出すようになって、ご当地カレーが人気となりました。〝超ピンポイントカレー〟は、そんな『レトルトカレー人気』と『ご当地カレーブーム』が重なって生まれたものではないでしょうか」
そして、レトルトカレーの製造技術の進化も、このムーブメントを後押ししていると指摘する。
「製造工程が多様化して、扱えるスパイスの種類が増えたり、加熱殺菌の工程で熱に弱いスパイスの香りが飛ばないような技術が開発されたりしました。さらに少数のロットで製造ができようになるなど、メーカーの技術が年々上がっているのです」
こうした技術革新により再現できる味の幅が広がり、少数生産が可能となり少ない予算でもお試しで作ることができることから、各地で〝超ピンポイント〟な味を商品化する流れが生まれたのだ。
今後は「高校の学食カレー」「○○キャンプ場で食べたカレー」といった個人の思い出に寄り添った商品や「有名カレーパンの具」など、よりマニアックなレトルトカレーが登場するかもしれない。

カレー研究家 一条もんこさん
コンセプトはインドのお母さんの味
スズキ×鳥善『スズキ食堂インドベジタリアンカレー』各918円
インドに生産・開発拠点を持つスズキは、日本国内で勤務するインド人も多い。宗教上、ベジタリアンも多く、彼らが安心して味わえるベジタリアン向けのカレーを社員食堂で提供していた。今回、それをレトルトカレーに。発売わずか2日で5000食も販売した。


(1)『茶ひよこ豆マサラ』 (2)『大根サンバル』 (3)『青菜ムングダール』 (4)『トマトレンズダール』


「外国人従業員の食環境を改善するために生まれた味を多くの人に楽しんでほしいですね」(スズキ・鈴木俊宏社長)
〈もんこ’s VOICE〉どの商品も、野菜だけでこれほど旨味を出せるのは本当にすごい! 加熱処理をしているのにスパイスの香りもしっかり感じられる本格的な味です。
年間30万食以上売れるヒット商品
新潟交通商事『万代シテイ バスセンターのカレー』696円
新潟のバスセンターにある立ち食いそば店のカレーを再現した〝超ピンポイント〟レトルトカレーの草分け。内容量は220gと店同様にボリューミー。具もオーソドックスだが大きい。


〈もんこ’s VOICE〉〝昭和の味〟と呼ぶにふさわしい、とろみの効いたズッシリ感のあるカレー。旨味が強くて米に合う、何度食べても飽きのこない味です。
ふるさと納税の返礼品でも人気
総社市『そうじゃ消防署カレー』600円
約40年前に夜勤の消防員が夜食用として作り始めたカレーを商品化。オンラインショップや地元の土産店、アンテナショップで購入できる。総社市のふるさと納税の返礼品にもなっている。

〈もんこ’s VOICE〉牛すじの旨味がしっかりと出ていて、消防員の方の夜食というより、ちょっぴり贅沢なディナーといった味わいの欧風カレーです。
『タッチ』のカレーが登場!!
小学館『COFFEE南風青春の喫茶店カレー』756円
漫画家・あだち充先生公認! ヒロイン・浅倉 南の実家、喫茶店のカレーをイメージ。2025年8月以降発売予定。

©あだち充/小学館
取材・文/渡辺雅史 撮影/土橋位広 編集/寺田剛治
※本記事内に記載されている商品の価格は2025年6月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。