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リサイクルではないアップサイクルのビールが登場!伊予柑とパンのミミの素敵な出会い

2025.08.29

創業100年のベーカリーサンドイッチ用食パンを製造している栄屋製パン(神奈川県海老名市)が、オーガニック伊予柑とパンのミミを使ったアップサイクル・クラフトビール「Iyokan Juicy IPA(伊予柑ジューシーアイピーエー:IPAはインディアペールエールの略)」を開発、発売している。

有機農法で栽培した伊予柑の選別除外果実と、食パンのミミを使ったクラフトビールで、アルコール分3.5%と軽く、果実の薫り高いビールに仕上がった。特に猛暑の今年は、軽くてジューシーな味わいが話題になっている。

なぜパンのミミと伊予柑なのか、開発した栄屋製パンのビール部門を担当しているBetter life with upcycle専務取締役吉岡謙一さんに開発の背景を聞いてみた。

もともとある価値にさらに価値が加わるアップサイクル

栄屋製パンはサンドイッチ用パンの製造などを行っているが、毎日300~400kgのパンのミミが出る。ミミは軽いが空気を含んでかさばるので、1トントラックがほぼいっぱいになる。大量のミミはラスクなどに二次加工したり、家畜の飼料にもリサイクルしてきた。

「私どもではこうした大量のパンのミミを、長年、飼料などにダウンサイクルしてきて、それが当たり前の生産活動だったのです。でも、自分たちで作ったものに手をかけず、畜産農家に出せば解決される、というのは、何かおかしいなと感じ始めたのです」と吉岡さんは、開発のスタートについて振り返る。

できれば、もともとあった価値にプラスされて、新しい価値が生まれ、消費者にもっと喜んで受け入れられるような商品を作りたいと、リサーチしていた。

開発チームではパンとビールは小麦粉と水と酵母という、同じ原料で作られていたことを知った。パンのミミはもしかすると、ビールの原料になるかもしれない。吉岡さんは、パンのミミからアップサイクルしてビールにできるなんて、日本だけの魔法みたいだ、と感じたと言う。

「海外ではパンのミミはサンドイッチにしてもそのまま食べるのが普通です。むしろパンのミミは子どもが兄弟で取り合ってケンカをするような、美味しい部分で、食パンに占めるミミの割合は重量比で約40%もあります。でも、日本では食パンのミミをカットしたサンドイッチが好まれます。食習慣の違いから、日本だけで大量のパンのミミが廃棄物になってしまう。それが美味しいビールにアップサイクルできたら、本当に素晴らしいことだと感じました」(吉岡さん)。

ただし、アップサイクルできれば、商品はビール以外でも良かったと吉岡さんは言う。「同じ原料のものなのでどうかな?と作り始めたら、いろいろな人が相談にのってくれて、協力していただきました。そして、先輩たちの教えの通り、きちんと作っていたら、本当に素晴らしいビールに仕上がったのです」と、開発は順調だった。

フードロス再生製品の社会実装プロダクト

アップサイクルビールとして目指したのは「美味しいビール」であること。老舗食品メーカーとして、美味しさというのは絶対に外せない必須条件だった。誰もが納得できる味を追求するため、加えるフレーバーにもこだわった。

最初は地元の農家からイチゴを仕入れてイチゴフレーバーのビールを開発。イチゴの香りがするビールとして、好評だった。さらに地元神奈川県海老名市の泉橋酒造から日本酒を製造する時に削った米の白ぬか部分を使ったビールや、日本茶、黒文字を使ったビールなども製造してきた。

今年一月に有機JAS認証伊予柑を栽培するMOTTAINAI COCOLOFARM(愛媛県松山市)から提供された伊予柑の青い実の摘果果実を使ったクラフトビールを販売したところ、大変好調だった。これを受けて今夏、同じ伊予柑の、傷や形がいびつで販売できない選別除外果実を使ったビールを開発、本格販売することになった。

「私たちは毎日パンを作っていますが、できれば素材の力を社会に還元したい。要らないものではなく、それに力がある価値を付けたいのです。パンのミミと中身は、実は同等のものですから。そして、伊予柑だって、ヘタが取れていたり、小さくて流通で排除されているけれど、有機栽培で丁寧に育った果実です。どちらも作る思いは同じで、共感できました。農家さんたちが醸造所を見学されて、私達のビールづくりの姿勢にも共感して頂きました」(吉岡さん)

Iyokan Juicy IPAは7月から販売を開始したが、他のビール大手が一斉値上げで伸び悩む中、味と、「物語のあるビール」という点が受けて、大健闘を続けている。

パンのミミ同様、フードロスを原料としたビールを「味で勝負したい」と奮闘し、クオリティの高いビールを完成させたが、課題も多い。特に原料が農産物で、安定的に仕入れることができないので、人気が出ても、急に販売量を拡大させることが難しい。

また、パン業界では実績があっても、ビールの営業は初めてで、実店舗での販売が難しく、現在はECが中心である。しかし、数量限定で丁寧に作られたビールである点が受けて、少しずつ売り上げも拡大してきた。今後はビールだけでなくジンなど品種を拡大したいと考えている。酷暑の今こそ飲みたい、アップサイクルビールIyokan Juicy IPA。フードロスの成功事例としても、注目されている。

栄屋製パン(サカエヤ)
Better life with upcycle|Official Web Site

吉岡謙一さんプロフィール
1968年神奈川県海老名市生まれ、1992年株式会社栄屋製パン入社、製パン技術者として従事したのちに2010年専務取締役就任(現職)、2021年11月に同社酒販部門Better life with upcycleを発足、2024年2月に自社醸造所BD Labを開設してブランド代表を兼務。

文/柿川鮎子

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