
普段持ち歩いている“雑菌まみれアイテム”とは?
コロナ禍を体験した我々にとって消毒液などの感染症対策は今や“ニューノーマル”となっているが、身近に持ち歩いていながらもノーマークの“雑菌まみれアイテム”があった――。車のキーである。
スマホをこまめに拭ってきれいに保っている人は多いが、同じように身近な存在なのに無頓着のアイテムが車のキーではないだろうか。
イギリスの節約プラットフォーム「Money Supermarket」による新たな調査で、車のキーには携帯電話やパソコンのキーボードのほぼ4倍の細菌が存在していることが明らかになっている。つまり、車のキーは我々が持ち歩く物の中で最も不潔なものの一つなのである。
雑菌まみれの車のキーなのだが、調査によれば5年以上同じ車に乗っているドライバーの3分の1は車のキーを一度も掃除したことがなかった。そもそも掃除をするものだと認識していないのかもしれない。
ハンドル、ギアシフトレバー、ダッシュボードが細菌の温床になっていることはすでによく知られているが、専門家はキーそのものが危険なまでに見過ごされていると警告している。
車を使っている日は何度も手にする車のキーだが、移動先ではいろんな場所にキーを置くかもしれない。雑菌だけでなく、レストランのテーブルからジムの床、バッグの奥まで、あらゆるところにいる可能性のあるダニが付着するリスクもある。
車のキーにはスマホの4倍の雑菌
研究チームはイギリスのドライバー2000人を対象に、清掃習慣と車種に関する調査を実施した。また携帯電話(スマートフォン)、パソコンのキーボード、そして長年家庭で最も汚れやすいものの一つと考えられいるトイレの便座など、さまざまなアイテムを綿棒で擦ったサンプルを研究所で検査した。
結果は衝撃的なものであった。携帯電話の画面の平均細菌数は66個、パソコンのキーボードはそれをわずかに上回る68個であったが、車のキーはなんと241個であった。前者2つよりも4倍近く雑菌まみれであったのだ。
ちなみにトイレの便座の数値は1100個と最も高かったのは誰しもが頷けるところだろう。
分析を主導した英マンチェスターの細菌分析会社「Microbe Consulting Ltd」の取締役でサルフォード大学の微生物学者でもあるジョー・ラティマー博士は、車のキーの細菌レベルは依然として過小評価されている可能性があると指摘する。
車のキーで特定された細菌の中で最も多かったのは表皮ブドウ球菌で、これは通常皮膚に生息する細菌だが、手術の直後などでは命に関わる感染症を引き起こすことが知られている。
また細菌の多くは皮膚由来だったが、研究者らは少なくとも1組のキーに腸内細菌の痕跡も発見した。
ラティマー氏は報告書の中で、細菌はどこにでも存在し、人間の腸内には1平方センチメートルあたり 3300万個の細菌が存在すると説明している。
したがって、キーの細菌の数自体はそれほど大きな問題ではないが、身の回りのモノを衛生的に保つことは依然として重要である。また表皮ブドウ球菌は抗生物質に対する耐性を強めており、さらなる健康上の懸念が生じている。
車のキーの清掃に漂白剤の使用は厳禁
「Money Supermarket」の自動車保険専門家、アリシア・ヘンプステッド氏は自動車メディア「Drive」で車のキーの掃除方法を詳しく説明している。まず製造元に確認することが推奨されているが、基本的なクリーニングは簡単である。
「柔らかく湿らせた布と中性洗剤溶液を使用して外側を拭くと、車のキーフォブについた油脂や汚れ、細菌を取り除くのに役立ちます」とヘンプステッド氏は説明する。
「頑固な汚れや垢には、消毒用アルコールに浸したツマヨウジや綿棒を使用して、隙間やキーの間を掃除してください」(ヘンプステッド氏)
現代の車のキー、特にキーフォブには電子部品や回路が組み込まれているため、漂白剤の使用は厳禁である。漂白剤は強力な化学物質であるため、これらの部品を腐食させたり損傷させたりして、動作不全につながる可能性があるのだ。
「キーを水に浸さないことも重要です。これも電子部品や回路に問題を引き起こし、キーの動作に問題が生じる可能性があります」(ヘンプステッド氏)
BMWオーナーは潔癖症!?
調査では菌には直接関係のない興味深いオーナーの実態も明らかになっている。
驚くべきことに、車のオーナーの15%はスペアキーを持っていないと報告しており、キーを紛失した場合には窮地に陥ることになる。
フィアットのオーナーは1セットのみ所有する可能性が最も高く(27%)、次いでランドローバーオーナー(23%)、トヨタオーナー(20%)となっている。
一方、BMWオーナーは最も衛生意識が高く、57%が週に1回以上キーを掃除していると回答した。メルセデス・ベンツのオーナーは55%でこれに続き、ランドローバー(46%)、アウディ(43%)、トヨタ(41%)と続いた。
週一で車のキーを掃除している潔癖症気味のオーナーもいることもわかったが、多くにとって無頓着の車のキーの衛生状態を折に触れて気に留めておきたいものだ。
※参考記事
https://www.drive.com.au/news/dirty-little-secret-study-finds-car-keys-are-filthier-than-you-think/
文/仲田しんじ
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