SDGsの取り組みなどの影響に伴って、様々な分野で〝脱プラ化〟が進んでいる。BANDAI SPIRITSでもプラスチック廃材の有効活用を積極的に実践中だ。「ガンプラリサイクルプロジェクト」と名付けられた同活動について、担当者に話を聞いた。
「エコプラ」の組み立て体験会「ガンダムR(リサイクル)作戦」を展開
ガンプラを生産するうえで避けて通れないのが、その工程において余分なプラスチックを排出してしまうこと。パーツ同士をつなぐランナーも、ユーザーがガンプラを組み立てた後はゴミとなってしまうことも課題のひとつだ。
BANDAI SPIRITSでは、これらのことを解消すべく「ガンプラリサイクルプロジェクト」を発足。使用済みランナーの再利用を軸とし、2021年からアミューズメント施設などに回収ボックスを設置。現在までに累計約105tのランナーを回収済み。これをリサイクルした「エコプラ」の組み立て体験会「ガンダムR(リサイクル)作戦」も全国各地で開催している。
「これまで回収したランナーは、約70gの体験会キットの分だけで約150万個分。プロジェクト全体では環境負荷の軽減だけでなく、企業とファンによる循環型社会の形成を目指しています。ランナー回収にご協力いただくマインドが、幅広く環境負荷を軽減する行動につながっていくと信じています」
同社担当者がそう話すように、プロジェクトは着実に広がりつつある。「ガンダムR作戦」は全国47都道府県に規模を拡大。プラモデルを通してSDGsや工業生産を学ぶ授業を開くなど、同プロジェクトの活動は多角化が進む。
2025年4月には新たなリサイクル素材を活用するガンプラの商品化も果たした。2021年から研究を重ねて実用化した「ケミカルリサイクル樹脂」を、大阪・関西万博記念キットに使っている。
「同樹脂はPS(ポリスチレン)という素材を化学分解し、スチレンモノマーという原料に戻して再利用するというもの。PSと同じ強度で、新品同等のリサイクル素材を作れます。従来と同じ製法で同じものが作れる、循環型生産を実現した画期的な技術です」
今回は8枚のランナーのうち3枚に同樹脂を使用。今後はすべてのランナーへの利用が期待される。
「今回の商品で同樹脂を採用したのは、可動部や透明な色以外の外装に用いるPSのみですが、将来的にはより多くのパーツに使えると思います。課題は材料となる樹脂を良質な状態で大量かつ低コストでいかに回収できるか。現在は商品を運ぶトラックの戻り便の活用でコストを抑えていますが、グループ各企業との連携で可能性は広がっていくと考えています」
ガンプラで取り組んできたリサイクルプロジェクトの足跡
年々活動の幅を広げており、規模も拡大中だ。リサイクル技術の発展だけでなく、ファンとともに循環型社会を形成する意識も醸成している。
2021年4月
リサイクルプロジェクトを始動。
2021年11月
「ガンダムR作戦」を実施。
回収ランナーを活用した1/1ガンダムヘッド展示。
回収ランナーを100%マテリアルリサイクルしたエコプラで組み立て体験を実施。
以降、2025年度まで毎年実施。
2021年12月
「リサーキュレーションカラー」モデルを発売。
2022年10月
ガンプラアカデミアに回収ランナーを活用したエコプラ体験キット&コースを設立。
以降、2025年度まで毎年実施。
2023年
大阪府の小学校でガンプラアカデミアを実施。
色別にプラ材を回収し、2024年のカラフルエコプラへ。
2024年
化粧品容器回収とのコラボを実施。
不要なプラスチックを活用するバンダイの3つの方法

【1】ケミカルリサイクル
使用済みの資源を化学反応によって組成を変換させた後にリサイクルする。主な原材料は、BANDAI SPIRITSが全国で回収したプラモデルの使用済みランナー。具体的にはプラスチック素材のポリスチレンを粉砕して熱分解した後、原料のスチレンモノマーに戻し、再度、製品に活用する。強度や見た目は新品同様で、従来と同じ工程や製法でガンプラを作れるのが利点。


BANDAI SPIRITS『EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム
(EX-001 グラスフェザー装備)ケミカルリサイクルVer.』3960円

大阪・関西万博「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」内で建造された実物大立像を立体化。ケミカルリサイクル樹脂を重量ベースで約44%使用。ものづくりを持続的に未来につなげていく思いが込められている。
【2】サーマルリサイクル
焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用する方法。現在はリサイクル事業を手がけるパートナー企業との連携で、この仕組みを活用している。BANDAI SPIRITSが回収したランナーのうち、不使用分をパートナー企業に受け渡し、それを原料に発電された電力分の料金を、バンダイホビーセンターで使う電気料金の割引に充てているというわけだ。

【3】マテリアルリサイクル
使用済みのプラスチックを破砕・溶融・固形化して再利用を行なうリサイクル方式。異なる色のプラスチックを混ぜて使うため、新品のプラスチックのような色の再現が難しく、そのうえ強度についても通常のポリスチレンより弱くなってしまう。現在はリサイクル素材を使用したシリーズ「エコプラ」や、新素材の研究開発に利用されている。

過去にイベント限定で商品化してきた環境配慮モデル
BANDAI SPIRITS『MG 1/100ユニコーンガンダム
[リサーキュレーションカラー/クリアネオングリーン]』6380円
![『MG 1/100ユニコーンガンダム
[リサーキュレーションカラー/クリアネオングリーン]』](https://dime.jp/wp-content/uploads/2025/08/NGK-A_6ial4BhZSOI5mKT2-770x433.jpg)
『機動戦士ガンダムUC』の主役機キットにクリア系ネオンカラーを採用。リサーキュレーションをイメージしたシールが付属する。
リサーキュレーションカラー
廃棄ランナーをリサイクルして作られた黒っぽいエコプラの素材に、鮮烈なネオンカラーを組み合わせたシリーズ。コントラストが強いスタイリッシュなカラーリングで、循環する未来を象徴している。
BANDAI SPIRITS『ENTRY GRADE1/144 RX-78-2 ガンダム
[クラシックカラー]』1100円
![『ENTRY GRADE1/144 RX-78-2 ガンダム
[クラシックカラー]』](https://dime.jp/wp-content/uploads/2025/08/NGK-B_153_5167_s_3vkc5x9q8f6kboidg2be7trmvsjh-770x433.jpg)
根強い人気を誇る『RX-78-2 ガンダム』のエコ素材モデル。温かみのあるカラーリングや、抜群の組み立てやすさが特徴だ。
クラシックカラー
産業廃棄物の「卵の殻」を配合した「卵殻プラスチック」を部分的に使用。循環から生まれた成形色そのものの色みで、ポリスチレン樹脂と生物由来の素材を複合させ、環境負荷を低減している。
取材・文/高橋 智 編集/田尻健二郎
©創通・サンライズ
※一部の撮影画像は開発中のものを撮影したものです ※一部の画像は開発中の設計データを使用したCGです/画像はイメージです
※本記事内に記載されている商品の価格は2025年6月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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