
政治家の安野氏がダボダボのスーツ姿で登院し、ネット上で批判が集まりました。単なる流行のスタイルと思いきや「だらしない印象」と世間に受け取られてしまったようです。では、ダボダボスーツ、いわゆるオーバーサイズスーツはどのような場面で許され、どのように着こなすべきなのでしょうか。今回は、DIME編集部が年間100件の様々なお客様の悩みに服装コーディネートを行なっている服装のプロ、パーソナルスタイリストの勅使河原さんに話を聞きました。
ダボダボスーツはなぜ流行しているのか?
近年、ダボダボスーツは若者を中心に人気を集めています。その背景には1990年代のストリートカルチャーのリバイバルがあるのだという。
「ゆったりとしたカジュアルスタイルが再び注目され、スーツも自己表現の一部として楽しむ時代になっているのです。さらに、リモートワークの普及でビジネス服のカジュアル化が進み、着心地ときちんと感を兼ね備えた”ゆったりスーツ”への注目も高まっています。着心地がよく、動きやすいことと同時に、ある程度のきちんと感も残せるスーツが求められているのです」
ダボダボスーツの魅力は、まず第一にファッション性の高さ。
一般的なスーツよりも自由な雰囲気を演出できるため、他者との差別化が容易に可能。さらにきちんとした印象のスーツよりもカジュアルに着こなせるため、硬すぎず柔らかい印象を与えることができる。
「特に若い世代にとって、着心地とおしゃれ感を両立できる点は重要です」
とファッションのプロ、勅使河原さんも「ダボダボスーツ」そのものには好意的である。
なぜ安野氏のダボダボスーツは批判されたのか?
しかし、安野氏のケースは、サイズが合っていないスーツを着ている印象を与えてしまったことが問題だった。
「意図的にゆったりさせたスタイルではなく、ただ大きすぎるスーツを着ていると、ファッション性よりもだらしなさが目立ってしまいます」と勅使河原さんは指摘する。
この微妙な差が、ネット上での批判につながったのだろう。
では、ダボダボスーツをきちんと着こなすにはどうすればよいのだろうか。
「まずジャケットの着丈は、お尻の2/3程度を隠す長さが理想です。袖丈は腕を下げた時に手首のくるぶしが隠れる程度に抑えると、着られている印象を避けられます。シャツの袖はジャケットから1〜1.5cm見えるくらいが適切です。また、肩の縫い目は肩先とぴったり合うことが重要で、これだけでも見た目の印象が大きく変わります。ダボダボスーツであってもジャストサイズのスーツであっても、基本は同じです。丈や肩の位置を守るだけで、だらしなく見えるリスクは格段に下がります」(勅使河原さん)
ダボダボスーツに適した場面と不向きな場面
ダボダボスーツは、カジュアルでファッション性を重視する場面でこそ力を発揮する。
「友人との集まりやイベントなど、若い人たちが中心の場では自由な着こなしが受け入れられます。しかし、フォーマルな場面や重要なビジネスシーン、年齢層の高い人が多く集まる環境では、だらしない印象を与えやすいため不向きです。
ダボダボスーツが許される年齢についても誤解が多いようですが、実際には年齢よりも着こなしとTPOが重要です。ジャケットの丈や袖の長さ、肩幅に合ったスーツを選んでいれば、幅広い世代でダボダボスーツを楽しむことができます。年齢よりも、清潔感と場に合ったコーディネートを意識することが、ダボダボスーツを上手に着こなすポイントです」(勅使河原さん)
安野氏の事例から学べるのは、ダボダボスーツは正しいサイズ感と着こなしさえ押さえれば、快適かつおしゃれに着られるということだ。
カジュアルな場面や若い世代向けのイベントでは積極的に取り入れてもいいが、フォーマルな場面では慎重さが求められる。TPOに合わせた着こなしに不安があるなら、パーソナルスタイリストに相談してみるのもいいかもしれない。
取材協力/勅使河原祐子さん(パーソナルスタイリスト)
取材・文/峯亮佑