
防災に向けた服装選びは意外と難しい。災害時、避難時などさまざまなシチュエーションが考えられるからだ。しかし、できる限り荷物はコンパクトにしておきたい。服装のプロ曰く「そのまま快適に過ごせる」服装が理想だという。その理由を探る。
災害時におすすめのトップスは「パジャマ」
年間100件の様々なお客様の悩みに服装コーディネートを行なっている服装のプロ、パーソナルスタイリストの勅使河原さんに話を聞いた。
「災害時のトップスとして、厚手の長袖パジャマやスウェットは特におすすめです。
災害は深夜や早朝に起こる可能性があります。そのため、避難時にパジャマのまま飛び出さざるを得ないケースも少なくありません。厚手の長袖パジャマやスウェットであれば、寒暖差から体温を守ることができ、避難所に着いた後もそのまま休めるため、就寝用としても避難用としても万能なのです」
意外にもNGなのが「吸湿速乾Tシャツ」だ。夏場の防災ウェアとして備えている人も多いのではないだろうか。
「薄手のTシャツや吸湿速乾Tシャツは、一見便利に思えますが、災害直後は冷えやすく防寒不足になりやすい点には注意が必要です。「避難時は動きやすさや機能性だけでなく、そのまま快適に過ごせるかも大切なポイントです」
動きやすさと快適さを兼ね備えたボトムスもやっぱり「パジャマ」
トップスと同じくボトムスも重要。勅使河原さんはトップスに合わせて、厚手のジャージパンツやスウェットパンツ、ゆったりワイド系のパンツをお勧めするという。
「ゆったりした作りは長時間座る避難所生活でも締め付けが少なく、動きやすさを確保できます。さらに裾を絞れるタイプなら、ほこりや虫の侵入も防げます」
デニムは丈夫だが、濡れると重く乾きにくい点で災害時には不向きなのだという。
足元は意外と革靴が活躍する
靴選びにも意外な選択が正解だという。
「厚底やローヒールなど、しっかりした厚さのある靴底の靴が推奨されます。さらに防水加工された革靴やビジネスシューズも有効です。瓦礫や水たまりの上でも足を守りやすく、革靴は水や汚れに強い加工がされていれば、長時間の歩行にも耐えられます」
靴に関しても多くの人が備えているであろうタイプにNGがあるという。
「一般的なキャンバススニーカーは濡れると重く乾きにくいため、災害時には不向きです」(勅使河原さん)
災害時の服装は、いかに「そのまま快適に過ごせるか」がカギだという。厚手のパジャマやスウェット、ゆったりしたボトムス、そしてしっかりした靴を選ぶことで、避難時の寒さや不便さを最小限に抑えられる。さらに、ファッションアイテムとしては大判ストールやマフラーは防寒だけでなく目隠し、毛布などさまざまな用途があって便利だという。防災ウェアという思い込みで準備をするのではなく、より具体的な使用シーンをイメージして選ぶことが災害時ウェアの正解と言えるだろう。
取材協力/勅使河原祐子さん(パーソナルスタイリスト)
取材・文/峯亮佑