
ガンプラが誕生して45年。DIME最新号は、プラモデルの常識を打ち破ってきたガンプラ45年の軌跡と”その先”を徹底取材! 雑誌の中でも紹介したホビージャパンの木村 学編集長はユーザーとして、モデラーとして、ホビー誌の編集者としてそのほとんどに関わってきた。雑誌に掲載しきれなかったお話や長いガンプラ歴の中で、エポックメイキングなキットは何か聞いた。

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第一次ガンプラブームの最中『ガンプラパトロール』
まずはガンプラとのファーストコンタクトから。木村編集長は第一次ガンプラブームの直撃世代だ。
「小学校でガンプラが流行っていて、買ってないと友達との話題についていけないんです。それに影響されて始めました。僕はガンプラを始める前から模型が好きで、当時のスーパーカーブームもあって自動車のプラモを作っていたんですよ。ある日、友達の家に集まってプラモを作っていたんですが、友達がトイレに行こうとしたとき、僕のスーパーカーのプラモを踏み潰したんですよ。ぺったんこになってしまった、それを見て友達が『お前よかったやん。カウンタックみたいになったやん』て言われて! なぜかそれがきっかけで『俺もガンプラ作ってやる!!』って思いたったんです。最初に買ったのは『1/2400ホワイトベース』。これが作りたかった! というより、手に入ったから……という感じでしたが(笑)」
こうしてガンプラを買うようになった木村編集長だが、ブームの真っ只中ということもあり簡単には手にできなかった。しかし「そんな経験も楽しかった」という。
「僕は大阪の枚方市出身で、近くのダイエーでよくガンプラを探していました。売ってない時は、寝屋川ぐらいまでチャリで模型店を回っていましてね。僕らはこれを『ガンプラパトロール』と呼んでいました(笑)」
木村少年はグラフィックデザイナーの父親からプラモ作りの楽しさを教えてもらい、大人顔負けのガンプラを作っていたが、そこは小学生! 子供らしい遊び方もしていた。
「子供にとってガンプラは貴重なんですけど、作って飾るんじゃなく、とにかく〝遊び〟倒しました。マブチモーターをズゴックにつけて、池を泳がせていましたね。帰ってこなくてそのままどこかに沈んでしまったことも(笑)。極め付けは、爆竹をぶち込んで爆発させる!! 壊れたら『ダメージバージョン』なんて言って、プラモ本来の楽しみ方をしていました」
木村編集長の人生を変えた『HG 1/144 RX-78ガンダム』
中学、高校では野球に打ち込み、ガンプラは嗜む程度。しかし、大学生の時に劇的な出会いによって模型作りに復帰する。
「大学は美術系の学部に進みました。なので、ガンプラを楽しんでいる人がたくさんいたんですが、そのうちの1人が『HG 1/144 RX-78ガンダム』を大学に持ってきたんです。中高生時代はガンプラから少し離れていたので、見た時にはあまりの出来の良さに衝撃を受けました。それをきっかけに久しぶりにガチでガンプラを作り始めました」
子供の頃より工具やエアブラシが進歩していたことに加え、昔磨いた腕もあって、木村編集長が作るガンプラはかなりのレベルだった。
「バンダイでアルバイトをしていた友達から紹介してもらい、ホビーショーやイベントに飾る塗装見本を作るようになったんです。その後『コミックボンボン』(講談社)に掲載する完成品を作る仕事、そして今僕が働いている『ホビージャパン』からも依頼を受けるようになるなど、プロモデラーとして働くようになったんです」
大学卒業後、ホビージャパンに入社。ガンプラとの関わりはさらに深くなっていく。そんな木村編集長の人生の中で忘れられないキットは、1990年にガンプラ10周年を記念して発売された『HG 1/144 RX-78ガンダム』大学で友人から見せられた〝あのガンプラ〟だ。
「これがなかったら僕は多分、ガンプラに戻ってきていませんでした。『システムインジェクション』という技術を使って、1つのボディの中に青、黄色、赤が成形色で埋め込まれていることに、本当に驚きました」
もう1つが1995年発売の『MG 1/100 RX-78-2 ガンダム』だ。マスターグレードはガンプラ15周年を記念してスタートしたシリーズで、これはその第1弾。
「この頃のガンプラは迷走期というか、いろんな技術を試していた時代だったんです。それが一気に変わったのが、このMGガンダムです。ホビージャパンで『究極のガンプラ作る』という連載をやって、読者の意見を吸い上げながらバンダイと一緒に開発しました。発売日には模型店の社長から『すごい行列だ。50人ぐらい並んでいて、みんなMGガンダムが目当て。こんなの何十年ぶりだ』と喜びのお電話をいただきました」
3つめが1998年発売の『PG 1/60 RX-78-2 ガンダム』。
「マスターグレードが『究極のガンプラ』なら、PGは『至高のガンプラ』と呼んでいます。RX-78はバンダイが力試しをするアイテムなんです。だからRX-78を見ていくと、ガンプラの歴史と進化のポイントが俯瞰できるんです」
何回組んでも飽きない『MG 1/100 RX-78-2ガンダム Ver2.0』
この3キットのほかに、木村編集長には決して忘れることができないガンプラがあるという。
「『MG 1/100 RX-78-2ガンダム Ver2.0』です。僕のベストガンプラの1つですね。これまでのMGのガンダムはアレンジされて、胸の黄色いダクトが外に出ちゃったりとか、肩がいかつくなっちゃったりしているんですけど、Ver2.0はシルエットが安彦良和さんが劇場版で描いたガンダムのシルエットのままなんです。胸のダクトはちゃんとしっかり収まっているし、なで肩だし、頭部のひさしも尖ってなくて丸い! 僕はこのガンプラが大好きで10体ぐらい作ったと思います。何回組んでも飽きないんですよね」
仕事でも趣味ではもガンプラに深くかかわってきた木村編集長。これからのガンプラにこんなことを期待している。
「ガンプラは今、おじさんの趣味になりつつあるんです。だから若い層にアプローチするため、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のような新たなテレビ版ガンダムを放送したんだと思うのですが、これからもずっと続けてほしい! 今の子供たちはスマホとかゲームばっかりやっているのが、ちょっと寂しい。僕たちの子供や孫世代にも受けるようなガンダム、ガンプラを作り続けてほしいですね。だって、楽しいんだから……」
取材・文/金子長武 撮影/タナカヨシトモ
(C)創通・サンライズ
DIME最新号は、プラモデルの常識を打ち破ってきたガンプラ45年の軌跡と”その先”を徹底取材!付録は模型趣味で大活躍する「赤いリューター」!完売寸前なので書店やコンビニへGO!!
