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高速道路の「新しい深夜割引制度」が改悪といわれる理由

2025.08.17

2025年4月、NEXCO中日本管轄内の高速道路で大規模システム障害が発生した。

これはETCという、世界最先端の高速道路キャッシュレス決済システムの在り方に大きな影を落とすものでもあった。出口料金所では渋滞が発生し、その際のNEXCO中日本の対応があまりにアナログチックだったことも批判の対象になった。

このシステム障害の影響は、今年7月に実施予定だった「新しい深夜割引制度」にも及んだ。従来の「ワンタッチ3割引」から内容が大幅改定された新制度であるが、今現在は実施が延期されている。

が、この新制度実施の延期を喜ぶ声がXで相次いでいるようだ。なぜか?

新制度では「ワンタッチ3割引」は廃止

NEXCO3社が実施している現行の高速道路料金深夜割引制度を、筆者は「ワンタッチ3割引」と表現している。

この深夜割引制度の対象時間帯は0時から4時まで。この間に入口料金所をくぐれば、出口料金所を抜けるまでの走行距離分にかかる料金から30%が直接割引される。たとえ午前3時50分に入口料金所を通過し、その後3時間高速道路を運転して午前7時に出口料金所を通過したとしても、とにかく割引適用時間帯にタッチしているのだから3割OFFが適応されるという仕組みだ。

非常に単純明快で、小学生程度の算数の知識があれば計算に困ることはない。

ところが、新制度ではそうはいかない。

新制度では割引適用時間帯が22時から5時に拡大されるが、割引が適用される範囲はあくまでも対象時間帯に走行していた距離分のみ。今までのように、少しでも対象時間帯にタッチしていれば全走行距離分から割り引かれるという仕組みにはなっていないのだ。

暗算できないほどの複雑さ

さらに、新制度には極めて複雑な計算式が用いられる。

割引適用時間帯に全距離を走行した場合の計算式は、以下の通り。

割引後料金=通常料金×(100%-(割引適用時間帯の走行距離÷全走行距離×30%))

また、「割引適用時間帯を跨ぐ場合の割引適用時間帯の走行距離の算出方法」というのも設定されている。

22時・5時の前後2点のETC無線通信専用アンテナなどの通信記録(時刻・位置)から算出した平均速度を用いて(同一速度で走行したものと見なして)、22時・5時の位置を推定

これらの計算式を暗記し、すぐに暗算できるという人は決して多くないはずだ。そのため、NEXCO3社は「深夜割引料金シミュレーター」を使うよう呼び掛けているが、そこまでやらなければ正確な割引額を割り出せないほど複雑な制度になってしまった事実は否定できない。

その上で、新制度には「利用1時間当たりの上限距離」というものも導入される。

相次ぐ非難の声

また、新制度の割引は料金からの直接割引ではないという点にも注目したい。

「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」へのポイントとして、後日還元される形に変更されてしまうのだ。

「されてしまう」という表現を使ったが、ETCマイレージサービスは自らの手で能動的に登録しなければいけないものだ。つまり、会員でない人には深夜割引が適用されないということである。

これに対してXでは「複雑過ぎ」「公平ではない」「改悪」という否定的な声が集まっている。ETCを最大限活用すれば公平な割引制度を提示できるとNEXCO3社は踏んだのだろうが、あまりに複雑難解な計算式は結果的に「対応できる人・対応できない人」を生み出してしまうことが制度開始前から視覚化されてしまった。さらに、オンライン署名プラットフォームChange.orgに深夜割引新制度に反対する署名プロジェクトが登場した。まさに「総スカン」という言葉が相応しいほど、大衆からの非難を食らう羽目になったのだ。

だからこそ、4月のETC大規模システム障害の余波で深夜割引に関する新制度の実施が延期された時は、Xに歓喜の声が溢れた。「このまま新制度自体がボツになってくれ」という声まであるほど。

「嫌なことは考えなかった」NEXCO中日本

現状、NEXCO3社は新制度の導入を諦めてはいない。とはいえ、導入時期は「未定」としている。

4月の大規模システム障害は、NEXCO中日本の危機管理意識の問題を容赦なく露わにした。「もしもETCのシステム障害が発生したら、料金所でどのような対応を行うのか?」を事前にどこまで計画していたのか。ETC中日本は、該当期間に高速道路を利用していた車両とそのドライバーに対して当初は「料金の後日払い」を求めていた。が、あまりに非現実的な料金徴収の仕方であったため、これはのちに撤回された。

一連の対応を俯瞰すると、NEXCO中日本には「嫌なことは考えない」という日本人の典型的な悪癖があったと言わざるを得ない。予め「嫌なこと」を考えておけば、トラブル発生後の対応ももっとスマートに実施できていたはず。その悪癖を改めない限り、複雑な計算式を用いる新制度の運用には常に大きな不安が伴ってしまう。

そうした角度から、今後のNEXCO3社の動向に注目し続ける必要があるだろう。

【参照】
高速道路の深夜割引の見直しについて-NEXCO中日本ドライバーズサイト
高速道路の深夜割引見直しに向けたシステム整備の状況について-NEXCO中日本企業情報サイト

文/澤田真一

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