
2025年11月15日から26日まで開催される『東京2025デフリンピック』まであと100日となった8月7日、この大会に向けた記念イベントが東京・世田谷、二子玉川駅近くで行われた。
「デフリンピック」って知ってる?
「オリンピックやパラリンピックは耳なじみがあるけど、『デフリンピック』って何?」という人も多いかもしれない。
オリンピックがトップアスリート、パラリンピックが肢体や視覚、知的障がいのある選手が出場する大会であるのに対し、デフリンピックは聴覚に障がいのあるアスリートが出場する国際的な大会だ。名称の由来になっているデフ(Deaf)は、英語で「耳がきこえない」という意味。競技中は補聴器などを外して、全員がきこえない立場で公平に競うことになっている。
参加資格は裸耳状態で、聴力損失が55dBを超えている障がいのあるアスリート、かつ、各国のろう者スポーツ協会に登録している者。また、競技会場に入ったら練習時間か試合時間かは関係なく、補聴器等を装用することも禁止されている。
その歴史は古く、夏季大会は1924年にフランスで第1回が開催。今回の東京は、ちょうど100周年となる記念すべき大会となっている。開催頻度は4年に1度で、夏季大会と冬季大会(1949年にオーストリアで初開催)を2年ごとに開催している。
今回の東京大会で実施されるのは、
・陸上 ・バドミントン ・バスケットボール ・ビーチバレーボール ・ボウリング ・自転車(ロードレース) ・自転車(MTB) ・サッカー ・ゴルフ ・ハンドボール ・柔道 ・空手 ・オリエンテーリング ・射撃 ・水泳 ・卓球 ・テコンドー ・テニス ・バレーボール ・レルリング(フリースタイル) ・レスリング(グレコローマン)
の全21競技で、耳がきこえない選手たちのために、フラッグやランプを活用したシステムを導入している以外、すべてオリンピックと同じルールで実施される。
セレモニーには出場選手や都知事、応援アンバサダーなどが登場
午前10時に始まったセレモニーでは、まず小池百合子東京都知事が登壇。「あと100日となって、高まる期待を肌で感じています。大会は、障害の有無に関わらず互いに尊重し合う共生社会作りにつながることになります。今回はデフリンピック100年にあたる記念すべき大会です。あと100日、そしてこれからの100年へとつなげていくように、みなさんと共に進めていきましょう」と呼びかけた。
続いて登壇したのは、一般社団法人全日本ろうあ者連盟副理事長の河原雅浩氏。「デフリンピックの競技運営は伝統的にろう者当事者が中心でした。東京大会は、きこえる人ときこえない人、きこえにくい人と協働で役割を分担しています。その状況を、多くの人が会場に来て理解してほしいです。また、認知度が上がってきています。ぜひ、競技会場で選手たちを応援してほしいです」と語った。
事実、東京都が都民を対象として実施した調査(2025年1月24日発表)では、2023年には14.8%だった認知度が、2024年には39.0%と24.2ポイントまで上昇。このデータからもデフスポーツに対する関心度が高まっていることがわかる。
また、スポーツ庁長官の室伏広治氏は「日本で初めて開催される今大会に向けて、厳しいトレーニングを続けてきたと思います。出場される選手の方々は、母国開催の大会でぜひ活躍してほしい」と、同じアスリートらしいエールを送っていた。
大会の主人公は、やっぱりデフアスリート
セレモーでは、日本代表に内定している卓球の亀澤理穂選手、陸上の山田真樹選手、バレーボールの中田美緒選手、水泳の茨 隆太郎選手(左から)も壇上に。それぞれが母国開催の大会への熱い想いと決意を語った。
声援がきこえないデフアスリートへ〝目でみる応援〟『サインエール』を!
一般的にスポーツの応援は、観客が声を出して行なう。しかし、デフアスリートたちはきこえない・きこえにくい。そこで今大会に向けて日本手話言語をベースに複数の動きを組み合わせた「サインエール」が、ろう者を中心にしたメンバーとデフアスリート自身も参加して創られた。つまり視覚的、目で見てわかる声援だ。
基本動作は「行け!」「大丈夫 勝つ!」「日本 メダルを つかみ取れ!」の3つ。この動作のレクチャーが、サインエール応援団とみやぞんさん、富栄ドラムさんなどによって行なわれた。
メダル・メダルケースもお披露目
また、2024年9月1日~2024年10月14日の間に、全国の小学校、中学校、高校生(年齢相当含む)の投票により選ばれたデザインのメダルもお披露目された。
表の折り鶴は選手たちが大きく羽ばたき活躍することを願い、いくつもの線が混じり合うデザインは、世界とのつながりを表している。またリボンは「藍鉄色(あいてついろ)」という緑色を含んだ濃い青色で、江戸時代の人が好んでいた色。そしてケースは東京産の木が使われている。
この日、セレモニー終了後の会場内や周辺では、一般の人向けに「きこえない世界」を〝見て〟知るイベントや展示なども多数行なわれ、1日中賑わっていた。
「東京2025デフリンピック」まであと100日。世界中から集まるデフアスリートの健闘を祈りつつ、実際に参加・応援することで、ろう者に対する理解を深めていきたい。
「東京2025デフリンピック」開会式・閉会式一般観覧者の募集も開始!
8月31日まで、東京体育館で行なわれる同大会開会式・閉会式の一般観覧者も募集中。入場無料なので、ぜひふるって応募を。
【募集詳細】
申込期間:~2025年8月31日(日)、23:59
【募集詳細】
・開会式:2025年11月15日(土)16:30~19:00(予定)
・閉会式:2025年11月26日(水)16:30~18:00(予定)
・場所:いずれも「東京体育館」東京都渋谷区千駄ヶ谷1-17-1
・入場料:無料(一部支払方法、発券方法のかかる手数料は応募者負担)
【募集区分】
●一般席
1組最大4名まで申込可能
●ファミリー優先席
・開催日時点で同行者小学生以下の子どもが1名以上いる人が対象
・1組最大4名まで、12歳以下の子ども2名以上での申込が必要
・乳幼児でも座席を使用する場合は、同行者に記載
●車いす席
・車いす使用者とその同伴者1名が対象
・1組最大2名(介助者を含む)まで申込可能
・車いす用スペースからの観覧
【申込方法】
イープラス
*電話やハガキでは応募は受け付けていません
【結果通知】
・2025年9月19日に応募者のメールにアドレスに通知予定
取材・文・撮影/松尾直俊