
SNSや動画配信などで見かけるデジタル広告を取り巻く環境は、ブランド毀損リスクやターゲティングの精度低下、広告のノイズ化などさまざまな課題が加速度的に拡大しているといわれている。
AI「Brain」やEコマースネットワークなどを提供しているRoktは、広告主と一般生活者を対象に「デジタル広告に関する意識調査」を実施して、その調査結果をまとめたレポート『デジタル広告の実態とデジタルリテールメディアの可能性』を発表した。広告主と消費者は、どんな課題や懸念を抱いているかを浮き彫りにして、リテールメディアがそういった状況の中でどんな価値が提供できるかを検証した内容だという。
消費者の85%は不適切なサイト上でみた広告に悪印象
今回の調査では、消費者の85.0%が「信頼できないサイト上の広告」で広告主に悪印象を抱くと回答しており、広告が表⽰される場所によるブランド毀損のリスクの可能性が明らかになったという。
これは、広告が表示される“場所”が単なる運用課題ではなく、企業の信頼とブランド価値そのものを左右する重大な問題になっていることを浮き彫りにしている。広告主の視点では、76.0%が不適切な媒体や文脈での広告表示に対して懸念を抱いており、69.9%がブランドセーフティのための工数やコストの増加を実感していた。
消費者の視点で見ても64.8%は、「信頼できない、あるいは怪しいと感じるWebサイトや動画コンテンツ上に広告が表示されているのを見たことがある」と回答している。信頼できるコンテキストで広告が表示されることと実在の人間ユーザーに確実に広告が届く配信設計であることがデジタル広告ではより重要になっているといえるだろう。
ターゲティング精度低下や広告疲れで広告主と消費者に不幸な実態
Cookie規制やアップルのIDFA規制など個人情報取得の制限強化で精度の高いターゲッティング広告配信は難しくなったが、関連性の薄い広告が表示されることが増加することで広告主の約7割が「広告効果の低下」を実感している。
さらに消費者の約8割は「無関係な広告への不快感」を覚えており、双方にとって課題になっているという。デジタル広告主の約8割が広告場所の懸念を表明しているが、その解決策として広告主の7割以上が「デジタルリテールメディア」を評価しているという。
広告疲れとノイズ化の進行
ユーザーが1日に接する広告量が増加したことで「広告疲れ(Ad Fatigue)」が深刻化しているが、消費者の90.7%が情報収集時に表示される広告を「邪魔だと感じることがある」と回答。やはり意図しないタイミングの広告は、「ノイズ」として嫌われているようだ。
この状況は、広告主に対して悪印象を抱くリスクも高めているという。広告主は、「情報を届けたい側の都合」ではなく「ユーザーが情報を求めている瞬間」を捉えることが重要で、ユーザーが何をしているときにどんな広告が表示されるのかという設計がこれまで以上に重要になるといえるだろう。
解決策としてのリテールメディア
今回の調査でデジタル広告が抱えるリスクに対して、解決策として挙げられるのがデジタルリテールメディア。ブランドセーフティたアドフラウドのリスクが低いことやCookieに依存せず高精度なターゲティングができるといった点が肯定的に評価されているという。
調査では広告主の79.1%が「リテールメディア広告は、ほかの広告より好意的に受け止められると思う」と回答しており、「買い物モード」時に表示される広告という文脈性が評価されているという。課題を抱えるデジタル広告は、さまざまな取り組みによって広告主と消費者の信頼を取り戻していく努力は必要だが、一方でデジタルリテールメディアの可能性にも注目すべきだろう。
調査概要
■「デジタル広告とリテールメディアに関する意識調査(2025年)」概要
調査対象:広告主(デジタル広告責任者及び担当者)、一般生活者
回答者数・割付方法:広告主400名/一般生活者1000名
調査期間:2025年7月7日~2025年7月9日
調査方法:インターネット調査(インターネットリサーチ)
実施主体:Rokt
調査委託先:マクロミル
https://www.rokt.jp/
構成/KUMU