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LUUPが三輪の小型ユニバーサルカー「Unimo」で狙うシニア市場

2025.08.13

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

Luup」は、年齢や性別を問わず多くの人々に利用できることを目指した、三輪の小型ユニバーサルカー「Unimo(ユニモ)」のコンセプトモデルを発表した。

年齢、性別、身体能力を問わず安心して乗れて自転車並みのスピードも可能

「日本が直面する課題として、交通空白地域において足が不足する地区は地方、都市部問わず日本中に多く存在しています。LUUPは創業以来、この課題を解決するためにマイクロモビリティのシェアサービスを提供してきました。しかし、現在の利用者は主に20代から50代で、中でも20代、30代の方が特に多いというのが現状です。

私たちは創業以来、若者から高齢者までのすべての方々の移動課題の解決を目指してまいりました。その願いが実現される幅広い世代のための新車両が、構想から6年かけて誕生したユニバーサルカー『ユニモ』です」(Luup代表取締役CEO 岡井大輝氏)

同社は2019年から高齢者を対象とした試乗会や実証実験を行っており、座るタイプや立ち乗り四輪など、低速で走るモビリティを実証実験を通して探ってきた。その中で高齢者から、「自転車は疲れるし、転倒が怖い」「シニアカーはスピードがあまり出ないので、免許を返納した後の車の代わりにはならない」「マンションだとシニアカーを置く場所がなく困っている」という声が多くあった。

「高齢者の方々から、『若者も乗れるようなかっこいい車両が欲しい』『見た目もよく楽しく乗れて、快適な移動ができる車両がいい』という声も直接いただきました。シニアカーのようないかにも高齢者向けとわかるデザインは望んでいないことがわかったんです。

一人乗りの免許不要の車両は、スピードが出る乗り物としては自転車、電動アシスト自転車、電動キックボード、時速6km以下で歩道領域を走る乗り物としてはシニアカーと電動車椅子があります。

高齢者でも安心して乗ることができるシニアカーや電動車椅子は、低速であるがゆえ移動範囲が限られているので、免許返納した後にその代わりできないという方が多く存在するということが分かりました。

身体能力によらず乗ることができ、走行スピードが一定出るような乗り物にニーズがあると実証実験を通じて気づきましたが、それを実現するには非常に高い壁がありました。

自転車同等の速度は時速20km前後ですが、同等の速度を走行する三輪や四輪の車両は、カーブを曲がるときに姿勢の安定性を保つことが非常に難しくなります。年齢や性別に関わらず安心して乗れるユニバーサルカーとしてはまだ課題がありました。

そこで、モビリティ業界において圧倒的な技術力を誇るアイシンと、デザイン力を誇るGKダイナミックスとタッグを組ませていただき、この課題に挑戦することになり、構想から6年かけて、ようやく実現することができました」(Luup岡井氏)

ユニモに搭載されている新技術「リーンアシスト制御」は、速度やハンドルの動きに合わせてモーターが車体の傾きを自動でアシストし、自転車と同等の速度でも安定した姿勢をサポートする。

開発した「アイシン」は、自動車部品、エナジーソリューション関連機器の製造販売を行っている会社で、自動車部品では「走る、曲がる、止まる」のすべての領域に渡る製品を取り扱っている。

「リーンアシスト技術は、私が東京大学で元々研究していた技術をベースに開発を進めてきたものです。一般的な二輪車は、速度が落ちてくると安定性が低下してくる状況になります。主な理由としては、ハンドルを切った時に車両が発生できる安定性の復元力が、車速の二乗に比例する傾向を持っているためです。

リーンアシスト制御は、低速のときに大きくアシストトルクを加えて、高速のときにアシストトルクを少し抑える、といった制御をすることで、あらゆる車速領域において安定性と、自然な運転特性の2つを両立するようにチューニングをしているものになります。

リーンアシスト技術を搭載した車両は、ユニモが初となります。この技術をうまく使うことで、今回のようなユニバーサルモデルの実現に貢献できたらと思っています」(株式会社アイシン 技術開発本部 先進開発部 プロジェクトリーダー 荒木敬造氏)

ユニモは、後ろが二輪、前が一輪の三輪車両で、16歳以上であれば運転免許不要で乗車ができる特定小型原付となる。制限速度は、車道通行時は時速20km、一部の歩道や路側帯の通行時は時速6km。

既存の自転車等と違いストッパーが不要で、乗車していてもしていなくても直立するため、走行時、静止時の安定性があり、幅広い世代が取り扱える。

走行中、カーブを曲がった時に重心が振られると踏ん張るために運動神経が必要となるが、

ユニモには姿勢の自動アシスト制御が搭載され、椅子部分が直立で傾くように自動制御されており、運動神経に寄らずにしっかり安定する形で、身体的負担が少なく乗ることができる。

若者から高齢者まで分け隔てなく乗りたいと思えるユニバーサルデザインも特徴。デザインは動態デザインをテーマとしている「GKダイナミックス」が担当した。

「動態デザインとは、人、物、ことの関係性から生まれる、動的な力を形状としてデザイン表現し、人の心と身体を拡張し、生きる活力を生み出すことで、その行動の変容や社会のダイナミズムを創造していくデザインです。

ユニモについては、コンパクトな車体ですが、年齢、性別、体格などの違いを選ばず楽しく乗りたいと感じていただくように、ユニバーサルカーを体現するスタイリッシュなデザインを目指しました。

ユニモには3つのデザイン要素があります。1つ目はシンプリズム。運転経験がない人でも気軽に使える親しみやすさと簡単な操作性を目指しました。外装をすべてカバーで覆うことで、視覚的な複雑さもなくし、シンプルでわかりやすい印象を与えています。

2つ目は、遠くからでもすぐに認識できるこれまでにないシルエット。真っ白でシンブルな形状でありながら、既存のLUUPを連想させるようなスタイリングを目指しました。

3つ目は車体を包むライティングです。このモデルの大事な要素で、すべての光を一つのなめらかなループにまとめ、機能と感情を一つのシンプルな形に落とし込み、感動を与えるデザインを目指しました」(株式会社GKダイナミックス デザイナー ランディー・カダルマン氏)

アプリと連動し、利用者に合わせて最高速度や走行補助機能をパーソナライズができる点も大きな特徴。常にソフトウェアと連動し、安全な姿勢制御や走行など、ソフトウェアでアップデートすることでハードウェア自体が進化させることができる。

年齢、性別、運動神経等、乗る人のユースケースに合わせて乗り心地や安全制御の機能自体をパーソナライズできるので、高齢者が乗る場合、家族が不安であれば特定の安全制御を付け足せば、何かあった時に家族に通知が行くようにすることも可能。歩道領域だけ、または車道領域だけで乗りたい、両方で乗りたいといった利用状況に合わせてパーソナライズできる。

「今後の展望としては、既存のLUUPと同様にマイクロモビリティシェアとして、ユニモの普及を通じて、街じゅうを“駅前化”するインフラをつくり、日本全国の地域交通の課題解決に貢献していきたいと考えています。

社会実装までには、さらなる安全性向上、自動運転技術の搭載や量産などさまざまな挑戦がありますが、まずはコンセプトモデルを通じて全国各地の方々と対話、連携させていただくことで、前進させていきます。

今後、試乗会等を実施した上で、2026年度中を目途に複数地域で実証実験を行い、シェアリングサービスへの本格導入を検討していく方針です。実証実験の実施等にご興味のある自治体や企業の方は、特設サイトhttps://lp.luup.sc/unimo よりご連絡いただければと思います」(Luup岡井氏)

【AJの読み】歩くのが不自由している人が実感する1マイルモビリティのありがたさ

岡井CEO自身が指摘していたように、LUUPといえば、若者が使う電動キックボードのシェアリングサービスというイメージが強い。ユニモのコンセプトモデル発表で「創業以来実現を目指していた、幅広い年齢の方々を乗せるものをようやく作ることができた」と岡井CEOは話す。

ユニモが実現できた背景には、法整備により特定小型原付という車両区分ができたこと、車体の傾斜角を制御することで、二輪車並の幅の狭い車両においても高い走行安定性を実現できるアイシンの「リーンアシスト制御」技術に寄ることが大きい。

LUUPといえば電動キックボードのイメージが強いが、電動アシスト自転車も提供しており、足のケガの後遺症で1kmを歩くのも辛い筆は、仕事や旅行先で駅から少し離れた場所へ移動する際に、LUUPの電動アシスト自転車を活用している。

地方部はもちろん、高齢者の地域の足の問題が見過ごされがちな都市部においても、免許返納後の交通手段や、歩くのに支障がある場合など、さまざまな人々の短距離移動手段として、ユニモは交通空白を埋める役割を担うことが期待される。

取材・文/阿部純子

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