
レクサスの「GX」シリーズは、2002年に北米市場を中心に販売を開始。ボディーオンフレーム構造のSUVとして、高い走破性とレクサスらしい上質な内装を両立させたモデルとして人気を得た。発売以来、世界約30の国や地域での販売累計台数は約54万台を超えるヒット商品となっている。
3列シートの7人乗り、22インチホイールを装着
最新モデルは2023年6月に米国テキサス州オースティンで初めて公開され、2023年末から販売を開始しているモデル。その人気は世界各国で高く、日本市場への投入は先延ばしされてきたが、2024年4月にようやくレクサスから国内販売に関してのメッセージがあり、2024年の秋頃を目途に通常販売するということになっていたが、実際には2025年4月から国内販売が始まった。
実は通常販売に先立ち、オフロード走行に特化した18インチホイールを装着した「オーバートレイル」を約100台、抽選販売していたが、これはあくまでも先行販売だった。2025年4月からのモデルは「GX550バージョンL」がメイン。こちらは3列シートの7人乗り、22インチホイールを装着し、電動格納式のステップを採用した上級モデルだ。
2023年デビューの新型はプラットフォームをGA-F(グローバルアーキテクチャー・F)を採用。ボディーオンフレーム構造だが、路面追従性を向上させるE-KDSS(エレクトロニックキネティックダイナミックサスペンションシステム)を採用するなどの工夫が施されている。伝統のリヤリジッド式サスを踏襲しながらも悪路走破性はハイレベルに仕上げられているのだ。
パワーユニットも刷新された。エンジンはV6、3.4Lのガソリンツインターボを搭載。カタログなどでは3.5Lと記載されているが、正式には排気量は3444ccなのでここでは3.4Lと表記する。最高出力は353PS、最大トルク650Nmで、新開発の10速ATを組み合わせている。燃費はカタログのWLTCモードは8.1km/Lだが、試乗中の実走燃費は6.5~7.0km/Lだった。
豪快な加速を体感!
このエンジンは1500回転あたりからレスポンスが良くなり、3000回転以上になるとさらにトルクは太くなり、全長5m、全幅2m、全高1.9m、車両重量2.5トンの大きなボディーをグングン引っ張る。試乗中に公道での計測でも0→100km/hの加速は7秒台を記録した。この時、V6ツインターボは、レッドゾーン5800回転の手前あたり、5500回転までスムーズに吹き上がり、豪快な加速を体感することができた。
一方で、高速巡航では10速で100km/hの時のエンジン回転数は1400を記録。V6、3.4Lのガソリンエンジンはユルユルと回っていたが、1500回転あたりからレスポンスもよくなるので、高速巡航中の加速も歯痒い思いをせずに済んだ。エンジン音の高まりは3000回転をオーバーしてからなので、一般的な高速巡航は、静かな室内を保っていられる。
ただし、コーナーが続くようなワインディングや首都高速のようなシーンはあまり得意ではなさそうだ。セレクトダイヤルは「カスタム」「スポーツS」「スポーツ」「ノーマル」「コンフォート」の5つのモードを選択できる。「カスタム」以外のモードでは、全体に操舵力は重めだった。「ノーマル」「コンフォート」では直進時からの切り込みやコーナーでの切り込みでの反力が強めなので、コーナーが連続するシーンでは結構ハンドルと戦う場面が多かった。この動きを心地良い疲労と表現すれば「GX550」はオンロードでもスポーツ走行できるクルマだといえる。
さらに乗り心地は各モードや速度域によって変わるのだが、例えば、街中の10~40km/hでは、「ノーマル」はタイヤからのゴツゴツ感があり硬めの印象。「スポーツ」はゴツゴツ感がやや強くなる。「コンフォート」は細かい上下動が伝わってくるという具合だ。60km/h、100km/hでの動きも微妙に異なるのだが、一般公道で各モードでの違いはもう少し明確にしたいところ。そのほうが切り替える楽しみが大きくなるはずだ。
タイヤはダンロップの「グラントレックH/T31」の265/50R22という大径サイズを装着していたが、これもオーバークオリティーだった。購入したら20インチサイズでベストマッチなタイヤを探すのが賢明だ。
最後に居住空間について。ホイールベース2850mmのGA・Fプラットフォームに3列シート7人乗りをレイアウト。2列目は座席のスライドはなく、4対6の分割。着座位置はやや高めで、足元の狭さは感じない。足先が前席下に入るのでラクだ。床面中央のトンネルは幅広だが中央に座った人は足を乗せることができる。
乗降性は自動電動格納式のサイドステップと、ドア内側のハンドグリップがとても使いやすくてラク。そして2列目の座席はダブルフォールドで折り畳まれ、広い荷物用空間にもなる。3列目は床面が高く、着座姿勢は若干、膝をかかえるような姿勢になるが、空間は確保されており、身長165cmぐらいまでなら、中距離のドライブでも苦情は出ないだろう。3列目への乗り降りも、2列目がWフォールドして、前席の後ろに収まるので、座席の前に広めの空間が生まれ、ラクに動くことができる。この3列目は後部荷室側面のスイッチで、倒すことも起こすこともできるし、荷室も広い。
レクサス「GX550」はワインディングを走る楽しみはないが7人がワイルドライフを求めて出かけるには最高の移動体だといえるだろう。
■関連情報
https://lexus.jp/models/gx/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博