
生成AIプラットフォームの利用を取り入れた中小企業が、自社のオウンドメディアを作ろうと思案する。ライターは人間ではなく、Chat GPTだ。
筆者がこの記事を書いているまさにその最中、Open AIがGPT-5を発表したという報道が舞い込んだ。GPT-5の頭脳は、もはや博士号を持つ専門家と同等とのこと。
このChat GPTを使えば、外部からライターを呼ぶ必要がもはやなくなるのではないか。どんな記事でもChat GPTつまりAIが書いてくれる。予算面で大きな余裕があるとは言えない中小企業にとっては、これ以上ない話である。
が、ここで少し立ち止まって考える必要もある。AIは本当に間違えないのか? AIは本当に嘘をつかないのか?
AIは人間のライターの代替になるのだろうか?
「自分に関する記事」を書かせてみる
ライターという仕事は、フリーランスという形態にしたほうが本人にとってはより多くの仕事が舞い込む場合もある。
なぜなら、「文章を書く」というスキルを持っている人は意外に多くないからだ。それが資料を揃えてそれに目を通して徹頭徹尾破綻のない文章を書く……となると、これはもはや1日2日で身につくスキルではない。企業が自社オウンドメディアに掲載するためにそうした記事を作るとしたら、どうしても外部のフリーランスライターにその仕事を依頼するしかないのだ。
しかし、2025年の現代にはAIプラットフォームというものが存在する。
Chat GPTを使って、たとえば特定の人物に関する記事を書こう。記事そのものでなくとも、記事の根幹となる構成や裏付け資料をAIに抽出させたら、その後の作業はプロのライターではない自社の社員でもできるはずだ。
というわけで、ここからは中小企業のA社がライターの澤田真一、即ち筆者を紹介する記事を書こうとしているという想定でやっていこう。
Chat GPTに「ライターの澤田真一についての記事を書いて」と入力する。筆者の記事は@DIMEだけでなく様々なメディアでほぼ毎日のように配信され、Yahoo!ニュースにも転載されているから、AIの学習材料には困らないはずだ。
僕は「過激な主張をするライター」だったのか?
入力からほんの10秒足らずで出た記事は、以下の通り。
ライター・澤田真一:独自の視点で社会を切り取る文筆家
澤田真一(さわだ・しんいち)氏は、鋭い観察眼と豊かな表現力を武器に、時事問題からサブカルチャーまで幅広いジャンルをカバーする日本のフリーライターである。
多彩なテーマに挑む執筆活動
澤田氏の筆は、一般的なニュース解説にとどまらず、現代社会のひずみや、人々の心の奥底にある感情、あるいはネット社会の裏側にまで深く切り込んでいく。冷静な視点と独特の語り口で知られ、読者からは「斜め上からの分析が面白い」「皮肉が効いているが的を射ている」といった評価を受けている。
また、一部では都市伝説や陰謀論といったセンシティブなテーマにも切り込む姿勢を見せ、読者の知的好奇心を刺激している。
執筆媒体と活動範囲
澤田氏は、ウェブメディアやオンライン雑誌などを中心に活動しており、いわゆる「バズ記事」から硬派な評論まで幅広い文体を使い分ける。SNSを通じて自身の意見を発信することもあり、一定のフォロワー層から注目を集めている。
また、最近ではYouTubeチャンネル「澤田オフィスの秘書サンたち」との関わりも話題になっており、映像や企画構成の面でも活動の幅を広げつつあるようだ。
評価と議論
その率直な言葉選びや、ときに過激とも捉えられる主張が注目を浴びる一方、批判も少なくない。特にネット論壇においては賛否が分かれる人物でもある。しかし、彼の書く文章が常に「誰かの目を覚まさせる」ようなインパクトを持っていることは否定できない。
今後の展望
社会の変化が加速する現代において、澤田真一という存在は、言葉の力で問いを投げかける「異端のジャーナリスト」として、ますます注目されるだろう。多くの賛同と少しの炎上を引き連れながら、今日も彼はキーボードを叩き続けている。
さて、答え合わせをやっていこう。
まず、名前が間違っている。筆者は「澤田真一」と書いて「さわだ・まさかず」だ。この特殊な読み方のせいで、今年5月から施行された改正戸籍法にいろいろと難儀したことは@DIMEで過去何回か記事にしている。
戸籍のフリガナ登録義務化がスタート、読み方を間違えられやすい人は正しく登録されているのか?
5月26日施行の改正戸籍法により、日本国民は全員もれなく「戸籍へのフリガナ登録」をしなければならなくなる。 言い換えると、これは日本人一人一人に対して「能動的な…
また、「一部では都市伝説や陰謀論といったセンシティブなテーマにも切り込む姿勢を見せ、読者の知的好奇心を刺激している」「その率直な言葉選びや、ときに過激とも捉えられる主張が注目を浴びる一方、批判も少なくない。特にネット論壇においては賛否が分かれる人物でもある」という点も「?」と首を捻らざるを得ない。陰謀論に関する記事なんて、書いたことあったっけ? 「ときに過激とも捉えられる主張」って、一体何だ? 全く身に覚えがない……。ちなみに、「澤田オフィスの秘書サンたち」というYouTubeチャンネルを運営しているのは本当だ。
よくよく考えてみると、Chat GPTが抽出した澤田真一に関する記事の本文は、別に澤田真一でなくともいい気がする。他のライターの名前を適当に当てはめたとしても、まぁ7割方は正しいということになってしまうのではないだろうか。
有名人の記事を作らせてみると…
もっとも、筆者澤田真一はしがない零細フリーライターである。このままでは「もっと名の知れた有名人の記事を書かせろよ!」 と言われてしまうだろう。
そこで、今度はプロレスラーのジャイアント馬場に関する記事をChat GPTに書かせてみた。なぜジャイアント馬場かって? 筆者が尊敬している人物だからだ!
ジャイアント馬場──“世界の巨人”が築いたプロレス王国
■ 巨人、野球からプロレスへ
ジャイアント馬場(本名:馬場正平 ばば・しょうへい)は、1938年に新潟県三条市に生まれた。身長209cmという恵まれた体格を持ち、当初はプロ野球選手として読売ジャイアンツに入団。長嶋茂雄と同時期に活躍することを期待された逸材だったが、怪我により野球を断念。
その後、力道山に見出されてプロレスの道へ。1960年にプロレスデビューを果たす。
■ 世界を驚かせたジャイアントの風格
1960年代にはアメリカへ渡り、NWA(ナショナル・レスリング・アライアンス)などで大活躍。特にアメリカ南部のファンからは「ジャイアント・ババ」として絶大な人気を誇った。
シンプルながら重みのある技──16文キック、ジャンピング・ネックブリーカーなど──は、“大きいだけではない”と世界に証明する説得力があった。
■ 全日本プロレスの創設者としての功績
1972年、アントニオ猪木と袂を分かち、自らの団体「全日本プロレス」を設立。馬場は「王道プロレス」と称される、分かりやすく正々堂々としたスタイルを標榜し、数多くの名勝負を提供した。
ジャンボ鶴田、天龍源一郎、三沢光晴、川田利明、小橋建太ら次世代のスターたちを育て上げ、日本のプロレス文化に根を張らせたその功績は計り知れない。
■ 人柄と哲学──「決して他人を否定しない」
馬場は人格者としても知られ、多くのレスラーや関係者から深く慕われていた。若手には「まず飯を食わせろ」と語り、外国人レスラーにも必ず礼を尽くした。
生涯を通じて「プロレスとは何か」「どうすればファンを裏切らずに済むか」を考え続け、経営者としても、レスラーとしても、完全に自己犠牲を貫いた。
■ 最期とレガシー
1999年1月31日、ジャイアント馬場は肝不全によりこの世を去った。享年61。訃報が流れると、日本中のスポーツ紙が一面で追悼を報じ、ファンだけでなく他競技のアスリートからも悲しみの声が上がった。
彼の死後も「王道プロレス」の精神は息づき、多くのプロレスラーたちがその哲学を継承している。
■ 終わりに
ジャイアント馬場は、ただのレスラーではなかった。スポーツマンであり、経営者であり、教育者でもあった。「世界の巨人」と呼ばれたその背中は、今もなおプロレス界の誰もが追い続ける“道しるべ”であり続けている。
早速間違いがある。「特にアメリカ南部のファンからは“ジャイアント・ババ”として絶大な人気を誇った」という部分だ。プロレスマニアなら、アメリカ南部は全体的に見れば「田舎のテリトリー」だったことはよく知っているはずだ。若き日の馬場が主戦場にしていたのはニューヨークと五大湖周辺地域で、60年代はこのあたりが一番「稼げる地域」だったのだ。南部とは比較にならないほどのカネが動いていた。
それともう一つ、「若手には“まず飯を食わせろ”と語り」という部分。馬場がそう言っていた事実を裏取りしてみたが、今に至るまでソースが見つからない。本当にそのような言葉を残した可能性もあるが、一方でChat GPTはソースのリンク貼りをしてくれなかった。
つまり、ChatGPTが出した「馬場の言葉」はハルシネーションの可能性が高いということだ。
実際に会った「AI製記事の炎上案件」
2024年11月、福岡県の地方創生キャンペーン『福岡つながり応援』の公式メディアが炎上するという事態が発生した。
その理由は、「他県の施設が福岡県の施設として紹介されている」「存在しない架空のイベントが紹介されている」というものだった。福岡県には「篠栗焼き」という名物が存在し、福岡市内に「うみなかハピネスワールド」という施設がある……という記事を掲載してしまったのだ。「篠栗焼き」も「うみなかハピネスワールド」も、この世に存在しない代物である。
この記事は、AIで作成されたものだった。AIは嘘をつく……というよりも、嘘を「嘘」と認識できずにそれが事実だという前提で話してしまうことがある。
以上の理由から、オウンドメディアに掲載する記事をAIに作らせる場合、結局は人間によるファクトチェックが絶対不可欠なのだ。この問題は、AIプラットフォームが賢くなればなるほど顕著な課題として我々の背中にのしかかるだろう。
文/澤田真一
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