
何か騒動が起こると、むしろそれをきっかけに注目される企業やサービスが必ず出てくる。モバイルバッテリーレンタルサービス『ChargeSPOT』がまさにそれだ。
スマホアプリを使って、街中にあるバッテリースポットでモバイルバッテリーを借りる。料金の支払いは、もちろんアプリと紐付けしたキャッシュレス決済だ。今やコンビニエンスストアや飲食店でよく見かけるものになったChargeSPOTだが、嬉しいことにこのサービスは海外にも進出している。Uberのように、渡航先でもいつもと同じアプリを利用できるということだ。
そして、このChargeSPOTが航空業界を脅かす「モバイルバッテリー出火問題」に一定の解決案を提示する可能性もある。
「モバイルバッテリーの機内持ち込み」に厳しい制限が
リチウムイオン電池式モバイルバッテリーは、強い衝撃や劣化をきっかけに出火してしまうことがある。
これは交通事業者にとっては厄介な問題で、日本でも電車内で乗客のモバイルバッテリーが火を噴いたということがあった。自家用車で移動中にモバイルバッテリーから白煙が上がった、ということも報告されている。
旅客機も例外ではない。
モバイルバッテリーを機内に持ち込む人は少なくないはずだが、このモバイルバッテリーがフライト中に出火するという事故が今年相次いだ。この出火が原因で、旅客機の上部が完全に焼け落ちてしまう事故も起きている。それを受けて、各国の航空当局はモバイルバッテリーの機内持ち込みに対して厳しい制限を設けるようになった。
日本の国土交通省も、迅速な行動を起こしている。
スマートフォン、タブレット端末やゲーム端末等の携帯用電子機器の普及拡大により、モバイルバッテリーを持ち運ぶ方が増えていますが、モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、外部からの衝撃等による内部短絡や過充電等により発熱、発火等のおそれがあります。
現在、国土交通省では、国際民間航空機関が定める国際基準に基づき、機内預け入れ荷物にモバイルバッテリーを含めることを禁止しているほか、機内持込みについても持込み可能なモバイルバッテリーの個数・容量を制限しているところです。
(中略)
こうした中、国土交通省では、機内におけるモバイルバッテリーの発煙・発火等への対応を強化し、客室安全の一層の向上を図るため、航空関係団体(定期航空協会)と連携し、本邦定期航空運送事業者の統一的な取組として、本年7月8日から、以下の2つを協力要請事項として新たに講ずることとしましたので、ご理解ご協力をお願いいたします。
(モバイルバッテリーを収納棚に入れないで!~7月8日から機内での取扱いが変わります~-国土交通省)
これはあくまでも法的強制力のない協力要請事項ではあるが、それでも国交省のこの通知に日本のキャリアは即座に従った。モバイルバッテリーを座席の真上にある収納棚に入れる行為は、今では航空会社の規約で禁止されている。もしも火災が発生した際、収納棚にあると即座に対応できなくなってしまうからだ。
タイで急速拡大中のChargeSPOT
いずれにせよ、モバイルバッテリーを機内に持ち込むこと自体が難しくなってしまった。
となると、海外進出を果たしているモバイルバッテリーレンタルサービスの意義が今まで以上に大きくなることは必定だ。渡航先で借りて、渡航先で返却できるサービス。これがあれば、わざわざ自前のモバイルバッテリーを持参する必要はなくなる。
ありがたいことに、日本人に人気の渡航先タイにはChargeSPOTが進出している。以下はChargeSPOTの運営会社INFORICHが2024年10月1日に配信したプレスリリースだ。
モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT™(チャージスポット)」を運営する株式会社INFORICH(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:秋山 広宣、以下 INFORICH )とタイでフランチャイズ契約を結ぶCHARGESPOT Thailand(本社:タイ/バンコク、CEO:Rosupa Hongladarom)は、7-Elevenおよびセブン・デリバリーを運営するCP All Public Company Limited,(本社:タイ/バンコク、CEO:Yuthasak Poomsurkakul)とパートナーシップ契約を締結しました。今後7-Eleven店舗での設置を拡大することで、2024年末までに1800箇所、2025年までに2500箇所でのサービス提供を目指します。これにより、旅行者や地元住民にとって利便性の高い充電環境を提供することで、タイ全土でのサービス強化を図ってまいります。
(タイ国内 7−Eleven で「ChargeSPOT」の設置を拡大。2025年までに2500箇所以上のサービス拠点を目指す-PR TIMES)
セブンイレブンは、タイでもよく見かけるコンビニである。日本と同様にコンビニを足がかりにした進出戦略により、ChargeSPOTはこの国でもポピュラーなサービスとなったのだ。
バンコク、パタヤ、チェンマイ、そしてプーケットやサムイ島では、ChargeSPOTのステーションをあちこちで見かけることができる。このサービスを使い慣れた日本人にとっては、非常に心強い光景だ。
筆者自身、今年は既に2回タイに渡航しているが、ChargeSPOTのおかげでスマホの充電に困ることは一切なかった。
「その国で借りてその国で返す」のがベター
ただし、注意すべき点もある。
ChargeSPOTは、国境を超えたバッテリー返却もできるサービスだ。しかし、だからといってChargeSPOTのバッテリーを機内に持ち込むことはお勧めできない。「今やモバイルバッテリーの機内持ち込みにリスクが発生し、それを避けるためにサービスを利用する」のだから、基本的には「その国で借りてその国で返す」。
日本で普段使っているアプリが、そのまま海外でも利用できるのだ。この利便性に気づいた時、海外旅行は何十倍も面白いものになるだろう。
【参照】
ChargeSPOT
モバイルバッテリーを収納棚に入れないで!~7月8日から機内での取扱いが変わります~-国土交通省
タイ国内 7−Eleven で「ChargeSPOT」の設置を拡大。2025年までに2500箇所以上のサービス拠点を目指す-PR TIMES
文/澤田真一
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