
昆虫の王様・カブトムシ、子どもたちにも大人気ですよね。日本のカブトムシは見慣れている方も多いかもしれませんが、世界にはびっくりするようなカブトムシが数多く存在しています。今回はそんな世界のカブトムシに注目し、どのカブトムシが最強なのか?について迫っていきたいと思います。
世界のカブトムシたち
カブトムシとは一般的に甲虫目コガネムシ科カブトムシ亜科の仲間のことを指し、世界中から1600種程が知られています。日本では4種しか知られていませんが(幻のように記録が少ない種を入れると7種)、東南アジアや中南米などの熱帯地域には数多くのカブトムシが生息しています。ここでは、世界各地を代表するカブトムシ6種について紹介させていただきます。
(1) ヘラクレスオオカブト
中南米に生息する超巨大カブトムシで、オスの長く伸びるツノは圧巻の存在感です。写真の個体は上翅が黄色いですが、周りの湿度が上がりジメジメしてくると黒になり、湿度が下がって乾燥してくると黄色に戻るという習性を持っています。
(2) エレファスゾウカブト
中南米地域に生息する巨大カブトムシで、金色の毛で覆われています。少し怖そうな見た目をしていますが、性格は比較的温厚で、戦うことは多くありません。しかしながら、夜、灯りに飛んでくると、灯りを覆うガラスが割れてしまうことがある程の威力を持っています。
(3) ティティウスシロカブト
アメリカ合衆国東部に生息する種で、真っ白な体をしています。日本のカブトムシを見慣れていると衝撃的な見た目をしていますが、現地では普通にいるカブトムシです。アメリカ~メキシコにかけてはティティウスシロカブト以外にもシロカブトの仲間が何種も分布しています。
(4) コーカサスオオカブト
東南アジアに広く分布するアジア最大のカブトムシで3本の長いツノを持っています。性格は凶暴で、オス同士で争うこともよくあります。「コーカサス」とは古代ギリシャ語で白い雪を意味する言葉で、コーカサスオオカブトの白くも見える美しい輝きゆえにその名前が付けられとされています。
(5) ゴホンツノカブト
東南アジアの大陸部に分布する5本のツノを持つ種です。他のカブトムシがあまりいない竹林に生息しており、明るい茶色の上翅を持つ理由は竹林に上手く溶け込んで天敵から身を守るためと考えられています。
(6) ケンタウウルスオオカブト
アフリカ西部~中部の熱帯雨林に分布する種で、アフリカカブトムシという名前でも呼ばれることがあります。アフリカではハナムグリの仲間などが多い一方でカブトムシは少なく、ケンタウルスオオカブトはアフリカで一番大きなカブトムシでもあります。
さまざまなポイントで比較してみよう!
では、ここまで紹介した世界のカブトムシたちを比較してみましょう!今回はどの種類が最強か?ということについて考えていきますが、実際に戦わせるのではなく、大きさ、角の動き、成虫の寿命の3つの視点で比べてみたいと思います。
(1) 大きさ
最も大きいのはヘラクレスオオカブトで、最大で18cm以上になることもあります。エレファスゾウカブトやコーカサスオオカブトも大きく、13cm以上になることも。ゴホンツノカブトやケンタウルスオオカブトは大きい個体で9cm以上、ティティウスシロカブトは7cm以上と比較的日本のカブトムシに近いサイズです。
(2) 角の動き
ヘラクレスオオカブト、ティティウスシロカブト、ケンタウルスオオカブトは上下に角が伸び、相手を上下方向から挟み込むことができます。一方で、エレファスゾウカブト、コーカサスオオカブト、ゴホンツノカブトはそれぞれ角の数に差はありますが、頭から生えている長い角を相手の体の下に入れて持ち上げることができます。
(3) 成虫の寿命
最も成虫の寿命が長いのはヘラクレスオオカブトで半年~1年程です。今回紹介した他のカブトムシは数ヶ月~半年程しか生きることができません。
結局、どのカブトムシが最強?
ここまで、世界各地のカブトムシを紹介し、3つの視点で比較してきましたが、角の使い方に差はあるものの、大きさや寿命の観点から最強のカブトムシはヘラクレスオオカブトと言えるでしょう。
また、ヘラクレスオオカブトと一言に言っても中南米地域に広く分布しており、地域によって様々なバリエーションが知られています。中でもグアドループ諸島やドミニカ島に生息する個体群は大きいことが知られています。
僕も野生のヘラクレスオオカブトを求めて5年程前に南米エクアドルを訪れたことがありますが、自然界で見るその大きな体は圧巻で、感動で体が震えたのを今でも覚えています。
凶暴な印象はほとんどなく、温厚なカブトムシです。日本でもペットショップなどで購入することができ、飼育も難しくはないので、もしよければ実際に観察してみてはいかがでしょうか。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my
文/牧田 習