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昆虫博士の牧田習さんが解説!最近、関東地方で増えている昆虫の種類とその理由

2025.08.13

環境破壊などによって数が減ってきている昆虫は絶滅危惧種などとして注目されることも多いですよね。その一方で、実は数が増えてきている昆虫もいます。今回は、そんな昆虫のうち、最近になって関東地方で増えてきている具体的な種類について紹介し、どうして増えているのか?私たちはどのように向き合っていくべきなのか? 解説します。

どんな昆虫が増えてきているの?

昆虫は環境の変化を受けやすい生き物で、人間が気付かないうちに、身近な昆虫の顔ぶれが変化してきています。チョウ、カメムシ、カマキリ、甲虫など様々なグループで増えている種類はいますが、今回はその中でも僕が注目している3種類を紹介しましょう。

(1) クマゼミ

オスは「シャーシャー」と鳴く6~7cmの大型のセミで、西日本ではアブラゼミと並んでよく見られるセミです。関東地方では以前は神奈川県などの南部で見られたのみでしたが、最近は分布が拡大しており、東京や関東中部でもよく見られるようになってきました。

(2) キマダラカメムシ

2cmほどのカメムシの仲間で、体に黄色い模様があるのが特徴的です。元々は日本にはおらず、台湾や東南アジアにいる種類でしたが、18世紀に長崎県で確認され、20世紀末までに九州各地で見られるようになりました。その後、急速に分布を拡大し、ここ15年ほどで関東でも爆発的に増え、今では最も普通なカメムシになりました。

(3) ツマグロヒョウモン

オレンジ色の翅が特徴的なチョウで、関東に長く住んでいる方であれば、一度は見たことがある種類だと思います。しかしながら、昔からずっといたわけではなく、1980年代までは西日本でしか見られませんでした。しかしながら、1990年代以降、関東でも数が増えてきて、現在ではかなりよく見かけるチョウの一つとなりました。

どうして増えているの?

昆虫は昆虫のみで存在しているわけではなく、周りの様々な環境の中で存在しているため、昆虫が増えるということには必ず理由があります。ここでは、先ほど紹介したような昆虫たちが増えている具体的な理由について解説します。

(1) 地球温暖化

現在、地球温暖化はかなり進行してきており、東京の年平均気温は100年前に比べて2.5℃も上昇。そのため元々、温暖な地域に住んでいた昆虫たちにとっては暮らしやすい環境となり、クマゼミなどの昆虫が定着するようになってきました。

(2) 人間活動による持ち込み

私たち人間は現代社会において、様々な物流を繰り広げています。そのため、それらの物に昆虫が付着して本来分布していない地域に持ち込まれ、結果として定着して分布が拡大するということがあります。先程のキマダラカメムシも自力で東南アジアから日本に飛んできたのではなく、人間の活動により、日本に入ってきたと考えられています。

(3) 園芸植物や農作物による分布拡大

昨今では様々な園芸植物や農作物が育てられるようになりました。これらは本来の植物の分布とは関係なく植えられるため、それらを食べる昆虫が分布拡大するというケースもあります。先程のツマグロヒョウモンは地球温暖化による分布拡大に加えて、幼虫の食草であるスミレ科の植物(パンジーなど)を人間が多く植えているからというのも理由の1つとして考えられています。

私たちはどう向き合うべきなのか?

ここまで、どのような昆虫がどのような理由で増えているのかについて解説しましたが、私たち人間はどのように考えて向き合うべきなのでしょうか? まず重要なことは昆虫と人間は無関係ではないということ。あらゆる生き物は食う・食われるの関係で繋がっており、昆虫の増減は多かれ少なかれ人間の生活にも影響を及ぼします。分かりやすい事例としては、農作物の害虫などが増えたら困りますよね。

向き合い方はケースバイケースですが、まず、外来種として分布を拡大している種類がこれ以上分布を拡大しないように、また新たに外来種を生み出さないように、人間が運ぶものに昆虫が付着していないかなどを念入りに確認することは非常に重要です。

また、地球温暖化によって分布が拡大している種類については個人レベルでどうにかできるようなことではないため難しいですが、社会全体として現在、どのくらい地球温暖化が進行していて、それに対して生き物たちがどのような反応を示しているのかを注視していく必要があります。

昆虫は私たち人間に環境の変化などについて教えてくれる存在でもあります。暑い日が続きますが、身近な場所でも昆虫を探してみて、彼らからのメッセージに耳を傾けてみるのはいかがでしょうか。

昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。

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著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my

文/牧田 習

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