夏休みにクワガタムシ採集に行かれている方は多いのではないでしょうか? しかし、コクワガタやノコギリクワガタはよく見つかるけど、人気のヒラタクワガタは中々見つけられない……という方はおおいはず。そこで今回、ヒラタクワガタはどんな場所に生息していて、どのような方法であれば、採集することができるのか解説します。
そもそもヒラタクワガタってどんなクワガタ?
ヒラタクワガタはクワガタムシ科クワガタ属に属する種類で、オスは4~11.5cmほど、メスは2~5.5cmほどの体長で。大型個体はクワガタムシ界でも存在感抜群です。
分布域は非常に広く、日本を含む東アジアから東南アジアや南アジアまで広く分布しています(日本国内での分布の北限は東北地方南部と考えられている)。
地域によって大あごの形や体の大きさなどが異なり、多くの亜種がいます。日本国内でも島嶼地域では、長崎県対馬のツシマヒラタクワガタや沖縄本島のオキナワヒラタクワガタなどの亜種が知られています。
成虫の寿命は1~2年ほど、上手に飼育すれば3~4年程生きることもあります。これはオオクワガタに比べると少し短いですが、ノコギリクワガタやミヤマクワガタなどに比べると長く、活動した成虫がそのまま冬を越すことができるのです。
どんな場所に生息しているの?
日本においては低地から山地まで幅広く生息していて、河川敷などでも見られます。本州などでは5月頃から9月頃まで活動していますが、コクワガタなどに比べると見かける機会は多くないため、自然豊かな場所にしかいないと思われがち。しかしながら、東京23区内にも生息しているほど、身近な場所でも暮らしている種類なのです。
クヌギやコナラなどの広葉樹が多い森に生息しており、ジメジメと湿度が高い場所を好む傾向があります。
樹液が出ていて、穴がたくさんあるような木があれば、狙い目です。特に大型個体は木の穴やくぼみの中に隠れていることも多いです。
南西諸島においては、シークワァーサーやタンカンなど柑橘類の樹液に集まり、本州などに比べて個体数も多く、見つけやすい傾向にあります。
どうすれば採集できるの?
ここまで、ヒラタクワガタの基本情報や生息環境をまとめてきましたが、これらを踏まえてどのようにすれば採集することができるのかについて、4つの方法を解説します。
(1) 木どり
樹液をチェックするほか、隠れていそうな木の穴などを見つけたら中をチェックする方法です。穴の中は暗くて狭いため、ピンセットとライトは必須になります。ヒラタクワガタは夜行性のため、昼間は穴の中に隠れていることが多いため、穴を見つけたらどんどんチェックしてみましょう。
(2) フルーツトラップで採集
バナナなどのフルーツと黒糖、焼酎などを混ぜて発酵させたものをストッキングの中などに入れて木に吊るして虫たちを呼び寄せる方法です。ヒラタクワガタ以外のクワガタムシやカブトムシも多く集まります。
(3) 灯りに集まる個体を採集
ヒラタクワガタも他のクワガタムシ同様、夜に灯りに集まる習性があります。特にヒラタクワガタがいそうな湿度の高い森や河川敷の近くの灯りをチェック。LEDは昆虫が集まりにくい傾向にあるため、白熱灯などの周りを見るようにしましょう。
(4) 冬の材割り採集
ヒラタクワガタは冬であっても成虫を採集することができます。森や河川敷の横たわっている材を手ぐわなどで割ってみましょう。成虫・幼虫共に見つかることも。しかし、この方法はやりすぎてしまうと、環境への負荷が大きくなってしまうため、周囲の環境に配慮しましょう。
ここまでヒラタクワガタの生息環境と採集方法について解説してきましたが、ヒラタクワガタは身近な場所でも探し方によっては見つけることのできるクワガタムシです。地域によってバリエーションも豊かなので、ぜひいろいろな場所で探してみてくださいね。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my
文/牧田 習







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