
首都圏では不動産価格の高騰が続いており、特に東京都内の新築マンションは平均価格1億円を超えて中心部ではさらに価格上昇している。
では、東京都と隣接する神奈川県、埼玉県、千葉県の新築マンション価格はどのように推移しているのだろうか?
LIFULLが運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」はこのほど、神奈川県、埼玉県、千葉県における新築マンションの平均価格や平均平米単価に関する実態調査を市区町村単位で実施し、その結果を発表した。
【神奈川県】平均平米単価が100万円を超える!平均価格は7,400万円、億超えは4エリアに!
2025年1-5月に掲載した神奈川県の新築マンションは32エリアあり、平均平米単価は104.6万円と100万円を超え、前期比109.1%と昨年よりも上昇している。平均価格が最も高いエリアは1億5,982万円の横浜市中区、2位は相模原市緑区の1億3,069万円、3位は茅ヶ崎市の1億2,580万円となった。
川崎市幸区も1億円を超え、神奈川県内の4エリアが億超えエリアだ。平均平米単価の上昇率は、横浜市戸塚区(159.2%)が最も高くなった。相模原市緑区(148.1%)、茅ヶ崎市(137.6%)が続き、この2エリアは平米単価が上昇したことで平均価格が上昇したとみられる。
神奈川県で2024年に掲載があり且つ、2025年の平均平米単価上位20エリアについて2023年からの推移をみると、2023年は横浜市中区(153.8万円)を除き、神奈川県内の平均平米単価は約125万円以下だった。しかし、2025年には各エリアの平米単価が上昇し、7エリアが125万円を超えている。
横浜市中区は有名な観光地を擁し、交通の利便性も高い一方で、閑静な住宅街があるなど周辺環境が整ったエリアだ。2023年に平均平米単価が150万円を超え、2年でさらに上昇し続け、2025年には県内唯一200万円台となった。また、グラフでも顕著な伸びが分かる横浜市戸塚区は、2年で1.9倍(65.7万円124.7万円)となり、神奈川県内で最も上昇している。
【埼玉県】物件価格は所沢市が7,500万円でトップ!“都心直結・ブランド性”で浦和区が単独上昇中
2025年1-5月に掲載した埼玉県の新築マンションは27エリアあり、平均平米単価は80.3万円、前期比100.1%だ。最も平均平米単価が最も高いエリアはさいたま市浦和区(124.2万円)だ。埼玉県内で「都心直結・ブランド性」のあるエリアとして平米単価が上昇している。また、平均価格が最も高い所沢市は7,531万円で埼玉県内唯一の7,000万円台だ。この他、県内の6,000万円台は6エリアでさいたま市大宮区、浦和区、川越市、川口市、和光市、久喜市だ。
埼玉県で2024年に掲載があり且つ、2025年の平均平米単価上位20エリアについて2023年からの推移をみると、2025年時点で浦和区の平均平米単価が124.2万円に達し、東京23区内と同程度の価格帯に突入した。さいたま市大宮区や川口市では平均平米単価が100万円を超えるなど、都心アクセス性の高いエリアを中心に価格の上昇傾向が顕著だ。
浦和区と飯能市・深谷市では1m²あたりの価格差が2倍以上(約66万円の差)となり、同一県内でも居住地によって住宅価格の負担感が大きく異なっている。一方で、埼玉県は27エリアで新築マンションが供給されており、平均平米単価が60~80万円台の地域も多くあることから、価格面で「手が届くエリア」の選択肢が豊富ともいえる。
【千葉県】市川市の物件価格が9,000万円台に!東京都に隣接&利便性がいいエリアの平米単価が上昇
2025年1-5月に掲載した千葉県の新築マンションは14エリアあり、平均平米単価は85.2万円、前期比110.1%と昨年よりもさらに上昇している。最も平均平米単価が最も高いエリアは市川市(116.8万円)で平均価格が最も高く9,000万円台。東京都に隣接し、JR総武線や東京メトロ東西線、都営新宿線などが運行していることから利便性の高さが価格に反映されている。
千葉県で2024年に掲載があり且つ、2025年の平均平米単価について2023年からの推移をみると、市川市は116.8万円到達し、県内で唯一「上位価格帯」に突入している。千葉市中央区もこの2年で伸長し99.9万円となった。
また、浦安市・船橋市などは90万円台後半と堅調な伸びを示しており、都心通勤圏でありながら価格は都内より手頃なためファミリー層のニーズは今後も高そうだ。一方で八千代市や流山市などの郊外エリアでも価格が上昇傾向にあり、今後は中堅価格帯の上昇が価格全体を押し上げる可能性もある。交通利便性と価格のバランスに優れる千葉県内は、引き続き購入検討者にとって魅力的な選択肢といえそうだ。
LIFULL HOME’S総研 副所長/チーフアナリスト中山登志朗(なかやま としあき)氏 考察コメント
東京23区の新築マンションは、2022年以降3年間“平均1億円超”の価格水準が続いており、しかも実需&投資とも堅調で平均価格がさらに押し上がる状況です。この異常とも言える価格の上昇は、これまで東京都心部にほぼ限られていましたが、年を追うごとに都心から隣接エリア、近郊エリアへと波及し始め、その間、都心周辺に物理的に近い周辺3県の行政区&自治体、および郊外でも都心方面にダイレクトアクセス可能な長距離運行の鉄道路線が延伸しているエリアの新築マンション価格も明らかな上昇傾向が見られます。
2025年の東京23区の平均平米単価は207.4万円と突出して高額ですが、神奈川県でも同105.2万円と100万円を突破し、千葉県85.2万円、埼玉県80.4万円と前年から概ね10%前後の明らかな価格の押し上げが発生しています。
なかでも神奈川県の行財政の中心地である横浜市中区では平均平米単価が203.9万円と、東京都以外では唯一単価200万円を超える水準まで上昇しており、横浜駅周辺の神奈川区が152.7万円、みなとみらい地区のある西区でも138.5万円と高額で、さながら“ミニ都心”の価格相場を形成しています。また神奈川県内では都心方面にも横浜・川崎にもダイレクトアクセス可能な武蔵小杉駅のある川崎市中原区が130.2万円と高額になっています。
埼玉県ではさいたま市浦和区が124.2万円、同大宮区でも106.9万円、東京隣接の川口市が105.5万円と単価100万円を突破していますが、所沢市97.5万円、川越市93.2万円など県西部の新築マンション価格は単価100万円を下回っています。
千葉県でも同様の傾向が示されていて、東京隣接の市川市で116.8万円、“千葉都民”が多く居住する浦安市でも98.4万円のほか、船橋市94.0万円、千葉市美浜区90.5万円など、単価100万円以下で購入可能なベッドタウンでのマンション開発が活性化しています。
このように、都心での新築マンション価格の高騰と高止まりの状況が、都心隣接エリアから近郊~郊外方面での価格推移に影響を与えていますが、同時にエリアごとの価格の違いも明確になっており、交通&生活利便性と価格のバランスを考慮すれば、首都圏でもコスパ&タイパの良好なエリアを見つけることができます。
<調査概要>
・集計対象:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県内で分譲された新築マンションのうち、LIFULL HOME’Sに掲載された物件を行政区&自治体単位で集計
・集計期間:2024年1~5月および2025年1月~5月を比較し対前期比を算出
・集計条件:専有面積30m²未満の住戸および平均専有面積が30m²未満の分譲期は除外
・集計方法:各マンションにつき、分譲期ごとに最高価格/面積と最低価格/面積を抽出し平均値を算出
出典元:LIFULL HOME’S
構成/こじへい