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〝チャリ文化〟に革命!ホンダの後付け電動アシスト「SmaChari」が想像以上に快適だった!!

2025.08.09

自転車専用後付けモーターが、アメリカではちょっとしたブームをもたらしている。

既存の自転車にモーターとバッテリー、そしてそれらと連動するアプリをダウンロードしたスマホを搭載する。これにより、それまで人力で漕ぐしかなかった自転車を電動アシスト自転車もしくは電動モペッドにすることができるのだ。

ロサンゼルスのような道幅の広い真っ直ぐな車道がどこまでも続くような都市であれば、これは確かに利便性の高い製品である。

日本もアメリカ西海岸の都市くらいに道幅が広ければいいが、そうは問屋が卸さない。

細く曲がりくねった道ばかりの日本において、自転車用後付けモーターなる製品は果たして普及するのだろうか? そうした課題に現在進行形で挑戦しているのが、ホンダである。

単体ではユーザー販売されていない後付けモーターキット

ホンダが『SmaChari』というシステムを提供している。

これは様々な自転車を日本の法令に適した電動アシスト自転車にすることを目指した、後付けモーターキット。専用スマホアプリでは法規に適合したアシスト率でのアシスト制御を実現するコネクテッド機能が用意され、AIモードでは状況に応じてアシストのレベルを自動設定してくれるという。速度表示機能やマッピング機能、走行ログ自動作成機能も備わっている。

このSmaChariを購入すれば、あとは自分の手でこれを自転車に設置して電動アシスト自転車に改造することができる……と言いたいところだが、残念ながらSmaChariは現時点で、単体ではユーザー販売されていない。このあたりがSmaChariの少し難解な部分であるが、今の時点ではワイズロードの販売する製品3車種に最初から装着された形でのみの販売になっている。

後付けモーターキットなのに、後付けモーターキットとして店頭に並んでいない。それはなぜか?

人生初のクロスバイク搭乗

今回筆者は、SmaChariシステム採用車の試乗のためにワイズロード新宿クロスバイク館へ足を運んだ。店舗前で筆者を出迎えたのは、株式会社ワイ・インターナショナル営業本部マーケティング部マネージャーの永平宏行氏。

「こちらはKhodaabloomのRAIL STをホンダのSmaChariシステムで電動アシスト自転車化した『RAIL ST-e』という製品になります。SmaChariアプリの入ったスマホによりアシストが制御され、様々な機能も利用できます」

この時の筆者が目の当たりにするのは、随分と線の細いクロスバイクというものである。もちろん、クロスバイクを今まで見たことがなかったというわけではないのだが、乗るのはこれが初体験。考えてみれば、自転車自体にもう5年以上も乗ってない!

私は普段はバイクに乗るため自転車にはすっかり縁遠くなってしまいました、もしかしたらこのクロスバイクも乗りこなせないかもしれません……などと話していると、永平氏が筆者にこう告げた。

「ヘルメットをご用意しますので、試乗の際は必ず被ってください」

へ、ヘルメット? 自転車にヘルメットが必要なのか? そういえば、筆者が自転車に乗らなくなったこの5年の間に、道路交通法が改正されて自転車に乗る際のヘルメット着用が「努力義務」になったんだった……。だんだんと、自転車の乗車ルールが自動二輪車のそれに近づいていることを筆者はこの場でしみじみと感じたのだった。

新宿とロサンゼルスの違い

というわけで、試乗開始。

今回はワイズロード新宿クロスバイク館が入居しているビルから新宿御苑へ向かい、北側の道路に沿って程よいところで引き返す。いかんせん筆者は静岡市在住の田舎者だから、「新宿を自転車で走行する」ということ自体が人生初の出来事だ。

実際に走ってみてすぐに感じたのは、やはり日本の首都は道があまり広くないという事実である。荷捌きのトラックを避けるため、クロスバイクを降りてそれを押しながら歩道に移る……という場面すらあった。

詳しいことは後述するが、このような日本の道路環境を考慮しないとSmaChariという製品の進化について語ることはできない。

筆者は別のメディアでの仕事でロサンゼルスに行ったことがあるが、スポーツサイクルやモペッドに乗って全力に近い速度で走るには確かに適した道路だと感じた。アメリカサイズの道幅もそうだが、そもそも路肩で荷捌きをしているトラックがLAでは見当たらない。さらに、歩道を進む歩行者の数も両手の指で計算できるほどしか確認できない。「自動車大国」とはこういうことなのかと感心させられたほどだ。

もちろん、新宿の道路環境はLAとは全く異なる。

外国人観光客が日本を訪れてまず驚くのは、「歩行者の多さ」だという。自転車に乗っていても、そのあたりは嫌でも意識せざるを得ない。自転車走行が可能な歩道に乗り上げた場合は言うに及ばず、街中では車道ですら全力でペダルを踏む機会は少ない。SmaChariの速度計をこまめに確認してみると、日中の新宿では時速20kmを超えて走る瞬間は殆ど訪れないことが分かる。

となると、アメリカで販売されている後付けモーターキットを個人輸入してそれを自転車に設置するのは、やはり危険な行為と判断する他ないのだ。

海外製品は常に数字を追いかける

海外のクラウドファンディングでは、「誰でも時速30マイルで走行できる自転車用後付けモーターキット」というような製品が頻繁に出展されている。

クラウドファンディングとは、つまるところその製品の持つ斬新さやインパクトが出資金を呼び込むシステムである。「自動車を牽引できるほどのトルク」「ガソリン二輪車に劣らないトップスピード」「シエラネバダ山脈の東側の砂漠地帯を走破できるタフネスさ」が人々の目を惹きやすく、こうした特性を持った製品はたちまちのうちに目標金額を集めることができるだろう。

しかし、その製品の後継製品を開発し、前作と同じようにクラウドファンディングに出展するとしたらどうなるか? 後継製品である以上は「前作を上回る数字」が必須事項となる。それを提示できなければ、「あの製品はダウングレードした」という悪評が立ってしまう。

「誰の目にも分かりやすい数字を追求し続けなければ注目されない」というのは、クラウドファンディングの構造的欠点と言える。

その上で、アメリカの自転車文化が自宅のガレージを起点に発展したものであるという背景を忘れてはいけない。要はDIYである。

日本はそうではない。自転車は自転車販売店で一から十まで整備してもらう乗り物だ。だからこそ、自転車向けの認証マークというものが存在し、防犯登録は全国一律で義務化され、保険加入は義務もしくは努力義務となっている自治体が多い。そのような国では、後付けモーターキットはDIYで設置するのではなく、自転車販売店で取り付けてもらうことが最も安全な選択になるのだ。

日本にいるからこその爽快感

一方、SmaChariの公式サイトには一目でその走行性能を理解できるような数字は用意されていない。砂漠を豪快に疾走する動画も、レーシングマシンよろしくサーキットを周回する動画もない。SmaChariにはそのような意味での「分かりづらさ」は、確かにある。

したがって、この製品は実際に乗ってみないと持ち味を見出すことができない。

アシストのレベルは手動で調整することもできるが、そのあたりはAIに任せて自分なりのペースでペダルを踏む。いや、「自分なりのペース」という表現は正確ではない。新宿のど真ん中では、結局のところ歩行者と荷捌きのトラックが車両の巡航速度を決める。SmaChariは、日本の道路だけが持つ独自の「流れ」に適合した製品である。時速20km以下で走り続け、たまに道路が空いている隙を狙ってスピードを上げ、しばらくしたらブレーキを握って再び歩行者の存在に合わせた低速に戻る……。こうした一連の動作をストレスなく繰り返すためのシステム、それがSmaChariなのだ。

これは言い換えると、「日本にいるからこその爽快感」である。SmaChariの付加価値は、ひとえに我々の国の道路事情と販売店を起点とした自転車文化にピッタリ反りを合わせているという部分に存在する。「日本の自転車文化」に根ざした電動アシスト自転車の特徴は、日本の道路事情を考慮した「道交法による電動アシスト比率・速度の制限」である。SmaChariは、アプリによる制御でアシスト力を法規に適合させつつも、後付け電動アシストシステムの美点である「手頃な価格」「車体の軽さ」はそのままに持ち合わせている。

視覚化・テキスト化が難しい部類の付加価値ではあるが、その分だけ「実体験で理解できる感動」が隙間なく詰められている製品と言えるだろう。

【参照】
SmaChari

文/澤田真一

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