
野外で暮らす猫を保護し里親に繋げるボランティア。そのボランティアを支援することの必要性…
環境省がリリースしている「動物の愛護と適切な管理」というページによると、愛護センターの収容動物に関する統計資料として令和5年度までの数字がグラフ化されている。
これによれば令和5年度の猫のセンター受け入れ数は25,224頭。対して殺処分数は、6,899頭。
多い数字ではあるものの、実は近年、猫の殺処分に至る数は、相当減っている。なにせほんの数年前まで、殺処分が30,000頭付近であった。
依然処分される個体はいるが、それでも激減と言って差し支えない。
この殺処分数減少の理由としては、そもそも個々の飼い主たちの管理飼育が徹底され、迷子猫が減ったり捨て猫が減ったということも当然考えられる。
さらには、野良猫であるセンター収容猫を引き取って里親募集をする、保護ボランティアたちの活躍も大きい。
今回は、とにかくいなくてはどうにもならない保護団体を支援するため、8月16日に開催されるチャリティイベントについてのインタビュー記事をお届けしたい。
同日14時から渋谷ホール5Fにて開催となる「Save the Cat concert」。その主催であるRareさんに、お話を伺った。
点での支援を線で繋げ、面に…本当に真面目に動く保護団体の活動を支援するためのコンサートを
松本 まずはじめに、この「Save the Cat concert」開催のきっかけから、出演する音楽家さんの選定などに至った経緯を教えてください。
Rareさん 私は数年前に野良猫問題や保護ボランティアさんの活動を知り、少額ながらの金銭・物品での支援や、SNS上で適正飼養に関する啓発の発信などを続けてきました。
しかし、ひとりでできることには限界があるということと、「保護活動」という言葉を免罪符にした不適切な支援金の収集や、多頭飼育崩壊に至る不適正飼養を続けるボランティアさんが少なくないということをずっと気にかけており、特に前者については支援する側のリテラシーの向上も必要だと強く感じていました。
「正しい支援のあり方」というミクロの視点から「野良猫という地域社会が抱える問題そのものへの取り組み方」にマクロにスコープを広げたとき、「ボランティア活動は、気付いた人だけが“点”で完結することではなく、活動を通じて社会全体が薄く広く“線”となり、大きな“面”へと発展していくきっかけになるべきではないか?」と考えるようになりました。
今、地域で“点”として活動しているボランティアさんたちを“線”で繋げるためのきっかけ、そして外で暮らす猫たちに対して、皆さんがただ「かわいいね」だけではなく疑問を持ち、保護活動に関心をもってほしいという思いでコンサートの開催を決めました。
音楽家の皆さんに関しては、猫が好きであること、そして保護活動について関心があることももちろんですが、今回のコンサートはチャリティであることをご理解いただいた上で、報酬なくご出演を快諾してくださった方々に依頼しました。
3名とも忙しくご活躍される中で、今回ご出演くださることに、敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。
収益は数年にわたって持続的な活動を行い、透明性があると判断された団体へ分配
松本 このコンサートで得られた収益、投げ銭の分配対象となるボランティアさんたちについてもお聞かせください。
保護団体の方々の普段の活動を支援するためのチャリティイベントとのことですが、こちらはどういった目線で分配・支援をする保護ボランティアを選定されているのでしょうか?
Rareさん 今回は初回の開催ということで、私の個人的な判断も少なくありませんが、主に「数年にわたり持続的な活動を続けられている事」「SNS等で活動内容が透明になっていること」「保護だけではなく、TNR、輸送、看取りなど、認知度が高くない活動を続けている事」に当てはまるボランティアさんに分配・支援を行う予定です。
次回、次々回と開催が継続できれば、もう少し客観的な評価基準を設けて、より信頼度の高い分配ができればと思っています。
前例の少ないチャリティコンサートだけに、客足の伸びに不安も…1人でも多くの来場を!
松本 Rareさんの関与した部分につきましても、少し質問をさせてください。
今回のコンサートを開催するにあたって、一番苦労した点はどこだったのでしょうか?
Rareさん やはり集客が一番苦労しています。
介助犬育成支援などのチャリティコンサートは社会的認知度も高く信用がありますが、保護猫ボランティアさんへの支援はおそらくほかに例がないこともあり、チケットの購入に二の足を踏んでいる方も多いかな、という実感があります。
松本 なんでもそうですが、最初の挑戦って不安が多いですからね。とにかく1人でも多くの来場を祈っております!
主催者Rareさんから記事をご覧のみなさんへ
松本「Save the Cat concert」の開催も差し迫っております。
最後に、この記事をご覧になっている方に向けて、このコンサートについての意気込みをお願いします。
Rareさん ボランティアや支援活動と言うと、現場で実際に動いたり、多額の金銭を寄付するというイメージがある人も多いことから、一歩踏み出しづらい方も多いかと思います。
「Save the Cat Concert」は、野良猫問題が起きている現場から遠くても、多くの寄付できなくても、少しでも猫の問題を解決したいという気持ちがあれば、その気持ちを確実に現場へ届けることができるコンサートです。
会場で良い音楽をお楽しみいただき、野良猫問題に関するお話を共有していただくことで、ご来場いただいた皆さんが「社会問題を解決する一員」として、野良猫問題に参画できると考えています。
当日は、クラシック、ジャズ、J-POPなど、様々な音楽をお楽しみいただけます。
私も少しだけ出演しますので、皆様お誘いあわせの上是非ご来場ください。
渋谷でお待ちしております!
コンサートで野良猫の保護活動を支援。成功をおさめ、第2回、3回開催に至ることを期待!
と、ここまでが間もなく開催の「Save the Cat Concert」を主宰した、Rareさんへのインタビュー内容。
そもそもこのコンサートの開催を知ったのは、筆者が以前「オーナー必読!迷子になったペットの捜索に役立つICTサービスFind MissingPets.jp開発秘話」というタイトルで執筆した取材記事の取材元であるnekonareさんから、イベントの開催を共有されたことがきっかけ。
nekonareさんは以前保護猫譲渡会のスタッフもしており、現在ではペット捜索のための基本的な情報掲載ができるサービスの管理人でもある。
図らずも点の仕事として取材したnekonareさん経由で、線で今回Rareさんへの取材に繋がったということになる。
ご近所にお住まいの方。当日時間があるという方は是非、チケットを取得して会場に足を運んでいただければさいわいである。
また、本コンサートは投げ銭も受け付けているので、遠方に在住している方もお気持ちをおひねり感覚で寄付しても良いかもしれない。
「Save the Cat Concert」は2025年8月16日14時。渋谷ホール5Fで開催。チケットは1,000円。各種カード決済に加え、コンビニ決済にも対応している。
【取材協力】
Rare(Xアカウント)
Save the Cat Concert(ticket.kp)
【参考】
環境省統計資料「動物の愛護と適切な管理」
文/松本ミゾレ