
弥生美術館(東京都文京区)では、今年が昭和100年に当たることをふまえて〝着こなしの変遷とこれからの学生服〟をテーマにした展覧会『ニッポン制服クロニクル』を開催中だ(2025年9月14日まで)。2025年3月21日に刊行した『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』(小社)の一部内容も展示されている。本記事は[Vol.2]として、同展覧会で鑑賞できる貴重な実物展示の見どころについてレコメンド! 夏休みを利用して鑑賞したい人はぜひ参考にしてほしい。※展示写真は展覧会開始時点(2025年6月7日)のもの。一部変更されていることもあります。
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『ニッポン制服クロニクル』紹介Vol.2 実物展示紹介編
学ランとセーラー服を変形させた
<ツッパリ&スケバン>スタイル
1970年代後半から1980年代中盤頃までの間、いわゆる〝ツッパリ〟〝スケバン〟と言われるスタイルが大ブームに。男子生徒の場合は、上着の裾を極端に長くしたり(長ラン)、ズボンの幅を広くしたり(ドカン)した学生服を着用。セーラー服のスカート丈を過度に長くする女子生徒も増え、学校関係者にとっては大きな悩みのタネとなった。そのような装いの実物を『ニッポン制服クロニクル』では展示。男子の〝ツッパリ〟スタイルは児島学生服資料館、女子の〝ツッパリ〟スタイルはカンコー学生服の各収蔵品で、50~60代には懐かしく感じるはずだ。
なお、写真の右側に置かれているのは、上着の裾を極端に短くした「短ラン」と、ズボンの膝まわりに膨らみをつけて足首にかけて細くなる「ボンタン」の組み合わせ。1980年代半ばに放送されたTVドラマ『スクール☆ウォーズ』で不良役を演じた、松村雄基氏をイメージしたものだとか。
変形学生服の〝オシャレアイテム〟として人気を博した、学ランのボタンの裏側に装着する〝裏ボタン〟の実物も展示。タバコのパッケージ、花札の絵柄、国旗など、実に様々なものがデザインのモチーフになっていたことがわかる(児島学生服資料館の所蔵品)。
変形学生服の流行時に登場したのが「なめ猫」というキャラクター。リアルな子猫が学生服を着用して不良や暴走族に扮する可愛らしい姿が大人気に。1980年から1982年までの2年間、運転免許証風ブロマイドや文房具をはじめとする関連グッズの売り上げは、何と570億円以上を記録したとか。そんな「なめ猫」の懐かしい写真も館内に掲示されている。
ブレザーの制服を着崩す
<コギャル&腰パン>スタイル
1980年代中盤以降に進んだブレザー制服の採用などの影響により、変形学生服ブームは徐々に沈静化していった。しかし、1990年になると、ネクタイの結びをゆるくして、シャツの襟元は大きく開くという〝着崩し〟スタイルが誕生。学校関係者を、再び悩ませることになる。男子生徒はズボンを腰まで下ろしてはき(腰パン)、女子生徒はスカート丈を短くしてルーズソックスをはく(コギャル)……といった当時の装いも、館内の展示では忠実に再現されている。中高生時代の頃を思い出す40~50代も多いのではないだろうか。
〝着崩し〟を防止するために考案されたスカートも展示。腰部分を巻き上げられない設計により、スカート丈を短くできないようになっている。
館内には、同展覧会の監修を務める森伸之さんが資料としてまとめた「女子高生ソックス50年史」も展示。ソックスのボリュームも長さも極限に至った1998年のイラストをはじめ、コギャルスタイルの象徴であるルーズソックスなどの変遷を見て取れる。
品川学藝高等学校の
精悍で爽やかな印象の男子セーラー服
40~60代にとって強く印象に残っているであろう〝変形学生服〟や〝着崩し〟だけでなく、2000年代以降における学生服の着こなしについても、実物展示を用いて紹介されている。その中でも、とりわけ目を引くのが、品川学藝高等学校の制服だ。2023年の共学化に伴って採用されたもので、ファッション誌『FUDGE』(三栄)がプロデュース。同誌編集部の関口啓子氏を中心に制服が考案された。中でも、男子セーラー服(写真左)は「男子の骨格で精悍に見えるように」と、襟の形状について特に研究が重ねられたとのこと。実物を間近で見てみると実に新鮮で、清潔感のある爽やかな印象だ。
森伸之さんが描く未来の学生服と瀧本のコラボレーション!
架空の学校「烏山学院」「令和学園高等学校」の制服
40年にわたって学校制服のデザインと着こなしを取材してきた森伸之さんが〝架空の学校の制服〟として考案した制服の実物も展示されている。制作したのは「スクールタイガー」ブランドを展開する制服メーカー・瀧本。〝烏山学院の制服〟は最新素材の採用によって軽さと着心地の良さを実現したワンピース型のセーラー服に、オフホワイトのボレロを組み合わせるのが特徴だ(写真左)。〝令和学園高等学校の制服〟は男性の正装である「キルト」をモチーフにすることで男子が着用しても違和感の少ないブレザー×スカートのスタイルに(写真中央)。素材やモチーフの工夫次第で、学校制服の可能性を大きく広げられることを実感させられる。
リユース・リサイクルがしやすい
カンコー学生服の循環型学生服
2024年12月にカンコー学生服が「エコプロ2024」で発表したリユース・リサイクルのしやすさを追求した新しい学生服も飾られている。手がけたのは、サステナブルをテーマにしたファッションコンクールなどにも出場しているデザイナー・中野未咲希氏。成長後のことを考えて大きめのサイズを選んでも違和感がない、ゆったりとしたシルエットの同制服は、男女兼用デザインなので〝お下がり〟や〝お譲り〟=リユースがしやすくなっている。また、服を構成する主要パーツがポリエステル素材に統一されていて、リサイクル時にかかる分別時間を削減できるようにしているそうだ。ラペルのフチやポケットのフラップに、ズボンと同じような柄をさりげなく入れるなど、細部のデザインにもこだわっていることが、実物を見るとよくわかる。
カスタムパーツで装いに変化を付けられる
ハルタ『コインローファー』
100年以上の歴史を持ち、制服の足元を飾るローファーを作り続けてきたハルタ。最近では、靴の甲の部分に当たるサドルに切れ込みの入った『コインローファー』に、おもしろい工夫を凝らしている。切れ込みの幅を広げることで『Haru Tag(ハルタグ)』というカスタムパーツを取り付けられるようにした。一足でありながら、タッセルローファーとしてもビットローファーとしても楽しめるようになっている。展覧会に飾られているサンプルを拝見すると、カスタムパーツによって様変わりするローファーが実に興味深い。
7限目のフルール(通称〝ナナフル〟)が着る
衣装&佐久長聖高等学校の制服
長野県にある佐久長聖高等学校から誕生した、学校公認の現役高校生による10人組アイドルグループ「7限目のフルール」(通称〝ナナフル〟)の衣装と同校制服も展示されている。写真は7月27日(日)まで展示されていた初代衣装と同校冬服。初代衣装はワッペンのデザインやブラウスの刺繍などに工夫を凝らしていて、同校冬服はグレーとピンクの素敵な組み合わせがポイントになっている。7月29日(火)からは、ニ代目衣装と同校夏服に切り替わったばかり。どのような装いなのか、展覧会で実物をチェックしてみてほしい。
なお、ニ代目衣装と同校夏服については、展覧会の監修を務める・森伸之さんが語る催し物が行なわれる予定だ。日時は、8月10日(日)16:00~16:30(事前申し込み不要/要入館料)。詳細は弥生美術館・竹久夢二美術館の公式SNSにて。
☆ ☆ ☆
自身の学生服時代における思い出に浸るもよし。制服の新しいカタチを親子で楽しむのもよし。日本で学生時代を過ごした多くの人にとってなじみ深い制服について、この機会にぜひ、思いを馳せてみてはいかがだろうか。
※現在公開中Vol.1の記事では気鋭アーティストの主な作品展示について紹介しています。
「ツッパリ」から「ヤマンバ」まで制服をテーマにした作品が勢揃い!東京・弥生美術館で愉しむ真夏のアート鑑賞のすすめ
厳しい暑さが続く中、空調の効いた涼しい室内で芸術作品をじっくり鑑賞したいという人は多いのではないだろうか。そんなニーズにピッタリなのが、弥生美術館(東京都文京区…
ニッポン制服クロニクル
ー昭和100年! 着こなしの変遷と、これからの学生服ー
場所:弥生美術館(〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3)
開催期間:現在開催中~2025年9月14日まで ※予約不要
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:毎週月曜日 ※8月11日(月/祝)は開館|8月12日(火)は休館
料金:一般1200円/大・高生1000円/中・小生500円 ※竹久夢二美術館も観覧も可能|支払いは現金のみ
今回の展覧会に関して、より詳細な情報を掲載しているカタログ書籍『ニッポン制服クロニクル』(河出書房新社)が同展覧の会場内にて発売中! 制服を愛する専門家・アーティストの知識と経験と技が光る、読み応え満点の1冊。監修:森伸之/編:内田静枝。
取材・文・撮影/田尻健二郎
(C)森口裕二 (C)彩藤アザミ/新潮社 (C)Hiromi Matsuo/菅公学生服/東京実業高等学校 (C)Hiromi Matsuo/菅公学生服 (C)wataboku (C)げみ (C)Satomi Kondo (C)mebachi (C)森伸之
『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』好評発売中!
大正時代から令和時代まで、100年あまりに及ぶ学生服の変遷をたどる書籍「女子高生制服100年図鑑」が発売中。全国42校を例に挙げながら、イラストおよび写真で紹介している。制服のイラストは、書籍・広告のほか『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』といったアニメのEDイラストなども手がけてきたイラストレーターめばちさんが、計129点を本書のために描き下ろし。めばちさん特有のふんわりとしたやさしいタッチの絵で、制服の歴史をたどる構成も話題。
学校および制服の選定には、170年の歴史を誇る老舗学生服メーカー菅公学生服に協力を仰ぎ、制服研究の第一人者として知られている森伸之さんによる監修のもと、新旧105着の制服を紹介している。
■関連情報
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311585
■公式Instagram
https://www.instagram.com/100years_school_girl_uniform/