
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
「ちゃんとする」の認識のズレは、こうして起こる
以前、こんな相談をされたことがあります。
「前の病院の先生は『プロセスが大事だから、とにかくコツコツとリハビリをしてほしい』というようなことをよく言っていました。でも、いまの先生は結果重視。『どんなに努力をしても結果が出ないならば、その努力は無駄だし、評価もできない』と言うんです。どちらの考えが正しいんでしょうか?」
これは前の先生と、いまの先生の脳の特性が違うことが原因です。
似たような相談をほかでも受けたことがあるのですが、そのときは、こんな悩みでした。
「夫は、部屋を掃除するときに、目につかない細かい部分まで掃除機をかけないと嫌なタイプで、時間をかけて『ちゃんと』掃除しないとダメなんです。でも、私は真逆のタイプです。細かく掃除しても、すぐにホコリは落ちるから時間の無駄。とにかく、短時間でもこまめに掃除することが『ちゃんと』掃除することだと思っています」
どうやら、二人とも、考え方が違いすぎて、どちらが掃除しても、相手の掃除の仕方に不満を持っているようでした。
この場合、どちらが正しいということではありません。脳の特性が違うのです。
言ってみれば、「ハンバーグが好きか、ラーメンが好きか」の違いと同じようなものです。
でも、いざ全く違うタイプの人と出会ってしまうと、この特性の差がトラブルを生み出したり、仲たがいの原因になったりすることがあります。
どちらのタイプも「ちゃんと掃除をする」ことを実現したいと思っています。でも、「ちゃんとする」とはどういうことかという認識にズレがあります。
プロセス重視の視点の人は、「一つひとつを丁寧に、しっかりとやっていることが、ちゃんとしている」という認識。
でも、結果重視の視点の人は、「時間をかけず効率的に成果を出せることが、ちゃんとしている」という認識。
こんな違いが生まれるのです。見えている世界が全く違います。
それでは、夫婦や子ども、きょうだいや親せきなどでプロセス重視の人と結果重視の人が両方いる場合は、どうしたらいいでしょうか(できれば脳の特性が違う人同士で一緒にいないほうがいいのですが、それは現実的ではありませんよね)。
方法はあります!
それは「プロセス重視型の人に、作業を優先してやってもらう」のです。
結果重視型の人が作業を担当すると、辛いことばかりになる可能性があります。早く終わらせたい(結果を得たい)のに、細かい作業をいくつもこなさないといけないからです。掃除でいうと、「パッと見がきれいになっていれば、それでよし!」という価値基準で作業をしてしまうと、あとになってプロセス重視型の人に、「これだけしかやってないの?」などと言われることがあるかもしれません。
ですから、一番よい方法は、得意な人にその役割を渡すことです。
すべての作業をやってもらうことは大変だと思いますから、特に細かい作業が必要なことはプロセス重視型の人に任せるのです(たとえば、掃除でいうと、エアコンの掃除、洗車などが該当します)。
私自身もエアコンの掃除をするときは、妻にはお願いせず、自分でやることがほとんどです。私は科学者ということもありますが、細かい作業をすることがとても好きだからです。面倒な作業を時間をかけてすることで、妻から感謝されることもあります。
私たちは、自分のタイプと違う行動をしているとき、大きなストレスを感じます。
計算が苦手な人が、経理の仕事を何年もしたら気がおかしくなってしまうように、ストレスを感じないためにも、なにかに取り掛かるときに自分とは真逆のタイプの人がいる場合は、ぜひ、お互いの得意分野を活かせる役割分担をしましょう。
いくら表面的な言葉を駆使しても、こうしたお互いの「視点のクセ」の壁を乗り越えることは簡単ではありません。
相手の視点のクセを知り、自分とのズレをどうなくしていくか、そこがコミュニケーションがうまくいくポイントになります。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部