
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
心地がいい相手は、視点が似ているせい!?
論理的な視点を持つ人と感覚的な視点を持つ人。
あなたはどちらのタイプですか?
言い換えると、「論理思考の強い人」と「感覚思考の強い人」。これも脳の特性と結びついています。
買い物に行ったときに、ついつい余計なものを買ってしまう人と、計画通りのものだけを買う人。
旅行に行くときに、行き当たりばったりな旅が好きな人と、予定をきっちり決めて、それを実行していく旅が好きな人。
誰かと買い物や旅行に行ったときにケンカになってしまうのは、この2つの異なるタイプの思考を持った人同士がぶつかるからです。
仕事でも、夫婦でも、友だち付き合いの中にでも、両タイプの人がいると、もめごとになる可能性を秘めています。
論理思考を持っている人は、脳の前頭前野を中心とした、理性や効率化を行う部分がより発達していることがわかっています。
一方で、直感を含む感覚思考が強い人は、脳の中の「デフォルトモードネットワーク」という自己理解や他者理解、創造性を司る部分が発達しています。
多くの人は、論理的に考えることが正しいと思っているかもしれませんが、実はそうではありません。
与えられる情報が数個と少ないときは、論理的に考えたほうが正しくなります。
一方で、与えられる情報が12種類になると、論理的に考えたグループよりも直感で考えたグループのほうが、商品を選ぶ際によい選択をすることがアムステルダム大学の調査で報告されています。
また、「アメリカン・アイドル」という米国で人気のオーディション番組があるのですが、こんな実験があります。まず、実験の参加者を理性で考えるグループと、直感で決めるグループに分け、誰が優勝するかを予想してもらうのです。
その結果、理性で考える人の的中率は21%だったのに対し、直感で決めた人はなんと、的中率が41%にもなりました。これは、「感覚的なお告げ効果(Emotional Oracle Effect)」と名付けられています。
こうした感覚に基づく成功体験は、私たちも日常的に体感しています。
たとえば、初めて会った人と話すとき、言葉はいいことを言っているのに、「この人、何か怪しい」と感じたことはないでしょうか。あとになって人に話を聞いてみると、実はウソを平気でつく人だったり、評判が悪い人だったり、という体験があるかもしれません。
これは、過去に出会った人たちの情報を脳が覚えていて、こういう特徴を持っている人はウソをついたり、人をだましたりする傾向があるというデータベースから正しい情報を検索してくれるからです。
ですので、たくさんの人と会った経験のない子どもは、目の前の相手が本当はどんな人かを正しく判断することができません。「あの人とは、仲良くなれそう」と感じるのも、それは私たち一人ひとりの経験の蓄積から下された認知、感覚思考と言えるものです。
■思考の似たもの同士は相性もよい
私は以前、国家公務員だったのですが、当時すごく話がわかりやすい先輩がいました。
その人と一緒に仕事をしていると、説明を聞いているだけで、こういう順番で話すとよりわかりやすいんだなと思うことが多々ありました。
テレビやYouTubeなどの動画でも、話がわかりやすい人がいますが、多くが論理的で理にかなった順番で話しているため、脳が理解しやすいと感じるからです。ですので、話のうまい人の映像を見ているだけで、論理的な能力を養うことができます。
人それぞれがどういう思考(バイアス)を持っているかによって、人間関係はかなり左右されるのです。
相性がいいと思う人は、思考が似ていることがよくあります。
価値観が合うというのも、実はバイアスが似ていることがそう感じさせているケースがあります。
とはいえ、バイアスの種類は多岐にわたります。現在、わかっているだけで200種類以上のバイアスがあると言われています。これだけあると、自分にはどんなバイアスがあるかを正確にわかっている人はほぼいません。
なので、付き合ってみてから思考のズレが生じることが多いのです。
自分の思考はどんなものであるか、相手の特徴的な思考は何か? これは観察していくしかありません。
自分と相手のタイプを知ることで、コミュニケーションの質は大きく上がります。
☆ ☆ ☆
未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部