
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
人にお願いを聞いてほしいときのマル秘テクニック
人と円滑なコミュニケーションを図ろうとするとき、大切なことがいくつかあります。相手にわかりやすい言葉を使ったり、考えを整理してから話すのが重要なことは当然ですが、それだけだと「伝わる」にならないことがあります。
ここで、老人脳にならないためのコミュニケーション術で重要なポイントをひとつお伝えします。
●相手の脳の状態が、話を受け入れやすい状態になっているかどうかを把握する
ただこれだけです。
どん底気分で落ち込んでいるときに、いくら正論を言われても、全く頭に入らないことはないでしょうか?
トイレを我慢しているときに、人の話を聞いていても、頭に入ってこないことはないでしょうか?
そうなんです。正しく「伝わる」ためには、相手が情報を「受信できる状態」であることがとても大切なのです。
相手が「受信できる状態」を生むためにはコツがあります。
それは、「相手が自分でコントロールできる状態をつくる」ということです。
●自分でコントロールできる状態→ポジティブバイアスが高まる(受信しやすい)
●自分でコントロールできない状態→ネガティブバイアスが高まる(受信しにくい)
車の運転をするときをイメージしてみてください。
自分が運転席にいるときは、自分が車をコントロールできる状態です。なので、自由を感じて、物事を前向きにとらえやすい(ポジティブバイアスが高まりやすい)状態になります。
一方で、もしもあなたが、知らない人が運転する車の助手席に座っている状態はどうでしょう? これは、想像するだけで恐ろしいですが、まさにネガティブバイアスが高まりやすい状態と言えます。他人の運転のほうが「危ない!」とハラハラしたり、「運転が下手」とイライラしたりするのも同じで、自分でコントロールできないとマイナスな気持ちになりやすくなります。
この特性を知っておくと、いろいろなことに応用ができます。
たとえば、パートナーに家事を手伝ってほしいとお願いするとき。以下の場合だと、どちらのほうが前向きにやる気をもってやってくれるでしょうか?
1 細かく指示を出して、100%忠実に実行するようにお願いした場合
2 気を付けてほしいポイントだけを共有し、具体的なやり方は相手に任せながら、「わからないことがあったら助け舟を出すから」と伝えてお願いした場合
想像がつくと思いますが、1のお願いの仕方だと、相手のネガティブバイアスが強まる可能性があります。
「やらされている」「言われた通りにやればいいんでしょ」というように、嫌々やってしまう強制的な作業になってしまうからです。
一方で、2の頼み方をしたらどうでしょうか? 自主的に考えてできることで、ポジティブバイアスが強まっていきます。
よく観察をしてみると、友だちができやすい人や、夫婦関係が良好な人は、「相手が自分でコントロールできる状態」でコミュニケーションする達人ばかりです。
私もスーパーエイジャーにたくさんお会いしてきましたが、インタビューしている私に、「そんな細かい表現は気にしなくていいから、あなたの好きに書いてね~」と言ってくれる人が多くいました。
命令ではなく、相手に自由を与えるコミュニケーションは、人を心地よくさせ、人間関係も充実させていくのです。
☆ ☆ ☆
未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部