
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
内向的な人がつながりをつくるにはどうしたらいいか?
友だち付き合いをすることがストレスになる人がいるのも事実です。
無理をして付き合いをすることはマイナスの作用しかありません。
そもそも人には、内面的才能と外面的才能とがあります。
外面的才能は、自分の外側に意識を向けることが好きな人が持っている才能です。人とつながるのが好き、コミュニケーションすることが好き、そんな人が持っているのが外面的才能です。
内面的才能は、自分の内側に意識を向けることが好きな人が持っている才能です。科学者、アーティスト、職人などに多く、何かを深く掘り下げていくことを得意とする能力です。
外面的才能が高い人のほうが、老人脳になりにくい要素を持っています。つながりをつくっているとか、アクティブに活動しているなどがそれにあたります。
内面的才能がある人は、無理やり「人とつながる」ことをしようとすると、逆に脳にストレスがかかり、マイナス効果になることもあります。
では、内面的才能が高い、いわゆる内向的な人はどうしたらいいのでしょうか。実は、方法はいろいろあるので、内向的な人もご安心を! 脳科学では、いろいろ面白い研究成果が出ています。
具体的にはこういうことをすると「つながり」を感じることができるようになります。
・ペットを飼う
・好きなキャラクター、好きな有名人などのグッズを買う
・自然と触れ合う体験をする
・自分の車に名前をつける
・愛用品にも名前をつける
どうでしょうか、すぐにできることもあるのではないでしょうか。
「こんなことで人とのつながりと同じような感情を持つことができるはずがない」、そう思う人もいるかもしれませんが、想像してみてください。たとえば、フィギュアを集めている人は、フィギュアを眺め、話しかけたりしているときとても幸せそうです。愛犬に話しかけている人も、同じように幸せそうですね。
そうなんです。これまで何度も説明してきましたが、脳は人でなくてもつながりを認識します。理由は「脳の錯覚」です。
脳は、行動によって錯覚が起きます。動物や物に対しても、人に対するときと同じように行動することで、脳は人のときと同じように理解するのです。
さらにもうひとつ。脳は「物を人に見立てる」というバイアスがあります。
たとえば、スマホなどで使う顔文字はただ記号を並べているだけなのに人の顔に見えますね。つまり、顔を見ている感覚になります。ですから、つながりをつくりたいときは、物を人に見立てていくことも方法のひとつです。
物に名前をつけるのも、人に見立てる方法としておすすめです。パソコンやスマホに顔のシールを貼って自分だけの名前をつけてみるなど、物に人格を持たせるイメージです。
行動によって脳が錯覚すると書きましたが、この錯覚を活用し、生活を楽しくする方法がほかにもいろいろあります。
たとえば、旅行に行きたいのになかなか行けないときは、テレビなどで旅行番組を見ながら、その地域の料理を食べると、脳は旅行に行った気になります。
私も若い頃にやっていたのですが、テレビ番組の「料理の鉄人」(フジテレビ系列)を見ながら、コンビニで買ってきた弁当を食べていました。
「テレビの料理と自分の食べている弁当のギャップで、脳にとってマイナスに作用しないの?」と疑問を持つかもしれませんが、脳はギャップよりも同化を選ぶのです。
一方で、オンライン飲み会のようなものは、脳の錯覚を生みにくいものです。オンラインの向こう側には実際の人間がいるので、主体が相手になってしまいます。そうなると自分と同化しにくいのです。むしろ、温泉宿の映像を見ながら日本酒を飲むというほうが脳は錯覚しやすいのです。
脳の錯覚をうまく使って、脳が喜ぶ工夫を生活の中に取り入れると、老人脳の予防になり、幸福度を上げることにもつながります。
☆ ☆ ☆
未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部