
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
うなずいてもらうだけで脳は大喜び!
「会話」は、一見何気なくやっているように見えますが、脳から見ると高度な作業をしています。
相手はどういう意図を持っているのか、それに対してどう返すか、頭の中でかなり考えないといけないので前頭前野が活性化し、老人脳を予防できます。
特に、夫婦や家族など日常よく話す相手ではなく、友人や初めて会う人など、より広くいろいろな人と会話をすることは、脳の視点で見れば「脳トレ」をしているようなものです。
逆に言えば、1日中部屋にこもり、誰とも話さないままでいると脳の老化は進みます。
■自分のことばかり話していたら要注意!
共感脳が衰えて「人の気持ちを読む能力」が落ちてしまうと、人と会話をする場面で自分の話ばかりして、相手の話をほとんど聞いていない、相手に興味を示さないなどの特徴が出てきます。これは老人脳です。自分のことばかり話す人、いますよね。そういう人は要注意です。
もし、自分の話ばかりしてしまい、相手の気持ちを読んでいないなと気付いたら、それを直す方法があります。
「視線」に注目するという方法です。
自分の話をしている人の視線は、たいていの場合相手を見ているのではなく、相手と自分の間くらいを見ていることが多いです。相手をちゃんと見ないで話していることがほとんどです。
しかし、相手をちゃんと見ると、相手に意識が行きやすくなります。そうすると、相手のことを認知し、気持ちを読むこともしやすくなります。視線を相手にしっかり向けることが「気持ちを読む」ことにつながるのです。
ちょっとしたことなのですが、これだけで会話は変化します。
次に会話では、相手の話を聞くことも大切です。それもただ聞くのではなく、うなずきながら聞くと、脳が活性化します。実際に私もよく講演会の参加者にやってもらうことがあります。私の話に対してうなずかないでいてもらう時間と、うなずきながら聞く時間をつくってもらいます。すると、うなずかずに聞いている時間は私の話があまり入っていかないのです。一方でうなずきながら聞く時間は、私の話が面白いように頭に入っていきます。これは、うなずくことで脳のスイッチが入って、自動的に相手の話を聞こうとするモードになるからです。
私たちは過去に「うなずく動作をするのは、相手の話を理解したとき」という体験をしています。すると脳はそのことを覚えていて、うなずく動作をした瞬間に、脳がいま言われていることを理解しようとするスイッチが入ります。うなずくことで脳が活性化するので会話や講演を聞くことが脳活になります。
また、うなずくことは、聞き手だけでなく話し手の脳まで活性化させます。
会話における「うなずき」の効果を調べた実験があります。うなずきロボットを使った実験です。人がロボットに向かって話しかけ、その都度ロボットがうなずきます。ロボットは、ただひたすらうなずくだけ。話はできません。そのときの話し手の脳の状態を調べました。
すると、驚きの結果が出ました。話し手の脳をスキャンして調べると、ロボットがうなずいてくれただけなのに、かなり活性化していました。また、うなずくだけで相手の印象が4割も高まってしまうという報告もあります。
人間は理解してほしい生き物です。だから自分の話を聞いてもらっていると思えるだけで脳が反応し活性化するのです。
人の承認欲求は世代を超えて、誰もが持っている欲求です。本当に承認されたかどうかわからなくても、「ただうなずいてもらうだけ」でも承認を感じ取ることができ、その相手がロボットだったとしても反応してしまうのが脳なのです。
「あなたを理解しているよ」というサインになる「うなずき」は重要な脳の活性化につながります。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部