
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
会話に「擬音語」を入れると体も脳も動きがよくなる
脳にいい言葉としてぜひ使ってほしいのが「擬音語」(擬声語とも言います)です。擬音語とは、動物の声や物の音を言葉で表現したもので、たとえば「にゃ~にゃ~」「わんわん」「がらがら」「ざあざあ」などの表現を言います。
この擬音語が、実は脳の活性化と結びついています。
何気なく使っている擬音語ですが、脳にかなりの影響を与えていることがわかっています。
たとえば、エクササイズをするときに、擬音語を入れてやると体の動きが変わります。実際に体験してもらいたいので、ぜひやってみてください。
やり方はこうです。
(1)真っすぐ立って、両手を左右に水平になるように広げてください。
(2)そのままの状態で腰をいけるところまで回してください(左右どちらでも大丈夫です)。
(3)自分の限界というところまで回したら、その位置を覚えておいてください。
(4)元に戻してください。
(5)今度はある言葉を言いながら、同じ態勢で同じ方向に腰を回してください。
ある言葉とは、「ス~ッ」という言葉です。ス~ッと言いながら腰を限界まで回していきます。
どうでしょうか? 最初に腰を回したときよりも、「ス~ッ」という擬音語を言いながら回したほうが、より腰が回ったのではないでしょうか。これが擬音語のパワーです。
擬音語を使うと、一般の動詞や副詞などの言葉に比べて、運動機能を司る運動野や前運動野、そして小脳などを含む幅広い脳の領域が活性化します。
スポーツ選手の中にも、擬音語を取り入れている人がたくさんいます。たとえば、砲丸投げの選手は投げるときにすごい叫び声を出します。テニス選手や卓球の選手も声を出す選手がいますよね。
擬音語を発することで、脳が指令を出し、制御しているリミッターを外し、筋肉の限界まで力を出せるようになります。そのスイッチが「声」です。
ちなみにこういった効果を「シャウト効果」と呼びます。
これは何もスポーツに限った話ではありません。さまざまなシーンで擬音語を使うことで、脳を活性化できるのです。
跳び箱を跳べない子どもに擬音語を使った方法を教えて、すぐに跳べるようになったということがありました。
跳び箱が跳べない子どもに、跳ぶときに「タッタッタッ、トン、パッ、トン」という言葉を心の中でつぶやきながら跳んでみてと伝えたところ、すぐに跳べるようになったのです。
小脳が活性化し、身体能力が上がったのです。
実はこの擬音語、プラスの擬音語ではなく、マイナスの擬音語を言う人がいます。
たとえば高齢者であれば、「ガクガク」「ギシギシ」などです。
足が弱い人が「足がガクガクする」と言ってしまうと、その瞬間にガクガクする感覚が脳の中で大きくなってしまい、結果、症状をより大きく感じてしまいます。
マイナスの擬音はこのように、体にもマイナスに作用する可能性があります。こういうときはどうしたらいいのでしょうか。ひとつは「プラスの擬音語に変換する」ということです。ただ、「足がガクガクする」など、プラスの擬音語に変換するのが難しいケースもあります。そのときは濁点をとってみてください。
「ガクガク」だったら「カクカク」とか、「ギシギシ」だったら「キシキシ」。「ギラギラ」だったら「キラキラ」。濁点をとると印象がかなり変わります。それだけで脳の刺激を受ける場所が変わるので、痛みが軽くなったり、気持ちまで変化してきます。
歩くことがしんどい人は擬音語を言いながら歩くと、つらさが軽減できる場合もあります。「サッサッサッ」「トントントン」「ポンポンポン」……スタスタ歩けるイメージになる言葉であればなんでもOKです。心でこれらの擬音語を言いながら歩くだけで変化するので、ぜひ試してみてください。
☆ ☆ ☆
未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
【Amazonで購入する】
【楽天ブックスで購入する】
いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部