
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
「自分は若い」と本気で思うだけで、脳も体も若くなる
「学生時代の友人と久しぶりに会っていろいろ話をしたらすごく元気になりました。なんだか若い時代に戻ったみたいで、楽しかった。やっぱり昔の仲間はいいですね」
こんな話を70代の女性から聞きました。こういう経験がある人も多いと思うのですが、元気になったのには理由があります。自分の若い時代に戻ったような感覚や自分は若いと思うことは、脳にとてもいい刺激をもたらすのです。
古い調査(1981年)ですが、アメリカのハーバード大学でこんな実験がありました。70代になる8人が22年前の内装に仕上げた建物の中で5日間共同生活をするというものです。内装だけでなく、たとえばテレビは1959年当時に流行していた白黒テレビを置き、ラジオからは当時人気があった歌が流れてくる。本棚にある雑誌や本も、1959年のものを置き、環境そのものを22年前にして、5日間暮らしたわけです。
そしてこんなルールを敷きました。
・22年前の自分になりきるように努力する。昔話をするのはOKだが、昔を懐かしむのではなく、当時の自分になりきって話す。
・当時の話はすべて「現在形」で話す。当時の映画の批評や時事ネタ、当時の出来事などをすべて「現在の話」として話をする。
・自分の写真や家族の写真は現在のものではなく、22年前以前のものを飾る。
なかなか面白い実験です。そして、この実験から驚きの結果が出たのです。
1 手先の器用さが向上した
2 姿勢がよくなった
3 視力がアップした
4 見た目が若くなった
5 考え方が柔らかくなった
これだけの若返り効果が表れました。自分は若いと思い込んで行動するだけで、脳に変化が生まれたのです。
若く見えるようにしただけで、血圧まで下がったという実験もあります。「ヘアサロン実験」というものなのですが、27歳から83歳の女性47名に対して、髪のカラーリングを行い、実年齢よりも若く見えるようにしました。するとこちらも驚くような結果が出ました。
髪を染めて若く見えるようになった人たちの血圧が、若い頃の血圧に戻っていたのです。
年配の人が若づくりをしていると、「あの人は年齢も考えず若づくりしていて恥ずかしい」なんてことを言う人もいますが、体にとっても脳にとっても、若づくりはいい方向に作用します。脳内のイメージを変化させ、それによって生理的反応(体内で起こる化学過程)にまで影響があり、健康状態がよりよくなっていくのです。
さらに、見た目年齢は血管年齢にも関係していると言われています。
「実年齢より見た目が若い人」と「実年齢より見た目が老けている人」の血管年齢を調査したところ、こんな結果が出ました。
見た目が若い人
実年齢より血管年齢が若い 79%
見た目が老けている人
実年齢より血管年齢が若い 19%
見た目が実年齢よりも老けている人は、81%の人が血管年齢まで高くなるということまでわかりました。見た目の差でかなりの違いが出ています。
また、主観年齢が若い人ほど、将来の自分について前向きな見解をもっていることもわかっています。
■脳にとってのNGワード
自分を若く感じていたり、見た目年齢が若いことによる効能は、ほかにもたくさんあります。そう考えると、もう自分のことをこう言ったり、考えたりするのは止めたほうがいいでしょう。
これは脳にとっての3大NGワードです。
老けた
歳をとった
もう若くない
歳をとっているというイメージは、死亡リスクまで高めます。自分の年齢に対して実年齢よりも8~13歳高く感じている人は、死亡リスクや病気リスクが通常より18~35%高かったというのです。
「歳をとり、人生が悪化している」「若い頃に比べると幸せでない」「実年齢より老けている」「顔が同年齢の人に比べて老けている」など、自分は老けている、歳とともに幸せが減っていると考えている人は、脳の老化のペースが速く、病気リスクや死亡リスクが上がるのです。
☆ ☆ ☆
未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部