人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
働くことは老人脳の予防に!60歳からの適職の見つけ方
定年が65歳に引き上げられる企業が増え、70歳定年も現実味を帯びてきています。実際に60歳を超えて働いていることは普通になっています。
下の表は「60歳以上で働いている人の男女別・年齢別の割合」です。
どうでしょうか。これを見ると男性は70代前半でも4割以上の人が働いていますし、女性も60代後半で4割以上の人が働いています。働くことは老人脳を予防するので、脳の視点から見たらいいことです。もちろん、「十分働いたんだから、もう勘弁してほしい」「お金を稼がないといけないから、しょうがなくやっている」という人もいると思いますが、そういう考えは脳にストレスがかかるので、考え方をチェンジさせ前向きに働くようにとらえたほうが脳のためになります。

ちなみに、65歳以上の人で働いている率が高い県のトップ3は、1位長野県、2位山梨県、3位東京都です。
長野県は平均寿命が上位な県です。山梨県は平均寿命は中位ですが健康寿命ランキングでは男性2位、女性2位と上位にきています。もちろん、働くことだけが長寿の理由にはなりませんが、働くことが体にいい影響を及ぼしているということを裏付けする結果でもあります。
「働くこと」には老人脳予防の要素がてんこ盛りです。
「社会や人とのつながりができる」「自分の役割が生まれる」「収入があることでお金の不安を軽減できる」「体を動かすことで脳を活性化できる」「作業をすることで前頭前野を活用できる」「仕事を覚えるのに記憶力を使う」「予定を入れることでやる気が高まる」など、まさにいいことだらけなのです。
■60歳以上の適職とは?
では、60歳を過ぎてからは、どういう仕事をするのがいいのでしょうか。
実際には、60歳を超えると非正規雇用で働いている人が多くなります。いままで働いていた会社で再雇用ということもあるでしょうし、転職もあると思います。
また、パートやアルバイトのケースもあると思いますが、60歳を超えると専門的なスキルがある場合を除き、仕事の選択の幅は若い頃に比べどうしても狭くなってきます。体力が落ちる、視力が低下する、物覚えが悪くなる……。加齢とともに衰える部分がいろいろある中で、60歳を超えた人にとっての適職はどういう仕事なのでしょうか。
脳の観点から見た適職を紹介します。もちろん個人差があるので絶対的なものではありませんが、科学的な研究成果から導き出された結論です。
60歳以降の人に向いている仕事は、ひとつは言語能力を使う仕事です。たとえば、人に教える、文章を書く仕事など。
2つ目は相手に安心感を与える仕事です。たとえば、チームの中でムードメーカーを担うポジションは60歳以上に向いている仕事です。30歳のときより、40歳のときより、50歳のときより、よりいい仕事ができる可能性があります。
なぜなら、先に述べた通り、言語の能力は加齢とともにどんどん伸びて、67歳でピークに達するからです。しかも、その後しばらくその能力を維持することができます。作家に高齢な人が多いのもそのような理由があるのかもしれません。
また、加齢とともにドーパミンの量は減ってきますが、人とつながるときに分泌される幸せホルモン・オキシトシンは増えていきます。迷惑な老人、キレる老人など、マイナスな老化に向かわない人であれば、高齢であることは、その存在だけで人にリラックス効果を与えることもできます。
せかせかした人を見ると、私たちはミラーニューロン効果で自分まで焦ってしまうことがありますが、リラックスした存在はミラーニューロン効果で周囲の気持ちも和ませてくれるのです。
また、若いときに脳に刻まれた記憶や経験は、歳をとっても体に残ります。以前、私がよく行った美味しい洋食屋がありました。シェフが60代で体調不良になって、かなり長く休業していたのですが、再オープンしたときお店に行ったら、味もサービスも依然と全く変わっていませんでした。病気もあり、以前のように体を動かせないのではと心配していたのですが、それは杞憂で、味も素晴らしく感動したことをいまでもよく覚えています。
長年積み重ねてきた経験やスキルは、箸の持ち方を忘れないように、ずっと記憶の中に鮮やかに刻まれているのです。
言葉を通して自分の経験を教えることは、若い世代に、技術や経験だけでなく、大切な考え方、心の持ちようなどを伝えていくことでもあります。これは人生経験を積んだ人の大切な役割なのではないでしょうか。
目には見えない大切な考え方を教え伝えることで、より豊かな社会に発展させることができます。若い人から大人・高齢者まで幅広い世代が生き生きとして幸せに生きることができたら、これほど素晴らしいことはないかもしれません。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部







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