
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
定年後の手帳の使い方
「働いているときは予定がいろいろあったけれど、定年後は手帳に書く予定がほとんどなくなったので、手帳を使わなくなってしまった。いまではカレンダーに予定を書き込んでいます」
60代後半の男性からそんな話を聞きました。
もし毎日、手帳に書き込むほどの予定がなかったとしても、手帳を使うメリットは数多くあります。手帳は脳の認知機能を高めるツールになります。私はむしろ定年後こそ、ぜひ手帳を使ってもらいたいと思っています。ただし、あなたが考えているような手帳の使い方とは少し違う方法で。というのも、認知機能を高めるには、いくつか書き方のコツがあるのです。
■脳を活性化する手帳術
手帳を使って「生きる目標を設定する」という方法です。
次の質問の答えを手帳に書いてください。
「もし、明日死ぬとしたら何をしたいですか?」
「もし、1週間後に死ぬとしたら何をしたいですか?」
「もし、1カ月後に死ぬとしたら何をしたいですか?」
「もし、1年後に死ぬとしたら何をしたいですか?」
これは、「本当にやりたいことを見つける」ための質問です。最初の質問から順番に回答を手帳に書いてください。死を意識すると、本当にやり残したことが見えてきます。
自分の人生の終わりを意識しだすのは何歳くらいからでしょうか。人によって違いはあると思いますが、歳を重ねれば重ねるほど、終わりへの意識は高まっていくはずです。脳科学の見地からすると、人生の終わりを意識することは、脳の認知機能を上げる効果があります。
「明日死ぬとしたら」と、「1週間後」「1カ月後」「1年後」では、やりたいことのタイプが変わってきます。こうやって期限にバリエーションを持たせることで、自分がやりたいことの全体像が見えてきます。
「明日」が期限だと、やれることはかなり限られます。「家族で過ごしたい」「一番好きな食べ物を思いっきり食べたい」「お世話になった人にちゃんと挨拶に行きたい」「身の回りを片付けたい」などが出てきます。全体に、安定を満たす行為が出てきます。
期限が延びていくと、だんだんと安定のニーズから「やりたかったけれどやれなかった」ことなど、やり残したことへの欲求が出てきます。
「もし、1年後に死ぬとしたら?」の質問への回答には、こんなものがありました。
「本を書きたい」
「世界中を旅行したい」
「結婚したことがないので、結婚したい」
「残される家族のために家を建てたい」
1年後に出てきたこと、これがその人が持っている「やりたいこと」です。これを手帳に忘れないよう書き込んでください。また月に1回、この内容を見直していってください。
「やりたいこと」が明確になるだけでも大きな成果です。これが目標になるからです。実際に実現できるかどうかよりも、目標ができることのほうが脳には大切なのです。
以前、1年後に死ぬとしたらという質問に対し、「孤児院をつくりたい」という回答をした人がいました。孤児院を実際につくるとなると、かなりのお金がかかります。それが難しかったとしても、苦しむ子どもたちのために毎月寄附をする、ボランティア活動をする、そういったいまできる行動をするだけでもいいのです。これだけで、脳の前頭前野を含めたあらゆる場所が活性化します。行動は小さくても大丈夫です。さらに言えば、実際に何も行動しなかったとしても、目標を持つだけでも脳は動き出しているのです。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部