
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
肉好きな人はなぜ長生きするのか
60代、70代の人と会食に行くときの話です。「何か食べたいものはありますか?」と聞くと、多くの人が「なんでもいいです」と答えます。もちろん遠慮したり、気を遣ったりしてもらっている部分もあるとは思いますが、「なんでもいいです」のあとにこんな言葉がよく続きます。
「最近、食べたいものが出てこないんですよね……」
食欲も生理的欲求のひとつなので、年齢とともに「減ってくる欲」に入ります。
一方でスーパーエイジャーには、食欲旺盛で肉が大好きという人が多くいます。世界一の長寿者になったことのある北川みなさん(没年115歳)は100歳になるまで農家で働き、牛肉が大好きだったそうです。同じくスーパーエイジャーの中地シゲヨさん(没年115歳)も焼き肉、唐揚げが大好き。男性では中願寺雄吉さん(没年114歳)も1日3食は欠かさず、牛肉とかしわ飯(とりの炊き込みご飯)が好物だったそうです。ほかにも肉好きのスーパーエイジャーはたくさんいます。
そもそも、肉が好きだからスーパーエイジャーになれたのか? スーパーエイジャーだから肉が好きなままでいられるのか? どちらなのかも気になるところですよね。
その答えは、世界中のいろいろなリサーチを総合すると、「両方ある」が正解です。
まず、これを考える上で大切なことは、100歳を超えるスーパーエイジャーは、牛肉や乳製品などの動物性タンパク質をほとんど毎日とる人が、なんと約60%もいるという事実です。
男性で世界最高齢歴代1位の記録(116歳)を達成した木村次郎右衛門さんは、毎朝ヨーグルトを食べていました。また、3位のエミリアーノ・メルカド・デル・トロさん(没年115歳)も牛乳とタラが大好物だったそうです。
また、牛乳を飲む人はあまり飲まない人に比べて、10年後の生存率が高くなるというデータもあります。
牛乳や肉などの動物性タンパク質の中には、やる気ホルモンであるドーパミンの原料、チロシンというアミノ酸が含まれています。
また、リラックスホルモンのセロトニンを生み出すトリプトファンというアミノ酸も含まれています。肉や乳製品などのタンパク質から必要なアミノ酸を取り込めなくなってしまうと、脳内物質をつくることができなくなり、認知機能の低下を引き起こし、老人脳が加速してしまうリスクがあるのです。
また、動物性タンパク質は、筋肉をつくる原料にもなるため、フレイル(健康な状態と介護が必要な状態の中間の状態)を防ぐ効果もあります。また、筋肉を維持するためにも、動物性タンパク質が豊富に含まれる「肉・魚・卵」を、バランスよく定期的に食べることが最も効果的という報告もあります。
イタリア最高齢のエンマ・モラーノさん(没年117歳)は、長寿の秘訣は1日3個の卵を食べることだったそうです。100歳超えの長寿者が多く住むヨーロッパのジョージアの村の食事でも、毎日どんぶり一杯のヨーグルトを食べています。
高齢になると動物性タンパク質が脳にとっても体にとっても必要となることが、最新の研究でわかってきています。
ちなみに、野菜が体にいいからと野菜しか食べないのは、脳にはよくありません。
オックスフォード大学の研究では、ベジタリアンは脳卒中のリスクが高まることがわかっています。またほかの研究でも、61歳~87歳の107人に対して記憶テストや身体機能のチェック、脳のスキャンなどを行い、その5年後に同様のテストを行った結果、ビタミンBが不足している人には脳が萎縮する傾向が見られたとのこと。これは肉や魚、卵に含まれるビタミンB12の欠乏によるものとみられています。この結果を見ても、スーパーエイジャーに肉好きが多いということの理由がわかります。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部