
レクサス「RX」は1998年、北米市場でラグジュアリークロスオーバーSUVとして誕生した。2005年にはラグジュアリー市場に初めてのハイブリッドモデル(HEV)の「RX400h」を発売。2022年にはクラストップレベルを誇るEVの航続距離と、力強い加速性能を持つプラグインハイブリッド(PHEV)の「RX450h+」を発売している。さらに2023年には2.5Lエンジン+モーターのハイブリッド「RX350h」を追加し、ラインアップの充実を図っている。
このような多彩な車種展開もあり「RX」は1998年の販売開始から2024年末までに約95の国と地域で累計400万台を販売し、レクサスブランドのコアモデルとしての地位を確立している。さらに2005年のハイブリッド発売以降、「RX」はグローバルでの電動車(HEV、PHEV、EV)比率は50%を超え、グローバルでのCo2排出量削減に貢献しているモデルに位置付けられている。
その「RX」シリーズが2025年初めに一部改良を受け、進化した。現時点での新しい「RX」のバリエーションは「500h」の2.4LLターボ4WDハイブリッド、「450h+」の2.5L、4WDプラグインハイブリッド、「350h」の2.5L、FF/4WDハイブリッド、「350」の2.4Lターボ、FF/4WDの4グレードがラインアップ。価格帯も903万円から668万円と幅広いユーザーに対応している。今回は「RX450h+ バージョンL」に試乗した。2.5LのAWDプラグインハイブリッドだ。
パワーユニットは直列4気筒2.5Lガソリン+フロントモーター+リアモーターを搭載。試乗車両を受け取った時の充電状態は100%で、航続可能距離は78kmを表示していた。メーカーの公表値(86km)に近い値だ。ちなみに総電力量は18.1kWh。改良された「450h+」の変更点は、外観はリアドアガラスの素材がアコースティックガラスに代わるなどごくわずか。内装は液晶メーターのサイズが12.3インチになり、コンソールフロント部に室内イルミネーションが加わったぐらいだ。
しかし、走りに関してはかなりグレードアップされていた。広報資料によると、ショックアブゾーバーの減衰力、AVS制御定数、EPS制御定数、シャーシのセッティングなどで、車両の上下挙動を低減しているという。これは下山のメインテストコースで走り込んだ成果というわけだ。
早速、その走りの味を確かめてみた。ドライブモードは「ノーマル」。他に「スポーツ」「エコ」「カスタム」が選べる。センターコンソール部分にはEVホールド/チャージ/ESCオフ/車高などを調節するスイッチが備わる。EV走行では電気残量が少なくなると、走行中に充電することができる。その間、エンジンは始動し、その振動も若干、体感できるが、音の進入は抑えられている。
EVでの走りはスタートから音もなく軽快。2トンを超える車体をストレスなく加速させる。実際に、0→100km/h加速を計測すると、EVモードで6秒台をマークした。操縦性は、直進時の操舵力は低速から高速まで重め。高速走行での直進安定性は、フロントエンジン+モーターと、リアモーターの駆動力により、安定している。
ワインディングに入ると、ハンドリングはさらに安定感が増す。コーナーではハンドルを切り込むと、即座に前輪が反応する。同時に後輪からの駆動がかかり、車両を曲がる方向に押し出す動きを感じるのだ。これは、今回から「RX450h+」の4WDモデルにもDRS(ダイナミックリアステアリング)を設定した効果だ。この効果はドライブモードを「スポーツ」にするとさらに強力に体感できた。コーナーでの同相転舵が効果的なのだ。
こうした走りの時もEVモードは使える。車両を受け取った時の、EVの航続距離は78kmだったが、高速走行中にホールドモードを選択すると、電池容量の減少を抑えることができる。当然、ガソリンは消費するが。この状態だと、ほとんど日常生活での走行はEV走行なので、走行音は静か。ここではガソリンの消費もない。郊外へのドライブでは、峠道などでEVモードを使えば、のぼり坂での加速もアクセルレスポンスはダイレクトで、しかもエンジン音の高まりもなく、グングン加速するという体験ができる。
充電に関しては、残量50%を切った時に自宅の200V、3kWで充電したら、100%まで、約3時間と表示された。これなら日常生活ではピュアEVとしても使えそうだ。居住性に関しては、リアシートは着座位置もやや高めで、座面も大きく、快適。床面中央のトンネルも低く、3人掛けも苦にならない。さらに背もたれは、中央アームレスト部分のみの可倒もできるので、長尺物を積むのも便利だ。
リアシートの背もたれは、荷室側面のスイッチで電動可倒する。荷室も奥行き、左右幅ともに1m以上確保されている。荷室の床下手前にはサブトランクがあり、充電ケーブルをここに収納すれば、荷室が広く使えるのも便利だった。世界的にもベストセラーカーとなっている「RX」は質感、メカニカルな側面、取り回しの良さなど、確実に進化していた。
■ 関連情報
https://lexus.jp/models/rx/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博