
人生100年時代。年齢を重ねることは、経験と知恵が深まる素晴らしい旅です。でも、一方で記憶力や集中力の低下に不安を感じることがあるかもしれません。
そんな中、脳科学者・西剛志氏が提案するのは、「脳の若さ」を保つためのシンプルな習慣。実際に、80歳を過ぎても好奇心を持ち続け、学びを楽しむ人たちが実践していることとは?
この記事では、書籍『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、脳を元気に保つヒントを抜粋・再編集してわかりやすくご紹介します。
年齢に関係なく、今から始められる「脳のメンテナンス」を一緒に学びましょう。
いくつになっても脳の神経ネットワークが増える方法がある
「最近、何をするにも億劫で、やる気がしない」
こういう感情が強くなっていたら、すでに老人脳が進んでいます。やる気脳が老化していると言えるかもしれません。
しかし、こんなとき、ドーパミンを分泌させるよい方法があります。それは、やろうと思っていることを20秒だけやってみることです。脳には作業興奮という性質があって、やり始めるとそのままやってしまうという性質があります(たとえば、掃除をやろうと思うと面倒ですが、「20秒だけやってみよう」と思うと、結局しばらく掃除してしまうのです)。
私たちは大きなことをしようと思うと、なかなか動けませんが、小さなことだとやってみようと思うのです。スーパーエイジャーもそうです。大きなことをしているように見えますが、意外と小さなことから始めることが多かったりします。歩くことから始めたら、楽しくなってきてマラソンにチャレンジしてみたり、シンプルな生活が好きで日々の写真をアップしたら、インスタグラマーになってしまったり、些細なことから始めていることがわかっています。
また、新しいことに挑戦するのも脳を活性化させることがわかっています。
新しいことにチャレンジするのは脳の機能維持に効果があります。脳の神経ネットワークが新しいことにチャレンジすると増えるからです。
人間の脳は加齢とともにだんだんと細胞が少なくなっていき、神経ネットワークも減っていくイメージがあるかもしれませんが、半分正解で半分は間違いです。脳の細胞の数は確かに減っていきますが、ネットワークは加齢とともに減るわけではありません。むしろ経験とともに増えていきます。
神経ネットワークとは膨大な数の神経細胞のつながりのことで、このネットワークが記憶や学習、運動、さらには生きるために必要な数々の知識など、脳のさまざまな活動を支えています。
たとえば、何か新しいことを始めると、神経と神経をつなぐネットワークが新しく生まれます。この能力は高齢者でも起きることがわかっています。神経のネットワークの数は年齢に関係なく増やすことができます。
ただ、新しいことをしないと刺激が入ってこないため、ネットワークが形成されません。
いくつになっても脳が老化しないスーパーエイジャーは、脳神経ネットワークの数が多いことがわかっています。スーパーエイジャーは新しいことに挑戦している人ばかりですから納得です。
国立長寿医療研究センターの西田裕紀子副部長の大規模調査でわかったことがあります。40歳から81歳の男女1591人に対してテストした6年間の研究により、「新しいことが好きな人」は、歳をとっても脳の認知機能がほとんど落ちていないという結果が出たのです。
新しいことにチャレンジしない人は、もともと認知機能が低い人が多く、それが6年後にさらに低くなってしまいます。
しかし、「新しいことにチャレンジするのが好きな人」は、なんと6年経っても脳の認知機能がほぼ落ちていなかったのです。また知的好奇心が高いほど、記憶の定着率がよくなることもわかっています。
■「脳に刺激を与える人」と接する機会を増やす
減ってきたさまざまな欲をこれ以上減らさないことも、脳を老化させないために必要です。
ポイントは「刺激」です。たとえば、コロナになって人と会うことや外に出る機会が大幅に減った人は、脳への刺激も激減しています。
意識的に脳への刺激を増やすことが「欲」を減らさないコツです。特に人とのつながりから得られる刺激は、脳に大きな刺激をもたらします。なぜなら、オキシトシンはドーパミンも活性化させるからです。社会的なつながりはあなたに多幸感をもたらすだけでなく、生きる意欲ややる気さえ生み出す可能性があります。
特に意識したいのは、いつも同じ人ではなく、若い人やスーパーエイジャーと接する機会を増やし、自分の脳に刺激を与えていくのが効果的です。
そのきっかけづくりになるのが、新しい趣味や社会活動を始めることです。
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未来の自分のために、今日からできることを!
年齢に関係なく、脳も心も、日々の習慣で変えていけます。小さな一歩が、未来の自分を大きく変えるかもしれません。ぜひ、今日からできることをひとつ、始めてみませんか?

『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』
著者西 剛志
発売日2022年8月13日
価格1400円(税別)
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いくつになっても脳が若いままの人と、老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を伝授!スーパーエイジャー(高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るコツを届ける一冊です。
(著者情報)
西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。 子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。著作は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)をはじめとして累計発行部数10万部を突破。
構成/DIME編集部