
不動産を購入すると固定資産税はもとより、相続の際には相続税、生前贈与すると贈与税など、さまざまな税金を支払わなければなりません。仕方がないとは思っていても、できるだけ税金を減らしたいと思うのが本音ではないでしょうか。
節税して1億円貯めたという公認会計士で税理士の永江将典さんは、そんな税金の悩みを解決するプロ。永江さん監修の『税金をできるだけゼロに近づける本』(宝島社)では、少しでも税金を減らすための控除の使い方や申請方法などを解説しています。
ムダな税金を払っているかどうかで、その後の人生は大きく変わるかも!? あきらめたり、面倒がらずに、節税ワザを使って豊かな暮らしを目指しましょう。
今回は『税金をできるだけゼロに近づける本』から不動産の相続税を少しでも減らす方法をご紹介します。相続税の申告期限(10か月)は延長できません。一番の節税は相続でもめないことですが、もめた場合も未分割で申告することが可能です。
相続した空き家を3年以内に売ると最高3000万円の控除が受けられる
相続で取得した家が空き家になって放置されるケースが問題になっています。空き家の荒廃を防ぐため、相続開始から3年以内に空き家とその敷地を売却した場合は、売却で得た所得から最高3,000 万円まで控除する特例があります。以前は、売却前に売主が空き家の撤去または耐震改修などをしないと控除が使えませんでしたが、要件が撤廃され、空き家と土地を現状のまま売却しても、控除が適用されるようになっています。
■空き家譲渡所得の特例が使える要件は?
●亡くなった人が1人で住んでいたか、老人ホーム入所で空き家になっていた
●1981年5月31日以前に建築された
●相続してからずっと空き家の状態
●譲渡価格が1億円以下
母は亡くなるまで自宅に住み、息子の相続税も安くなる方法
〈例〉父の財産自宅4,000万円、現金3,000万円を母と息子で相続する場合
[問題1]母がすべて相続すると配偶者控除で相続税がかからないが、二次相続で息子の相続税負担が重くなる
[問題2]母が自宅に住み続けながら財産の1/2(3,500万円)を息子に分けるには、母が代償として息子に500万円払う必要あり。母にお金がないと自宅売却の危機に

■対策STEP(1)一次相続で配偶者居住権を設定する


《POINT!》
●母は自宅に住み続けられ、遺産も平等に分けられる
●同居の息子や家なき子が負担付所有権を相続した場合、小規模宅地等の特例が併用できるので、相続税が安くなる
■小規模宅地等の特例

亡くなった人の自宅を配偶者や同居の親族が相続すると、土地の広さが330m²までの部分の評価額が80%減額になります。故人がひとり暮らしで、同居親族がいなかった場合は、別居でも賃貸住まいで持ち家のない子ども(家なき子)が相続すると、80%減額の特例が使えます。また、自宅でお店を営業していた場合は、自宅部分は小規模宅地、お店部分は特定事業用宅地として、それぞれ評価額が80%減額です。この場合は、相続人がお店を引き継いで営業することが要件です。
■対策STEP(2)二次相続は非課税に
相続人が母と息子の2人で、預貯金が少なく、おもな財産が自宅という場合、自宅を売却すると母が住む家がなくなり、売らないと息子に相続分の財産が渡せないという問題が起こる場合があります。このようなケースでは、母に配偶者居住権を設定し、息子が小規模宅地等の特例で自宅を相続する方法があります。母は亡くなるまで自宅に住み続けられるうえに、土地の評価額が下がり、息子の相続税も安くなります。また、二次相続での節税効果も大きくなります。

もめた場合は未分割で申告すれば、相続税の配偶者控除はなくならない
遺産分割が間に合わない場合は、民法の法定相続分や一定の遺贈割合で財産をもらったものとして相続税を計算し、申告しなければなりません。この計算では、配偶者控除や小規模宅地等の特例は使えません。ただし、相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したうえで、3年以内に分割を完了すれば、あとから特例を適用してもらえます。分割の翌日から4カ月以内に「更正の請求」を行い、払いすぎた相続税を還付してもらいましょう。

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『税金をできるだけゼロに近づける本』
監修/永江将典
宝島社 1,210円(税込)
〈監修〉
永江将典(ながえ まさのり)
公認会計士・税理士。4つの会社を経営する複業オーナー経営者。監査法人トーマツで上場企業の監査や株式公開支援業務を担当。トヨタ自動車に転職し経理部に勤めるも、やりがいを見つけられず転職。その後起業し、収入が激減するも、多数の億万長者からお金を稼ぐ極意を学び、YouTubeで1億円を稼ぎ、各種事業や不動産業を開始。『トヨタを辞めて時給15円に堕ち、シンガポールで覚醒し、40歳でFIREした話。』(サンライズパブリッシング)、『税金でこれ以上損をしない方法』(翔泳社)などの著書で、お金を稼ぐことや節税の大切さを訴えている。