
電動歯ブラシは、今や数ある生活家電の中でも進化が止まらないカテゴリの一つ。
パナソニックが9月上旬に発売する新モデル「ドルツ プレミアム EW-DP88」は、同社の長年のオーラルケア研究と開発陣の執念が注ぎ込まれた、まさにプレミアムの名にふさわしい電動歯ブラシだ。
ドルツは1977年に誕生し、以来40年以上にわたって歯周ケアに向き合ってきたロングセラーブランド。7月末に行われた発表会では、歴代モデルがずらりと並んだ。
オーラルケア市場の「歯間ケア」に着目
パナソニックがオーラルケア市場の次なる一手として注目したのが、「歯間のケア」。
健康寿命を延ばすことを目的とした国の政策「スマートライフプロジェクト」や、国民皆歯科健診の推進により、歯周病予防への関心は年々高まっている。
その一方で、40代以上では4mm以上の歯周ポケットを持つ人が4割超という調査結果も。歯周病は全身の健康にも関係する重大なリスクであり、「歯間までしっかり磨けているか」がセルフケアの質を左右する。
実際、電動歯ブラシユーザーの多くが「ブラシヘッドが大きく、細かいところまで磨けない」と感じており、歯間部はフロスなどで手磨きしているという声も。
この「電動でも磨ききれない」という悩みに正面から応えたのが、今回の『ドルツプレミアム』だ。
「ダブル音波振動の進化」と「柄のスリム化」を開発テーマに掲げ、なんと8年の歳月が費やされたという。
パナソニック独自の「ダブル音波振動」が歯周ケアを一新
最大の進化ポイントが、「ダブル音波振動」のアップデート。歯周ポケットに沿って動く“横方向”のリニア音波振動と、歯間に入り込んで歯垢をかき出す“縦方向”のフロス音波振動という、2つの微細な動きを同時に実現することに成功した。
従来モデルよりもストローク数が増加し、2万ストローク/分という高速振動で歯間の汚れをしっかり除去。新たに複数のモードが追加され、振動の強弱も選べるようになったことで、歯茎に優しいケアから力強い磨き心地まで、好みに応じたカスタマイズが可能になった。
この“二方向の振動”は、手磨きでは絶対に再現できないパナソニック独自の機構。すでに特許出願中であり、今後のスタンダードになり得るポテンシャルを秘めている。
ブラシの設計に1年、試作100本以上──圧倒的な開発熱量
このダブル音波振動を最大限に活かすために開発されたのが、新設計の「歯間フィットブラシ」だ。
歯間にフィットしやすい山切り植毛を先端に採用し、ダブル音波振動と組み合わせることで歯垢を効率的に掻き出すことができる。
注目すべきは、ここにかけられた労力。
毛の長さや太さ、角度、配列、穴の数・位置など、約30万通り以上の可能性から最適解を導くべく、100本以上の試作品が制作されたという。開発には1年をかけ、「磨いては試し、磨いては直す」工程を何度も繰り返したとのこと。
結果として、歯間の歯垢除去力は従来比200%向上という圧倒的な成果を実現。見た目はシンプルながら、まさに“機能美”を体現したブラシが完成した。
柄のスリム化を目指し、本体を根本から再設計
電動歯ブラシの進化は性能だけでは不十分。「毎日手にするものだからこそ、使い心地やデザイン性も重要」というのが、開発陣の共通認識だった。
ユーザーの使い方を徹底的に観察した結果、意外にも「本体を下部で握っている人」が多数派であることが判明。そこで、持ち手の下部をスリムに絞ったデザインが採用された。
だが、ここからが開発者の腕の見せどころ。2つのモーターを搭載した構造を上下配置に見直し、小型モーターを新たに開発。さらには内部の回路やスイッチ配置も一新し、パワーを落とさずにコンパクト化を実現した。
開発メンバーは当初「1年では無理」と断言したほど、技術的ハードルは高かったが、それでもあきらめなかった。
「絶対に作ってやる」という開発者魂が、このフォルムに宿っている。
ブラッシングナビの“光”が、正しい磨き方をガイド
ユーザーサポートにも抜かりがない。新搭載の「ブラッシングナビ」は、ブラシの先まで光る透明ブラシを採用。正しい角度や圧力、持ち方を視覚的にナビゲートし、初心者でも質の高いブラッシングが行えるようになっている。
従来モデルでは本体リングの点灯だけだったが、「見えづらい」という声に応えるかたちで、光源をブラシ先端まで拡張。これにより、磨きながらでも自然と“正しい使い方”が身につく設計に。
この透明ブラシの開発には3年もの時間を費やしたというが、「使い勝手」だけでなく、「洗面所での清潔感ある佇まい」にも貢献している。
歯科医院での定期的なプロケアと並び、日々のセルフケアは口腔環境を守る大切な柱。新生ドルツは、そんな日常の歯磨きを「プロの手を超える磨き」へと昇華させようとしている。
文/DIME編集部