電気代を抑えながら夏を快適に過ごすには、冷房の節約温度に加え、エアコンの使い方や体感温度を下げる工夫が欠かせない。本記事では、体感温度を下げるポイントなどを含めて解説する。
目次
エアコンを使わずに夏を乗り切るのは現実的ではないが、電気代が気になる人も多いのではないだろうか。冷房による快適さを保ちつつ、できるだけ節電したい場合は、まず適切な温度設定を知ることが重要だ。
本記事では、節約と快適さのバランスを取るために知っておきたい、冷房の最適な設定温度と、温度による節電効果を紹介する。さらに、エアコンの使い方や体感温度を下げる工夫も詳しく解説するため、参考にしてほしい。
冷房の節約温度は?最適な目安と節電効果の詳細
暑い夏でも快適に過ごしながら電気代を抑えるには、冷房の使い方に工夫が必要だ。まずは、環境省が推奨する室温や設定温度による節電効果について見ていこう。
■環境省が推奨する室温28℃とは?
環境省がすすめる「夏の室温28℃」は、エアコンの設定温度ではなく、部屋の中の実際の温度を指している。この28℃という数字はクールビズの一環として決められたもので、軽装で過ごしているときの快適さを基準にしている。
例えば、スーツを着て26℃の部屋にいるときと、軽装で28℃の部屋にいるときとで、人が感じる暑さはほぼ同じといった実験結果に基づく。そのため、設定温度を28℃にしても部屋の条件次第では快適に感じないこともあり、実際の室温を温度計で確認しながら調整するのが良い。
■設定温度を1℃上げると13%の節電効果がある理由
エアコンの設定温度を1℃上げるだけで、冷房時の消費電力を約13%抑えられるというデータがある。これは、エアコンが部屋の温度を下げる際、外気温との差が大きいほど多くのエネルギーを必要とするためだ。
例えば外気が35℃のとき、設定を26℃にするよりも27℃にするほうが冷やす負荷が軽くなり、電気の使用量も減る。仮に1日9時間冷房を使った場合、設定温度を1℃上げるだけで年間約940円の節約につながる試算もある。
数字としては小さく見えるが、日々の積み重ねが家計全体に大きく影響する。
一方で、設定温度を必要以上に下げると消費電力が急増してしまう。特に最低温度(多くの家庭用エアコンでは16〜18℃前後)に設定したまま長時間運転すると、電気代が大きく跳ね上がる恐れも。使い始めに短時間だけ最低温度に設定する人もいるが、部屋が冷えた段階で速やかに設定温度を調整することが省エネにつながる。
電気代を抑えるための冷房の使い方・節約テクニック
冷房による電気代を節約するには、単に温度設定を見直すだけでなく、エアコンの使い方を工夫することが重要だ。ここでは、日常で実践しやすい節約テクニックを紹介する。
■つけっぱなしにすることで節電効果を高める
エアコンは起動時にもっとも多くの電力を消費するため、頻繁にオン・オフを繰り返すたびに消費電力が増える。特に外気温が高く、日中(9〜18時ごろ)などは一度冷えた室内を維持する「つけっぱなし運転」のほうが、結果的に電気代を抑えられるケースが多い。
ただし、外気温がそれほど高くない時間帯や、住宅の断熱性が高い場合は、室温の上昇が緩やかなため「こまめに消す」ほうが効果的な場合もある。また、1日中フル稼働させるのではなく、短時間でもオフの時間を作るなど、状況に応じて使い分けることが重要だ。
■風量・風向きの調整で効率よく冷やす
冷房の効率を上げるには、風の出し方にも工夫が必要だ。冷たい空気は下にたまる性質があるため、冷房時は風を上向きに送ることで空間全体を均一に冷やせる。さらに、風量を「自動」に設定すれば、冷え始めは強風、設定温度に近づくと弱風と、効率よく風が調整される。
設定温度を下げるよりも、風量を強めて体感温度を下げるほうが電力消費は少なく、節電につながることを押さえておこう。
■節電モード・自動運転・タイマーなどの機能を使いこなす
エアコンに備わっている「自動運転」や「節電モード」「タイマー機能」は、効率的な運転を助けてくれる便利な機能だ。特に自動運転では、室温の変化に合わせて風量を自動で切り替え、無駄な電力消費を抑えながら部屋を冷やせる。
また、暑い時間帯だけ冷房を使いたい場合は、タイマーを設定することで、つけっぱなしによる電力の浪費を防げる。手動で風量を弱めるよりも、室温に応じて風力を調整する機能を活用するほうが、結果として快適かつ省エネにつながる。メーカーごとの機能を確認し、自分の生活に合った使い方を心がけたい。
■エアコンのフィルター掃除と室外機のメンテナンス
冷房効率を維持するには、定期的なフィルター掃除と室外機のメンテナンスが欠かせない。フィルターにホコリが溜まると空気の流れが悪くなり、冷却効率が下がって余計な電力を消費する。月に一度は掃除機などでホコリを除去し、必要に応じて水洗いを行うと良い。
また、室外機周辺に物を置いたりカバーをかけたりすると放熱が妨げられ、性能が落ちてしまう。吹き出し口をふさがないようにスペースを確保し、風通しを良く保つことで、エアコン本来の能力を最大限に発揮できる。
■電力会社の料金プランと節電しやすい時間帯を知る
節約を意識するなら、冷房の使い方だけでなく、契約している電力プランの見直しも効果的だ。
現在は電力自由化により、時間帯別に料金が変わるプランや、使い放題に近い定額制プランなど多様な選択肢が用意されている。家庭ごとの電力使用状況に合ったプランを選ぶことで、無理なく節電効果が得られるだろう。
冷房以外に体感温度を維持する方法5選

熱中症対策にもちろん冷房は必須だが、周囲の環境や服装、工夫次第でも体感温度を下げられる。ここでは、電気代を抑えつつ快適に過ごすための方法を紹介する。
■湿度をコントロールして涼しさアップ
気温がそれほど高くなくても、湿度が高いと蒸し暑く感じる。反対に、湿度が低ければ同じ気温でも涼しく感じるのが人間の感覚だ。エアコンメーカーによる研究では、湿度が55%前後であれば、室温28℃でも十分快適に過ごせることが示されている。
除湿機やエアコンの除湿モードをうまく使い、部屋の湿気を下げることがポイントだ。快適な環境づくりには、温度計だけでなく湿度も確認できる温湿度計を設置し、こまめに状況を把握しておくと良い。
■冷感グッズ・通気性の良い服装で体から涼しく
室内の温度を下げなくても、服装を工夫することで体感温度を快適に保てる。風通しの良い素材の服や、接触冷感タイプのインナーなどを取り入れると、汗が速く乾いて涼しさを感じやすくなるだろう。
また、冷感スプレーやひんやりタオルなどのグッズも併用すれば、エアコンの稼働を減らしながらも、快適さを損なわずに過ごせる。
■扇風機・サーキュレーターを併用して空気を循環
室内に冷気がしっかり届いていないと感じるときは、エアコンの設定温度を下げる前に、扇風機やサーキュレーターを使って空気を循環させると効果的だ。冷たい空気は床に溜まりやすいため、風の向きを上または水平に調整し、空気の流れを作ることで部屋全体を均一に冷やせる。
空気が滞留していると、エアコンが必要以上に稼働し、かえって電気代がかさむこともある。送風の角度や強さを工夫し、空間の温度ムラを防ごう。
■遮光カーテンやすだれで日射をカット
室内温度を上げる大きな原因は、窓から入る日射熱だ。特に南向きや西日の差し込む窓は、日中の温度上昇に大きく影響する。遮光カーテンやブラインド、外側に設置するすだれを使えば、直射日光を遮って室温の上昇を効果的に抑えられる。また、遮熱シートや断熱フィルムなどを窓に貼るのも有効だ。
■冷房をつける前に熱気をしっかり逃がす
真夏の閉め切った部屋の状態でいきなり冷房をつけても、部屋が冷えるまでに時間がかかり、無駄な電力を使ってしまう。まずは窓やドアを開けて換気を行い、熱気を外に逃がすことが重要だ。その後でエアコンを稼働させれば、室温の低下がスムーズになり、冷房の負荷を減らせる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部