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次にくるジャンルは?電子コミックヒット作品の変遷から予想する次世代トレンド

2025.07.27

携帯電話などの普及による電子コミック市場の台頭と急激な成長で、出版業界を支える大きな柱となっているマンガ。作品のジャンルや表現方法はもちろん、読まれ方にも大きな変化があったという。NTTソルマーレは、日本最大級の電子コミックサービス『コミックシーモア』の20周年を契機に、京都精華大学が運営する「京都国際マンガミュージアム」学芸員である倉持佳代子氏の監修で、マンガ市場における20年の変遷と今後のトレンドを分析して発表した。やはりスマートフォンの普及とコロナ禍によるライフスタイルの変化は、電子コミック市場の大きな転換点になっていたという。さらに『コミックシーモア』の読者データや売れ筋タイトルの分析による次世代のトレンドとして、「自立したヒロインが主人公のロマンス・ファンタジー」、「夫婦問題・復讐ドラマ」、「社会的制裁をテーマにした青年復讐もの」といったテーマや内容の作品が注目されそうだという。

今回は20年を3つの時代に分けて、それぞれの時代におけるマンガ市場の特徴と変遷、当時の売上トップ5の作品、倉持氏のコメントを紹介していく。なお各時代のランキングデータ抽出定義は、「ガラケー時代:2004年8月~2013年12月」、「スマートフォンの普及:2013年1月~2019年12月」、「コロナ禍・アフターコロナ:2020年1月~2024年12月」の当該期間の売上順上位5タイトル。

ガラケー時代(2004~2013年)

電子コミックの黎明期であるガラケー時代は、書店では手に取りにくいタイトルやジャンルが多く読まれる傾向があり、官能系やお色気系、愛憎劇を描いた作品が人気ジャンルのひとつだった。当時のランキング1位の『まんがグリム童話 金瓶梅』は、最盛期の月間DL数が約30万DLで、当時の月平均DL数の約100倍を記録するほどのヒットだったという。人気作品のラインナップからも携帯電話で個人の閉じた空間で読むスタイルは、周囲の目を気にして購入をためらっていた層の需要を取り込んだといえる。紙媒体とは売れ筋が違うこともガラケー時代の顕著な傾向で、電子コミックならではの「人目を気にせず、自分の好きなものを自由に読む」という新たな読書体験を生み出す契機になったという。このことが電子コミックの爆発的な普及へ繋がり、その後の電子コミック発のさまざまなジャンルが誕生するきっかけにもなっているという。

倉持佳代子氏は「“ケータイマンガ”は、主に1コマごとに切り取られ、ボタンを操作しながらページを読み進めるもので、内蔵のバイブと場面転換が連動するなど、紙媒体とは違う独自のマンガ読書体験を読者に提供しました。初期は紙ビジネスが一段落した往年の名作を中心に展開するケースも多かったですが、次第にラインナップが増えていき、ランキングが示す通り、書店では手に取りにくい、ちょっぴりエッチな作品がよく読まれていました。2005年にマンガ雑誌の販売額が単行本の販売額を下回るなど、この時代はマンガ市場の大きな転換点です。読者の嗜好はより細分化し、紙のマンガの売れ行きと必ずしもリンクしないケータイマンガの市場は、年を追うごとに大きくなっていきました。なお、2010年は電子書籍元年とも言われますが、2010年から2012年はガラケーからスマートフォン対応への転換期。電子コミックがさらに隆盛を極めていく夜明け前とも言える時期です」とコメントしている。

スマートフォンの普及(2013年~)

スマートフォンの急速な普及で、電子書籍プラットフォームが日本市場に次々と参入したのが2013年以降のスマートフォン普及時代。限られた層が利用している電子書籍が多くのユーザーにとって身近な存在になり、電子コミック市場は一気に拡大した。無料試し読みやアプリ連動の課金モデルが浸透したことで、既刊作品やマイナー作品にも広く注目が集まるようになったという。この時期からアニメ化や映画化などメディア展開されるビッグタイトルや王道ラブストーリーが電子コミックのランキングでも上位を占めるようになったという。スマートフォンでの閲覧に最適化された縦読みスタイルのマンガやデジタル発のヒット作も次々と生まれて、ジャンルや表現の幅を押し広げて電子コミックを多様で身近なメディアへ進化させたといえる。

倉持佳代子しは「スマートフォンの浸透により、各出版社がマンガアプリの配信を続々開始し、ボーンデジタルの作品も人気を博していく時代です。2014年から出版科学研究所の統計データに「デジタル」の数字が加わるようになります。その数字の伸びは顕著で、2019年には紙と電子の販売額の比率が逆転します。このランキングを見てわかる通り、アニメ化・ドラマ化された作品が売上に影響するので、各出版社は、そうした展開により力を入れていきました。デジタルによって、プロマンガ家のあり方も変化しました。例えばデジタルの「話売り」は、これまで単行本の印税が大きな収入源となっていたマンガ家の収入形態を変化させました。雑誌デビューではなく、SNSなどから有名になるマンガ家もこの時代から珍しくなくなりました」とコメント。電子コミックがより広い世代に受け入れられ、ビジネスモデルや作者の収入形態まで変えるほど激変した時期でもあるという。

コロナ禍・アフターコロナ(2020年~)

コロナ禍以降は、外出自粛やリモートワークの拡大で電子コミックの利用者層は大きく広がった。出版の遅延やアニメの公開自粛といった影響の一方で、『鬼滅の刃』の大ヒット時には紙の重版が追いつかない中でデジタル購入も急増したという。『コミックシーモア』の売上もコロナ禍前後で約250%も伸長したという。一方で巣ごもり需要で少年・児童マンガ誌の無料デジタル公開も話題になった。異世界転生や中世風ロマンス・ファンタジーの多い「なろう系」などデジタル発の作品が上位にランクインし始めたのもこの時期だという。

『電子コミック大賞2023』の大賞受賞作品である『鬼の花嫁』のように、受け身のヒロインが救われる“シンデレラストーリー”が人気を集めたが、ロマンス・ファンタジー作品読者の半数以上は40代以上で80年代から90年代の「少女漫画黄金期」に青春を過ごし、一時は紙のマンガから離れていた世代がスマホで気軽に読めるようになったことで電子コミックを通じてマンガへ再接続している状況もあるという。この時期からSNSやアプリ上のコメント機能を活用した編集者と読者、読者同士の交流が活発になり、マンガ好きコミュニティが活性化したという。

倉持佳代子氏は「2020年は、コロナの巣ごもり需要で一気に売上をのばし、紙と電子をあわせたマンガ市場が、ピークだった1995年の売上を更新しました。以降、その数字は更新され続けています。さまざまなメディア展開がマンガの売上に影響することは変わっていませんが、動画サブスクリプションが一般に浸透したことにより、アニメ・ドラマの配信形態は変化しています。今回のランキングにも大きく影響している異世界モノですが、2020年以降も衰え知らず。学園を舞台にした物語が等身大ではなくなった年齢層から主に人気を集めるジャンルですが、ここ数年は女性に向けた異世界モノの躍進がめざましいです。2020年以降は、これまでマンガの編集部を持たなかった出版社がデジタルでマンガ部門に参入し始め、注目作を多数排出しています」とコメント。既存のジャンルやファン層から拡大したことで、新規参入が増えたのがコロナ禍以降の流れといえるだろう。

『コミックシーモア』読者データからトレンドの兆しを分析!

『コミックシーモア』読者のデータを元に、今後トレンドになりそうなジャンルやテーマについて3つをピックアップした。

(1)自立ヒロインが輝く「ロマンス・ファンタジー」

2023年頃から令嬢系や和風モノなどさまざまなバリエーションで人気の「ロマンス・ファンタジー」だが、近年は『おひとり様には慣れましたので。婚約者放置中!』『ベル・プペーのスパダリ婚約~「好みじゃない」と言われた人形姫、我慢をやめたら皇子がデレデレになった。実に愛い!~(コミック)』などの自立したヒロインが自ら人生を切り開く作品が台頭しており、30代以下の読者が半数以上で明確なトレンドの変化がみられるという。ヒロインのキャリア・スキル・再出発などを前面に押し出した作品タイトルも増えており、読者が自己投影しやすいヒロイン像へとアップデートが進んでいるという。

(2)共感が熱い「夫婦問題・復讐ドラマ」

夫への不満やモラハラ、浮気といった家庭内の問題を描く「夫婦問題」系作品は、現代女性のリアルな悩みに寄り添うジャンルとして支持されているという。作品例としては、『うちの夫、やばくないですか?』や『60点の夫婦でいいのに』などがある。作品内で女性主人公が我慢を重ねた末に離婚や復讐、自己実現へと踏み出す姿に多くの読者が共感して応援しながら、「スカッと」する爽快感を得ているという。SNS上でも「こんな展開を待ってた!」や「読んでいて胸がすく」といった反響が多く、このジャンルは漫画だけでなくテレビドラマでも注目されている。フィクションを通じて日常の鬱屈を解消したいというニーズが反映されており、今後も女性を中心に拡大が見込まれるトレンドだという。

(3)現代のスカッと系「社会的制裁をテーマにした青年復讐もの」

過去のいじめや職場でのパワハラ、裏切りなどに対して主人公がSNSの告発や内部告発、巧みな情報操作を用いて加害者に社会的制裁を加えるなど「スマート復讐系」の作品も注目を集めているという。これまでの復讐ジャンルは、暴力や流血など過激な描写を含むものが多く、主に男性読者の支持を得ていたが、近年は「言葉」や「証拠」で相手を追い詰めるスタイルが台頭しているという。作品例としては、『社長令嬢復讐日記』や『壊職代行』などがある。スマートで現実味のある手法は、共感と爽快感を両立させて男性読者だけでなく女性読者の心もつかんで人気だという。「自分では言えないけれど、こうやって仕返しできたら……」という願望を代弁してくれるような構成は、SNS時代ならではの感情の代償装置とも言えるが、今後も人気ジャンルとして拡大しそうだ。

倉持佳代子氏は、トレンドになりそうなジャンルやテーマについては、次のようにコメントしている。「夫婦問題をテーマにした作品、復讐系は世相を反映しており、今年も流行しそうな予感です。異世界ものジャンルから派生し、躍進中の「令嬢」モノの勢いも止まりません。定型に倣いつつバリエーションを広げるこの題材は、「大人の少女マンガ」として現代らしい価値観を取り入れながら、30代以降の女性を中心にさらに盛り上がりそうな気がしています。次の20年に向けたマンガ界の動きで気になるのは、やはりAIの参入・浸透です。作品作りの現場には、すでに変化をもたらしています。世界各国のマンガ家・出版社の動きも今後のキーになるかなと。京都国際マンガミュージアムに来る海外のお客さんの数は、2024年に最高値を記録しましたが、海外からのマンガ需要の高まりを肌で実感しています。これまでノーマークだった国から優秀なマンガ家も登場し始めています。翻訳ツールの発展で言語の垣根は徐々になくなっていくでしょうし、多様な表現とそこに描かれる生き方・価値観に触れる機会はますます増えると思います。こうした動きは、もちろん心配なこともありますが、この20年を振り返ってもマンガがいかに常に読者の姿と社会を反映しながら柔らかく進化したがよくわかるので、マンガの未来は明るいはずです」

ガラケーから始まった電子コミックスは、独特な世界観や現実的なテーマなどを扱い、ドラマ化やアニメ化によるメディアミックスなどで巨大市場に成長している。今後、そこからどんな魅力的な作品が生み出されて行くのか楽しみしかない!

NTTソルマーレ
京都国際マンガミュージアム サイト

構成/KUMU

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