
デジタルフォトアルバムやスクールアルバム事業などを展開するダイコロは、7月24日の「卒業アルバムの日」を前に「卒業後も人をつなぐ卒業アルバムの実態調査」を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
ちなみに7月24日「卒業アルバムの日」は、1年に1度は卒業アルバムを見て懐かしもうという主旨で「な(7)つ(2)かしい(4)」の語呂合わせに由来する。
3人に1人が「卒アル萌え」経験、63%が再会成功、23%が恋愛・結婚に発展
「卒業アルバムを見て、学生時代に好きだった人への恋心が再燃したことがありますか?」という質問に対し、35%が「ある」と回答。3人に1人が卒業アルバムを見て学生時代の恋心を再燃させる“卒アル萌え”を経験していることがわかった。
■性別で大きく異なる感情移入度
性別別に見ると、男性の40%が恋心の再燃を経験している一方、女性は29%にとどまり、男性が女性を10%以上上回る結果となった(図1、図2) 。この傾向から、男性の方が卒業アルバムを通じて過去の恋愛感情を呼び起こしやすい可能性が示唆される。

■30%が行動、63%が再会成功、23%が恋愛・結婚に発展
「卒業アルバムを見て恋心が再燃したことがある」と回答した283人への追跡調査では、驚くべき結果が明らかになった。
恋心を抱くだけでなく、SNSで検索、実際に連絡を取る、ご飯会を設けるなど、行動を起こした人は87人(30%)に上る。さらに注目すべきは、行動を起こした人のうち63%が再会を実現したことだ。
そのうち13人が恋愛や結婚に発展しており、再会に成功した人のうち、23%が「もう一度恋心を手に入れる」結果を得ていた(図3) 。

性・年代別「卒アル萌え」分析
■「卒アル萌え」経験者は20代男性(46%)と60代男性(48%)が多い
性・年代別分析により、男性20代と60代で特に高い恋心再燃率となることが明らかになった(図4)。

<男性20代(46%):「デジタル世代のアナログ新鮮効果」>
SNSに慣れた世代が物理的な卒業アルバムに触れることで、「手に取れる思い出」への新鮮な驚きを体験。社会人移行期における学生時代への憧憬も高再燃率の要因となっていると考えられる。
<男性60代以上(48%):「時間的余裕による記憶の鮮明化効果」>
定年退職や子育て終了により時間的・精神的余裕が生まれ、現役時代には抑制していた感情と向き合う機会が増加。青春時代の記憶がより鮮明に蘇り、強い感情移入につながっていると推察できる。
卒業アルバムが「記憶の検索エンジン」として機能
■卒業アルバムの記憶喚起効果、「青春のタイムカプセル」として機能
調査により、3人に2人(66%)が「卒業アルバムがなければ思い出さなかった人がいる」と回答。卒業アルバムが単なる記録を超えて「記憶のタイムカプセル」「青春のタイムカプセル」として機能していることが明らかになった(図5)。
特に「卒業アルバムがなければ10人以上思い出さなかった」と答えた49%の人は、卒業アルバムによって大幅に当時の記憶が蘇生されており、物理的記録が持つ「記憶の検索エンジン」としての価値を示している。

4人に3人以上(72%)が「卒業アルバムは必要」と回答
■デジタル全盛でもアナログ記録の価値を再認識
「卒業アルバムは必要だと思いますか?」という質問に対し、4人に3人以上(72%)が「必要」と回答。デジタル全盛の現代においても、卒業アルバムは社会において支持されていることがわかる(図6)。

■卒業アルバムを見返すきっかけは偶然や感情
卒業アルバムを見返したタイミングに関する質問では、1か月以内と回答した人は4%、半年~1年以内と回答した人は14%となった(図7)。つまり、5人に1人が1年以内に卒業アルバムを見返しているようだ。

さらに、見返すきっかけに関しては「家の片付けの時に偶然発見した」人が53%、「懐かしくなって見返した」人が26%という結果が得られた(図8)。
これらの結果は、計画的ではなく「偶然性」や「感情的な瞬間」が卒業アルバムとの再会を演出していることを示しており、物理的な存在だからこそ生まれる「予期せぬ再発見」の価値を証明している。

デジタル時代でも物理的記録が果たす「つながり創出」効果
■「孤独・孤立社会」で見直される物理的記録の価値
政府が「孤独・孤立対策推進法」を施行し、社会全体で人とのつながり創出が重要課題となる中、卒業アルバムがもたらす“青春時代へのタイムリープ”には、調査からもわかるように偶発性も相まって強い感情を発生させる。
その結果、行動を起こし再会するというつながりの創出が生まれ、「人間関係の再構築」が体現されていく。これは人間関係が希薄化する現代において、卒業アルバムが持つ新たな価値として注目できると言えるだろう。
ダイコロの調査では、全体の8%が卒業アルバム制作に対して、2万円以上の投資価値があると認識しているという。
興味深いのは、子持ち層(4%)より子なし層(10%)の方が高額投資意欲を示している点だ(図9)。子持ち層が、子育てを通じた新たなコミュニティを形成しているとすると、子なし層は人間関係に大きな新しい変化が生まれにくいと考えられ、「家族以外の人間関係への渇望」の表れとも分析できる。
孤独・孤立が社会問題化する中で、「過去のつながりを通じて現在の孤立感を解消したい」という心理が、卒業アルバムへの投資価値認識に反映されているとも言えるだろう。
調査結果まとめ:卒業アルバムは現代の「青春のタイムカプセル」
今回の調査から、卒業アルバムがデジタル時代でも特別な価値を持っていることがわかった。
卒業アルバムは単なる思い出の記録ではなく、「青春のタイムカプセル」として人と人をつなぐ役割を果たしている。
SNSが主流の現代でも、紙のアルバムを「手に取る」というアナログな体験が、人々の行動を後押しし、実際の再会につながっているようだ。つまり、物理的な卒業アルバムは、希薄になりがちなデジタルでのつながりから、温かい人間関係へと戻るきっかけを作る道具として機能しているようにも見える。
調査概要
調査方法/Webアンケート
調査期間/2025年6月23日
サンプル数/804
調査機関/GMOリサーチ株式会社
パネル提供元/GMOリサーチ株式会社
出典/ダイコロ調べ
関連情報
https://www.daicolo.co.jp/
構成/清水眞希