
「質問ある人いますか?」に誰も反応せず、あとで「伝わってなかったの!?」と驚いたことはありませんか?部下が質問できない背景には、「恥ずかしさ」「遠慮」「情報整理の難しさ」など、見えにくい心理的ハードルが潜んでいます。この記事では、心理カウンセラーの視点から、“質問できない人”の心のクセと、上司としての具体的な関わり方を解説。チームの空気を少しずつ変えるヒントが見つかります。
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「質問ある人いますか?」そう聞いても、誰も口を開かず、沈黙の時間が流れる。そのあと提出された資料を見て、「えっ、これ伝わってなかったの?」と驚いた経験がある方もいるのではないでしょうか。
質問が出ない状況が続くと、チーム内で認識のズレが起きたり、手戻りが増えたり、信頼関係が築きにくくなったりすることがあります。この記事では、部下が「質問できない人」になってしまう理由と、上司としてできる関わり方について、心理カウンセラーの視点からお伝えします。
質問できない人がいることで、起こりやすい3つの困りごと
質問できない人がいることで、チーム全体にじわじわと影響が広がることがあります。ここでは、現場でよく見られる起こりやすい困りごとを3つご紹介します。
(1)手戻りが増える
確認できていないまま作業を進めてしまい、あとで修正が必要になる。本当は最初にひと言聞けていれば、防げたことだったのに……というケース、ありませんか?
(2)自己流が広まりやすくなる
「何度も聞くのは気まずい」「間違えても指摘されないように」といった思いから、自己流のやり方が定着してしまうことがあります。
(3)信頼関係が築きにくくなる
質問をすることは、「相手を信頼している」というサインでもあります。質問が出ない状態が続くと、チーム内の相互理解が深まりにくくなります。
どうして質問できないの?~背景にある4つの心のクセ
「聞けばいいのに」と思っても、本人には言えない理由があるのかもしれません。ここでは、質問ができなくなる背景にある、よくある心のクセを4つご紹介します。
(1)聞くことで評価が下がるのが怖い
「こんなことも知らないと思われたらどうしよう」「できないと思われたくない」そんな不安があると、質問したい気持ちがあっても、口に出せなくなってしまいます。本人も「聞いた方がいい」と分かっているのに、それ以上に「恥をかくかもしれない」という感情がブレーキになっているのです。
(2)頭の中が整理できていない
話の内容を聞いてはいるけれど、情報が一気に流れ込んでくると、頭の中で整理が追いつかなくなることがあります。「何が分からないのか分からない」状態になり、結果として質問できないまま終わってしまいます。あとから少し落ち着いたタイミングで疑問が浮かぶけれど、「今さら聞いていいのかな」とためらってしまう人も少なくありません。
(3)上司が忙しそうに見えて遠慮してしまう
「今聞いたら、仕事の邪魔になるかも」「聞くほどのことでもないかもしれない」そんな遠慮から、聞きたいことを抱えたまま黙ってしまうケースです。とくに上司が忙しそうにしている時や、緊張感のある空気の中では、なおさら話しかけにくくなります。結果として、本人はタイミングを逃し、質問できないまま終わってしまうのです。
(4)目立ちたくないという気持ちが強い
「出しゃばっていると思われたくない」「また目立つと、変に思われるかもしれない」そんな感情から、あえて発言を控えている人もいます。特に、過去に妬まれたり、目立ったことで陰口を言われた経験がある人は、質問そのものを避けるようになる傾向も。「目立たないこと」が安心につながっているため、質問すること自体が、大きなハードルになっているのです。
心のクセごとにできる、ちょっとした関わり方
質問が出ない背景には、さまざまな理由があります。だからこそ、どんなタイプにも響くように、「あとからでも大丈夫だよ」「間違っててもいいよ」といった声かけを、繰り返し届けていくことが大切です。ここでは、4つの心のクセごとに、上司としてできるちょっとした関わり方のヒントをご紹介します。
(1)評価が下がるのが怖い人への関わり方
1対1の場では、上司から軽く意見を求めるような聞き方が効果的です。「さっきの話、どう感じた?」「あの資料、どう思う?」など、正解を求めない問いかけが、聞いても大丈夫というサインになります。会議では、その人を名指しせず、「いろんな視点があると思うんですが」と全体に問いかけましょう。さらに「考え途中でも大丈夫です」と添えると、発言へのハードルが下がります。
(2)情報の整理が追いつかない人への関わり方
あとから「ここが分かってなかったかも」と気づくタイプの人には、1対1では、「何か引っかかったところあった?」と、話しやすくなるように促すと良いでしょう。会議では、「あとから質問があればいつでもどうぞ」と伝えておくと、今すぐに発言しなくていいという安心感を持ってもらえます。
(3)遠慮してしまう人への関わり方
このタイプは、「今聞くと迷惑かも」と思い、タイミングを逃してしまうことが多いです。
1対1では、「今ちょっと余裕あるから、何かあったらどうぞ」と、質問を促すひと言があるといいかもしれません。会議では、「あとでメールで送ってもらってもいいですよ」と、質問ルートを伝えておくのもいいですね。
(4)目立つのが怖い人への関わり方
「前に出すぎると浮くかもしれない」「周囲から何か言われるかも」そんな不安から、あえて黙っている人もいます。1対1では、様子を見ながらそっと声をかけてあげるだけでも安心につながります。会議で質問が出たときには、「今の視点、他の人はどう思いますか?」と全体に広げていくことで、質問者だけが目立つことを防げます。
質問できる空気は、日々の関わりから生まれる
質問が出にくくなる背景には、評価への不安や、職場の空気感、頭の中の情報が整理されていないなど、さまざまな要因があります。だからこそ、「気軽に聞いていいよ」と伝えるだけでは、不十分なことも。質問しやすい雰囲気づくりや、声をかけるタイミングの工夫など、日々のちょっとした関わりが、安心して話せる空気を育てていきます。少しずつ「質問してもいいんだ」と感じられるチームになっていくといいですね。
文/高見 綾
心理カウンセラー|“質上げ女子”のお悩み相談。カウンセラー養成コースで豊富な臨床経験を積み、心の世界で学んだことを現実に活かすアプローチに高い評価をいただく。相談数4千超。著書は『ゆずらない力』(すばる舎)。
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