
演奏時に無意識に筋肉がこわばってコントロールが利かなくなる「ミュージシャンズジストニア」を患い活動休養していたRADWIMPSのドラマー、山口智史さんの提案から開発がスタートしたヤマハ「VXD」。ペダルを踏む代わりに声でバスドラを操る「VXD」を中心に広がるヤマハドラムの玉手箱へ行ってみよう!
「まさしくヤマハドラムの玉手箱!」
という好奇心を胸に取材班が向かったのが、昨年11月に渋谷で開業したヤマハのブランド発信拠点「Yamaha Sound Crossing Shibuya」だ。アルコールも提供するカフェが併設され、ふらりひと休みする近隣のビジネスパーソンや、渋谷という場所柄インバウンド客の訪問も多数。楽器店(販売はしてないけど)としては、かなり独特の雰囲気をかもし出している。
ここで注目の企画展示が行われている。期間は7月18日~8月24日。名称は「Yamaha FUTURE BEAT !」で、そのド・ド・ド・目玉が、先の「VXD」の初展示&体験を伴う「VXD EXPERIENCE」(~8月17日まで)なのだ。※8月11日~15日は夏季休業。
https://www.yamaha.com/ja/about/experience/yamaha-sound-crossing-shibuya/event/2025/250718-0824-01
「VXD」はヤマハと慶應義塾大学との共同研究プロジェクトで構築した“声でバスドラムを操るシステム”で、既述のようにドラマー山口智史さんの提案から開発がスタートしている。システムの仕組みとしては、マイクとセンサーがドラマーの「ドン」という発声(これがトリガーとなる)を検知すると、バスドラムの中の加振器が振動して音を出すという、きわめてシンプルなもの。
内覧会のこの日、デモ演奏を披露したヤマハスタッフによれば、
「オンラインゲームで言う遅延のような感覚はまったくありませんので、操作に慣れれば普通にプレイできると思います。またトリガーになる発声については「ドン」だけでなく「パン」でも「ボン」でも、割と強めの発音であれば使える印象です。ただ1曲通じて「ドン」「ドン」と発声し続けるとかなりノドが渇きますね」。
また昨年末に「VXD」によるドラムプレイを披露した先の山口智史さんは、トリガーとしてノドぼとけの動きを感知するセンサーを使用していた。これは声をトリガーにした場合、スネアやタムの音をトリガーとして誤入力してしまうことを予防するためだったという(下写真。店内ディスプレイより)。
指の動きを見ているとまるでアクロバット!フィンガードラムパッドも必見
「Yamaha FUTURE BEAT !」のオイシサは「VXD」だけにとどまらない! ヤマハのドラムの愉しさがギュギュッと凝縮されている。中でも記者が強く惹かれたのがフィンガードラムパッドの「FGDP-50」(3万9600円/下写真)。
指で演奏する電子ドラムパッドで、小型軽量、音源とスピーカーとバッテリーを内蔵し、演奏したいその時に叩ける身軽さが身上だが、決しておもちゃではない。その指の動きを見ているとまるでアクロバット! まさしくドラマーとしての演奏性を感じさせるからだ。デモテープ作成や練習の相棒としてはもちろん、イマドキのいわゆる「弾いてみた!」動画との親和性も高い。これ、スタッフが披露してくれたプレイ。動画を見てください! スゴイんだから!
彼はドラム経験者だが、「FGDP-50」を本気でやり始めてからまだ一月半くらいと、ちょっと信じられない達者ぶり。だったら私にもできる!……とは全然思えません、いまのところ(笑)
またエレクトロニックアコースティックドラムモジュール「EAD-10」(6万500円)もすごい。
「EAD-10」はバスドラムに装着するセンサーユニット(ステレオマイク部)と、音源の入ったメインユニットのペアで構成され、ドラムサウンド全体をきれいにバランスよく収録することができる。
「ハヤりの「叩いてみた!」動画をスマホで録ると、音が割れたり、各ドラムの音がダンゴになって分離の悪い音になってしまいがちです。「EAD-10」はバスドラの手前側上部にトリガーを装着するだけでレンジが広く分離の良いドラムサウンドが収録できます。またその収録音に対してサウンドエフェクトをかけることもできます。ヤマハの無料アプリ「Rec’n’Shere」を使って簡単に編集~配信までもって行くこともできるんですよ!」とは同じくデモ演奏を披露してくれたスタッフ(写真上)の弁。
ライブステージなどでドラムセットを見る人は多いと思うけど、それぞれのドラムやシンバルに備えられたマイクの本数の多さったら! そうしないと普通は分離とバランスの良いドラムの収音は難しいってこと。なのに「EAD-10」ならトリガーユニット一基でステレオサウンドが録れるのだからスバラシイのだ! 下記のHOW TO動画を観ると、誰でも「叩いてみた!」できちゃうってカンジ!
さらにさらに、こちらは7月28日までの開催だが、シンセファンを狂喜乱舞させたブツが展示される。その名は「Hardware Programmer for MONTAGE M」(写真上)。これ要するに、デジタルシンセサイザーとして進化を極めたヤマハの最新機種「MONTAGE M」の音作りを、わざわざ(笑)、ノブとツマミ、ボタンとスイッチで行うためのプログラマー(入力装置)なのだ。シンセサイザーは昨今ライブ演奏から音楽制作まで様々なシチュエーションに対応する高性能機の活躍が際立っているが、もとはと言えば、自然界に無い音、聴いたことのない音、音ならぬ音を手に入れるための音響合成機。
ヤマハでシンセサイザー関連機器のマーケティングを担う梅津昇陛さん(写真上)は、
「昨年ヤマハシンセサイザーは発売50周年を迎えました。これもその一環として“販売を前提としない”コンセプトモデルとして製作されました。アナログ時代から築いてきたヤマハシンセの足跡として、またシンセサイザーの面白さを未来に伝えるアイコンのひとつとしてお楽しみ頂きたいと思います」と語る。なお、ヤマハシンセ史におけるデジタルとアナログの最重要モデル、1983年発売の「DX7」と1977年発売の「CS-80」も7月28日まで展示中だぞ!
大人の楽器趣味が広まる昨今においても、特にドラムは「始めてみたい!」「もう一度やりたい!」というニーズが高いという。そのはじめの一歩として、または、お子さんや家族との新しいドラム体験として、「Yamaha Sound Crossing Shibuya」に足を運んではどうだろう? 期間中、併設カフェでは、ドラムにまつわるドリンクメニュー(下写真/カクテル「KICK PEDAL」やモクテル「CRASH CYMBAL」など)も楽しめる!
渋谷でドラム、略して「シブドラ」! 「Yamaha FUTURE BEAT !」は、8月24日(日)までの開催だ。忘れずメモ帳に◎してくれよな!
Yamaha Sound Crossing Shibuya
https://www.yamaha.com/ja/about/experience/yamaha-sound-crossing-shibuya/
渋谷区桜丘町3-4 渋谷サクラステージSAKURAサイド3階
JR「渋谷」駅・新南改札より徒歩3分
営業時間:12時~20時
火曜定休(祝日除く)
文/前田賢紀