
突然だが、筆者は「メンマ」が得意な方ではない。幼少期はラーメンにのっていたメンマを弾いて食べるような残念な子どもで、今もスーパーで自ら購入することはない。
今まで苦手意識があったメンマだが、生まれてはじめて「おいしい……!」と思ったのが、東武ホテルオリジナル「純国産メンマ」だ。なんでも、収穫・製造すべての工程をホテルスタッフが手作業で行い、ホテルクオリティーにこだわったメンマだという。
放置竹林問題も解決する東武ホテルの「純国産メンマ」がどのように作られているのか、そのこだわりを東武ホテルマネジメント・取締役常務執行役員統括総料理長の林秀之氏に伺った。
国産メンマは「1%のみ」に面白さを感じて。竹林整備スタート

東武ホテルオリジナル「純国産メンマ」は、東武鉄道沿線にある鬼怒川地区の竹林と、成田東武ホテルエアポート付近の成田地区の竹林から収穫したタケノコで作られたメンマ。「醤油味」と「四川山椒風味」の2種類があり、驚くほど柔らかく、夕食の一品やおつまみにぴったりの味付けだ。
2024年7月に第一弾が発売されるや否や、ゲストから「おいしい」「友達にあげたい」という声が集まり、2か月ほどで2024年度分は完売。今年度分は2025年7月19日(土)に、東武ホテルレバント東京2階中国料理「竹園」などで発売開始となる。

そもそもなぜ東武ホテルがメンマを作ることになったかと言うと、はじまりは2016年頃。「東武鉄道 SL大樹」の2017年運行開始を目指し、沿線の景観を整えるために、鬼怒川地区の放置竹林を整備しはじめたことがきっかけだった。
指揮をとっていたのは、当時東武鉄道の専務であった、現東武ホテルマネジメント・代表取締役社長の三輪 裕章氏。三輪氏は放置竹林に自然と生えたタケノコを見て、何かできないかと思ってはいたが、当時東武鉄道に在籍していたこともあり、何もできずにモヤモヤしていたという。
そして2023年、三輪氏が東武ホテルマネジメントの代表取締役社長に就任したのをきっかけに、東武ホテルの純国産メンマを作るプロジェクトがスタート。まずは林料理長が「純国産メンマサミットin糸島2023」に参加し、竹林整備とメンマ作りについて学んだという。そもそも「純国産メンマサミット」とは、「おいしく食べて竹林整備」を合言葉に全国40都府県で活動している「純国産メンマプロジェクト」の取り組みだ。
林料理長「メンマっていうのは、勉強していくと本当に奥が深くて。国内にあるメンマの99%が台湾・中国産で、1%しか国産はないと聞いて、面白いなと思ったのです。逆に1%しかないのは、やりがいあるなと思い、飛びついちゃったんですね。私自身、新しいものが大好きなんです」

サミット参加後の2023年12月、翌年の収穫に間に合わせるために鬼怒川地区の竹林と成田地区の竹林の整備を開始。林料理長は入社43年目となる、東武ホテルのトップシェフで、ベテラン中のベテランながら三輪社長とともに泥だらけになりながら、自分たちの手で竹を切り、太陽の光が入るよう整備していった。
林料理長「竹林は根が浅く、水はけが良すぎるが故に大雨が降ると災害が起きやすく、雨を含んだ土砂の重みで流れてしまいます。成田東武ホテルエアポート付近の成田地区にも竹林があり、安全面も考え整備する必要がありました。放置竹林は崖崩れなどの要因となる可能性があり、全国的にも問題になっています」

そして2024年4月?5月に初めての収穫。メンマ用のタケノコは2mほどにまで成長したところで収穫するのだが、これも三輪社長や林料理長を含め皆で汗を流し、収穫したという。2024年度は合計でタケノコ約300kgを収穫。2024年度は予定より早く売り切れてしまったため、ゲストからの「もっと欲しい」という声に応えて、2025年度は収穫量UPを計画。結果として、2025年度はタケノコ約1200kgを収穫できたという。

林料理長「今年は6日間に分けて、約1200kgを10人前後のスタッフで収穫しました。私もスタッフもメンマ専門ではなく、ほかの仕事があるのですが(笑)」
ホテルならではの味と安全性を追求。東武ホテルのメンマがおいしい理由

収穫したタケノコはすぐに茹でなければ、アクが強くなる。収穫後、2?3時間後には茹でるのが東武ホテルの“ホテルならでは”のこだわりだ。1日あたりの収穫量は約200kg前後。その可食部となる約100kgを茹でるのは、想像するだけで大掛かりな作業ということがわかるが、だからこそおいしいメンマができあがると、林料理長は語る。

林料理長「鬼怒川地区で収穫したタケノコは宇都宮東武ホテルグランデ、成田地区で収穫したタケノコは成田東武ホテルエアポートですぐに茹でます」

完成までのおおまかな「純国産メンマ」の作り方がこちら。食べるのは一瞬だが、恐ろしいほどに手間と時間がかかっている。そしてパッケージ化までホテル内で行い、ホテル基準で安全性を最優先に商品づくりを行っているのも特徴だ。添加物も入れず、タケノコの旨味を活かした味付けになっている。
ちなみに1日に製造できる数には限りがあるため、各日数量限定。2025年度に収穫したタケノコが終了次第、2025年は販売終了となる。
(1)年間を通して、竹林を整備。
(2)4~5月にタケノコを収穫し、可食部のみをカット。少量の塩で約1時間40分茹でる。
(3)タケノコの総重量の30%の塩とタケノコを積み重ねて塩漬けにし、2か月以上冷蔵庫で保存。
(4)塩漬けが完了したタケノコを1日半?2日かけて水に浸し、塩抜き。
(5)短冊状にカットし、油で炒めて水分を飛ばす。
(6)「醤油味」は醤油・紹興酒・砂糖、「四川山椒風味」は醤油・紹興酒・山椒で味付けし、煮込む。
(7)メンマを真空パックでパッキングし、完成。
林料理長「塩漬け後に2か月以上保存する時、風通しの良い場所など常温で保存する方法もあります。しかしそれだと、カビが生えてしまう恐れがあるのです。東武ホテルでは大きな冷蔵庫で保存することで品質管理ができ、カビは一切生えず、お客様に安心して食べていただけます」

昨年は完成した一部のメンマを、従業員食堂を通してスタッフにも配布。ホテルのトップが行っているプロジェクトを知ってもらい、メンマの売り上げに繋げる意味もあったが、それ以上に「スタッフの笑顔」が嬉しかったと、林料理長は話す。
林料理長「作り手として食べてもらって、喜んでもらう顔が、もう何よりなんです。収穫したり、仕込んだり、その段階はとても時間がかかり、手間がかかる。でも、食べるのって一瞬なのです。それでも、その一瞬の喜びのために、やっぱり我々って働いているんですよね。みんなの笑顔や喜びが、嬉しくてたまりません」

販売はオンラインはなく、ホテルやイベントの店頭販売のみ。今年は昨年よりも収穫量が多いため、より多くの人に届けられるという。ただ、「来年は1トン作りたいです!」と、林料理長。作業量は確実に大変になるが、その言葉からは「ホテルのために」「お客様のために」というまっすぐな想いを感じられた。
林料理長「少しでもホテルに足を運んでいただきたいという一心で、メンマづくりをしています。ついでに他の料理も食べていただければ。例えばメンマを販売する東武ホテルレバント東京の中国料理『竹園』では、添加物を一切使用しない、こだわりの中華を提供しています。ホテルのほかにはグループの東武百貨店のイベントで販売する予定で、私も店頭に立つ予定です。お客様とお話するの、大好きなんですよ」
放置竹林を整備し、タケノコを収穫し、おいしいメンマに仕上げる、すべての行程をホテルスタッフが行う、極めて稀な東武ホテルオリジナル「純国産メンマ」。普通の人なら「大変」と思う作業を率先して行う、林料理長の熱い想いがこもったメンマは、おいしくないわけがない。1日数量限定で販売される東武ホテルオリジナル「純国産メンマ」に出会えたら、林料理長の顔を思い浮かべながら、ぜひ食べてほしい。
・東武ホテルマネジメント
HP:https://tobuhotel.co.jp/
取材・文/小浜みゆ
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