
世界的に人気が高まっている日本食。
ここ英国も例外ではなく、近年に実施された市場アンケート調査では、英国の消費者の18%が日本食レストランで食事をしたことがあるか、日本食を買ったことがあるとされている。
最近では、大手スーパーで味噌やみりん、パン粉などの日本食材の品揃えが増えており、お惣菜コーナーにカツカレーが見られるようにもなった。
そんな英国における日本食の人気を牽引した立役者に数えられるのが、創業1997年の回転寿司チェーン「Yo!Sushi(ヨ~!スシ)」だ。
メニューには日本では見られないような創作寿司が多いが、昨年にはセブンイレブンにインスパイアされたというコンビニフード風の品も仲間入り。それらのいくつかをご紹介しよう。

Yo!Sushiグラスゴー店(スコットランド)
きゅうり巻きの値段は日本の倍
ある英国人実業家が1997年に立ち上げたYo!Sushiは、ロンドンのソーホー地区に第1号店がオープン。
現在では英国内のみならず、フランスやノルウェー、UAEなどの海外フランチャイズ店も含めて100を超える店舗を擁しているという。
東京の歓楽街をイメージしたというポップな内装の中を走るコンベアに乗って、値段ごとに色分けされた小皿に盛られた品が流れていく。

グラスゴー店内。
価格設定は7段階。一番安い黄緑皿は、枝豆やきゅうり巻き(小8個)などのベーシックな品で3.50ポンド。1ポンド190円で換算すると約665円になる。
日本の大手回転寿司チェーン、スシローのメニューをチェックすると、きゅうり巻きは4個で150円と表示されているので、Yo!Sushiのものは日本の倍というわけだ。

メニューはこんな感じ。餃子やうどん、エビフライなどのあたたかい料理を注文することもできる。
ここで、英国と日本の現在の物価差を把握していただくために、マクドナルドのビッグマックを引き合いに出そう。英国では1個4.49ポンド(地域によって違いあり)なので約853円。対して日本は480円程度と聞く。だいたい何でも日本の2倍ちかいのだ。
ポップコーン·プローンとは.?
では創作寿司はどのようなものかというと、生魚をあまり好んで食べない英国人の味覚に合わせて、チキンカツや海老の天ぷら、北京ダックなどがネタに使われている。
下の写真は、「Popcorn Prawn(ポップコーン・プローン(海老)」と名付けられた、海老天とアボカドの巻き寿司。

創作寿司ポップコーン·プローン
チャイブをまぶした酢飯で海老天のカリカリの尾とアボカドを巻き、その上にキムチソースをかけ、身の部分を小さく切ったものを上に乗せている。海苔が内側の裏巻きだ。
こちらは4個で6.75ポンド、つまり約1283円。スシローのお持ち帰り用まぐろサーモンセット12貫(1290円)と同レベルなのだ。おもしろい味わいだが、なんとも高い。
KONBINIメニューとは?
冒頭で触れたように、昨年の春には日本のセブンイレブンのコンビニフードにインスパイアされたという「KONBINI」メニュー3品が登場した。
その3品とは、中華まん、ピザまん、ツナマヨおにぎり。KONBINIメニューのコーナーは、セブンイレブンのブランディングを彷彿させるデザインになっている。

これがKONBINIメニュー。
筆者はピザまんとツナマヨおにぎりを試してみることにした。

こちらがピザまん。上にふりかけられいるのは多分オレガノ。
セブンイレブンの「もちふわ×とろ~り ピザまん」を実食した経験がないので比較できないが、Yo!Sushiのピザまんの生地は、「もちふわ」というより「もちねち」とした食感だった。中の具は確かにピザらしいお味。
お値段は1個5.50ポンド、つまり約1045円!日本のピザまんは170円ぐらいが相場だと聞いているから、この差は実に恐ろしい。
そしてツナマヨおにぎりはというと…

こちらがツナマヨおにぎり。

ツナがたっぷり入っているが…
きれいな三角形のおにぎりで、側面に特製ふりかけをまぶしてある。中にはツナがたっぷり入っていたが、マヨネーズの味は感じられなかった。
これが1個5.25ポンド、すなわち約998円なのだ。
という具合に、日本人の感覚ではべらぼうに高価な高級コンビニフードだが、店員さんの話によると若い世代の間でそれなりに人気があるそうだ。日本を訪れる外国人観光客の間でも高い評価を受けている「コンビニグルメ」のイメージに惹かれているのだろうか。
スコットランドの国民食を使った特別メニュー
実は今回の筆者の本来のお目当ては、「高級コンビニフード」ではなく、スコットランドの店舗とイングランドの一部の店舗で展開されていた期間限定特別企画メニューで、前回の記事で紹介したスコットランドの国民食ハギス(https://dime.jp/genre/1831691/)を具材にした品々だった。

ハギスを使った特別企画メニュー。画像は公式ホームページのスクリーンショットの合成。
ハギスとイタリア生ハムの巻き寿司、照り焼きハギスにぎり、ハギスカツカレーという、なんとも興味をそそられるラインアップで、試食するのを楽しみにしていた。
ただ、筆者が居を構えるハイランド地方には店舗がなく、グラスゴー店に行く機会があったのは企画最終日。
ワクワクしながらグラスゴー店に入ると、ハギスメニューはなんと「売り切れ御免」(号泣)!
来年も同じような企画を実施してくれることを切に願う。
文/ケリー狩野智映
スコットランド在住フリーライター、翻訳者、コピーライター。ウイスキー愛好家で、ウイスキーの聖地スコットランドでの生活に至上の喜びを感じている。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。 「海外書き人クラブアウォーズ2025 話題賞」受賞。