
アメリカで使われる「ファンダム(Fandom)」とは、「ファン(fan)」=「ファナティック(fanatic=熱狂的な支持者)」に由来した、映画やアニメ、音楽、スポーツ、ゲームなど特定の対象に強い情熱を注ぐファンの集まりやその文化全体を指している。
日本でも「推し活」という言葉は、特定のキャラクターやアーティストや作品への愛情を行動で表現する文化として定着している。ファンの熱量はSNSで可視化されて拡散され、時には社会現象を生み出すほどの影響力があり、情報発信やイベント参加や商品購入など能動的に関わる傾向も強いため、企業やブランドは継続的な支持と影響力のある「経済的資産」として注目しているという。
そんな中で世界最大規模の世論調査会社イプソスは、熱狂的なファンコミュニティやファンダムの進化とブランドへの影響を多角的に分析した最新レポート『What the Future: Fandom 2025』を公開した。それによるとアメリカの成人の92%が「何かのファンである」と回答しており、特に18歳から34歳未満のZ世代はその割合が高かったという。Z世代と55歳以上を比較するとブランドやアスリートのファンである割合は2倍で、有名人やインフルエンサーに対するファン比率も4倍から5倍を記録したという。若年層のファンは、自身の支持対象が関与するブランドの商品やサービスを積極的に購入・利用する傾向が強く、その割合が非ファンと比較して2倍以上というデータもある。まさにファンダムが企業に「実利ある接点」になり得ることを浮き彫りにしているといえるだろう。
ファンダム活用の成功例
アメリカでは、ファンダムとの接点を積極的に戦略へと転換している企業も多い。ライブ配信プラットフォームの『Twitch』は、あえてスクリプトのないリアルタイム体験を提供することでファン同士の能動的な関与を促進して、ブランドとの共創につながる環境を構築しているという。SNSプラットフォームの『Pinterest』は、“推し文化”との親和性の高さを活かしてユーザーの情緒的価値とブランドの世界観を結びつけるビジュアルコミュニケーションを展開して、ファン心理を理解したデザインアプローチが支持を集めているという。
企業によっては、『WNBA(女子プロバスケットボールリーグ)』やユーススポーツなどの新興分野へのスポンサーシップを通じて、ブランドの共感性や社会的意義を高めてZ世代からの支持を獲得しているところもある。
ファンダムや推し活を活用する事例に共通するのは、「商品を売る」ことを第一義とせず、ファンが共感できる価値観や体験の中にブランドを自然に位置づけるという発想だという。ファンの文脈に寄り添うことが、ブランドの信頼とロイヤルティを高める鍵になっているようだ。
『What the Future: Fandom 2025』
構成/KUMU