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SMSの送信速度は4分の1まで短縮!アップデートされた衛星通信「au Starlink Direct」を使ってみてわかったこと

2025.07.21

2025年4月にKDDIがサービスを開始した、スマホと衛星で直接通信をする「au Starlink Direct」。山間部や海上など、基地局の整備ができていないエリアでも、空が見える状況でさえあれば、SMSの送受信といった通信が行える、画期的なサービスとなる。

7月時点では、累計接続人数が100万人を突破したとのこと。都市部で生活しているとなかなか実感しにくいが、確実にユーザーのニーズを捉えていることが伺える。

そんなau Starlink Directは、7月17日より、新たに衛星の軌道傾斜角の違う衛星からの電波を追加することで、接続の安定性、速度が向上した。実際にKDDIの県外エリアにて、衛星との直接通信体験会に参加してきたので、使用感を交えながら、詳細を紹介していこう。

軌道傾斜角の追加でSMS送信は約4分の1に

サービス自体は4月より開始しているが、対応端末の増加や他キャリアユーザーへの展開など、少しずつアップデートを重ねてきたau Starlink Directだが、今回のアップデートは、使用する際の安心感や、利便性を大きく改善するものとなる。

そもそもau Starlink Directは、地上にあるスマホと、地上約340kmにある衛星を直接繋いで、通信を行うというもの。現時点では、SMSでのテキストメッセージの送信や居場所の送信、Gemini in Google メッセージ(Android)、シンプルAIチャット(iPhone)といったサービスが利用できる。

衛星には、X(旧Twitter)でお馴染みのイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社の「Starlink」が採用される。Starlink衛星は、スマホとの直接通信を行う地上約340kmを周回するもののもう1段上、地上約550kmにも周回しており、こちらが地上局と接続することで、Starlinkコア網、auコア網、インターネットと繋がる。

これまで、au Starlink Directに使われているスペースXの衛星は、赤道を基準とした際に、軌道傾斜角が53度のもののみだった。そのため、スマホと衛星の直接通信はできるものの、接続までに時間がかかる、通信速度が遅い、途切れ途切れになってしまうという課題があった。

今回、新たに総務省の認可を取得し、約43度の軌道傾斜角を飛ぶ衛星からも、電波を発射できるようになった。これにより、衛星がカバーできる範囲がより細やかなメッシュ状になり、接続が安定。衛星の数は600基を超え、SMSの送受信速度は、これまで2分以内とされていたのが、30秒以内へと短縮されている。

シンプルAIチャットやGemini in Google メッセージとの接続で安心感抜群

アップデートされたau Starlink Directは、実際に試すと、数十秒で衛星通信に接続され、SMSといったサービスが利用できるようになる。なお、デュアルSIMなどの設定をしており、KDDI回線以外の回線が、ギリギリ電波を拾えるような状況だと、端末が衛星通信モードに切り替わらず、サービスが利用できないことがあるようだった。

衛星に接続された後は、エリア内にいるのとほぼ遜色ない形で、SMSの送受信ができる。KDDIはSMSの送受信にかかる時間を30秒以内と紹介しているが、体感では10秒もかからず、「送った……届いた!」程度のラグだ。もちろん、天候や衛星の位置によって状況は左右されるが、「空が見えれば、どこでもつながる。」というキャッチコピーも、大袈裟ではない。

接続が安定し、SMS送受信の速度が向上することで、遭難時や災害に巻き込まれた際に、すぐにSOSを発信できるようになる。位置情報の送信もできるため、レスキュー隊の初動の速さにつながるため、非常に重要なアップデートだ。

また、iPhoneの場合はシンプルAIチャット、Androidスマホの場合はGemini in Google メッセージが利用できるのも特徴。シンプルAIチャットは、「♯3333」あてにメッセージを送信すれば、AIが返事をしてくれる。

例えば、登山中に遭難してしまった際には、AIに「遭難時に気をつけるべきことは」といった形で質問をすることで、的確なアドバイスを受けられる。実質、検索をして対処法を確認するのと似たような形で知見を得られるため、安心感は非常に強い。今回、AIからの返事を受信する速度が向上したことで、使いやすく、返事がなかなか来なくて焦るといった状況も減るだろう。

2025年夏中にデータ通信サービスも開始予定! ほか3キャリアの動きは?

今回のアップデートでは、au Starlink Directの接続性、通信速度が向上したことが大きなトピックだが、KDDIは今夏中に、データ通信サービスを開始することも発表している。できれば外出、アウトドアに興じる人が多くなる、お盆休みあたりまでの実装をお願いしたいが、現在は実証実験の段階とのことなので、期待して待ちたい。

気になるのは、ドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルの動きだろう。楽天モバイルは、以前紹介したように、2026年第4四半期に「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」として、スマホと衛星の直接通信サービスを提供することを予告している。

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楽天モバイルの場合は、KDDIの衛星通信に使われるStarlinkではなく、ASTの低軌道衛星である「BlueBird」を利用予定となる。1つの衛星に搭載されるアンテナサイズが大きく、約50基で地球全体をエリア化する計画だ。

また、地上でも使用されるブロードバンドを提供することを明言しているのが大きな特徴。地上局との干渉リスクがあるが、ASTのハンドオーバー技術で、最小化できる見込みとのこと。ブロードバンドの提供であるため、原則的には市販のスマホがそのまま使えることになる。サービスインに先んじて、4月に行われた記者会見では、実際に衛星通信を使って、ビデオ通話をするデモンストレーションが行われている。

一方ドコモは、NTTグループでHAPSをエアバスと手掛けるほか、アマゾンが手掛ける「プロジェクト・カイパー」との提携関係になっている。また、5月に行われた決算会見では、前田義晃社長が「来年夏には(衛星通信の)サービスを開始する目処が立っている」と話している。どの衛星会社とタッグを組んでの提供かは明らかにされておらず、KDDIと同様に、スペースXと組む可能性もあるだろう。

同様に、ソフトバンクも5月の決算会見で、宮川潤一社長が、2026年中に衛星通信サービスを開始することをアナウンスしている。つまり、楽天モバイル、ドコモ、ソフトバンクの3社は、近い時期に衛星通信サービスを提供する見込みとなっており、来年には、4社横並びでサービスを提供する様相になる可能性が高い。

また、ソフトバンクはHAPSを使った「空飛ぶ基地局」でのプレ商用サービスを、2026年中に開始することも発表している。こちらはアメリカのSceyeと、日本国内でのサービス展開独占権を取得しており、飛行船をヘリウムで浮かせて、空中に基地局を作るようなイメージになる。

HAPSは、厳密にいうと衛星ではないのだが、地上基地局ではなく、空中に通信をする仕組みを作るという大枠では同じになる。ユーザー視点でいえば、圏外のエリアが山間部や海上からほぼなくなれば、大きな意義を持つだろう。

4キャリアの衛生通信サービスは、2026年中に出揃う見込みとなるため、KDDIのアドバンテージはおよそ1年間ということになる。先にサービスインしただけでなく、サービス品質を改善したKDDIが、残り1年間をどのように使い、ユーザーにアピールしていくのか。これからの展開が楽しみだ。

文/佐藤文彦

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