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「スマホ新法」って知ってる?新たな法律がAppleと世の中にもたらす本当の影響

2025.07.26

2025年12月18日に施行される「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホソフトウェア競争促進法、以下スマホ新法に表記を統一)が、激しい賛否両論を巻き起こしている。

日本には、というより近代民主主義国家には名称の違いはあれど「市場の独占を禁止する法律」というものがある。市場の独占は、結果としてその市場自体を衰退させてしまうからだ。しかし、「何を以て“独占”とするか?」という議論があり、その線引きは極めて難しい。

「モバイルOSの機能開放」を目指すスマホ新法に対して、大きな反対の声を上げたのがAppleだ。この新法は競争の健全化どころか、iPhoneの画面上に「悪貨」を氾濫させてしまう可能性も考えられるという。

スマホ新法の要点

iOSでアプリを配信する際、必ずAppleの審査を受けなければならないことは広く知られている。原則としてAppleが用意したプラットフォームの中でしかアプリのダウンロードはできず、故にiOSはAndroidよりも「クローズドなOS」と言われ続けてきた。

また、iOSにダウンロード・インストールしたアプリが有料だった場合、その課金はやはりAppleのApp Storeで行わなければならない。もっとも、このあたりは近年では大幅緩和され、特にゲームアプリがApp Storeの外での課金、いわゆる「アプリ外課金」に着手するようになった。その商行為をAppleも認めるようになった、ということでもある。

アプリ内課金には、俗に「Apple税」と呼ばれる手数料が発生する。これはアプリ開発者にとっては非常に大きな負担でもあり、アメリカではこのApple税を巡って泥沼の訴訟合戦が発生したほどだ。

内製のアプリストアとは異なる外部ストアの確立、そして広範囲からのOS(と、その機能)へのアクセス。これが法的に認められた場合、iOSに適合するアプリやガジェットが開発しやすくなるはずで、スマホの周辺機能にまつわる市場が活性化するのではないか?

国民生活センターが、このようなPDF資料を配信している。執筆者は公正取引委員会事務総局 経済取引局総務課 デジタル市場企画調査室 室長補佐の曽田竜市氏。資料にはスマホ新法の要点が分かりやすく記載されている。

<禁止事項>
○他のアプリストアの提供妨害の禁止
○モバイルOSの機能の利用妨害の禁止
○他の課金システムの利用妨害の禁止
○アプリ外課金等の提供妨害の禁止
○検索結果の表示における自社優遇の禁止
<遵守事項>
○取得データの利用者に対する移転に係る措置
○デフォルト設定の変更、選択画面の表示に係る措置
○追加インストールの同意、アンインストールに係る措置
スマートフォンソフトウェア競争促進法の概要と期待される効果-国民生活センター

その上で、曽田氏はこう解説する。

「現状、日々スマートフォンを利用するに当たり、不便や不満を感じることは多くないかもしれません。また、デフォルト設定されているアプリをそのまま使い、他の同種のアプリがあることに気づいていないユーザーも多いかもしれません。しかし、実際は特定少数の特定ソフトウェア事業者の競争制限的な行為により、新規参入が阻害されたり、ユーザーによるサービス切替えが困難にされたりなど、気づかないうちに選択肢が奪われている可能性があります

新法により競争環境が整備され、イノベーションの活性化が図られることにより、スマートフォンのユーザーにとって、「選択肢の確保」や「良質で低廉なサービスの享受」といったメリットが期待されます。

具体的には、

・アプリストアの新規参入が促進されることで、セキュリティ特化や子ども向け等個々のニーズに合ったアプリストアが開発される
・デフォルト設定の変更が容易になる
・支払手段の多様化により割引などきめ細やかなサービスの享受が可能になる

などの効果が期待されます」

オンラインカジノアプリが氾濫するきっかけに?

が、「そうは問屋は卸さない」とはっきり答えているのがAppleである。

iOSに適合するアプリがAppleの管理から離れることで、むしろ「良質で低廉なサービスの享受」ができなくなってしまうと主張しているのだ。

たとえば、日本では現在オンラインカジノが社会問題になっている。日本国内からオンラインカジノに課金し、有料プレイを行うのは違法である。これはオンラインカジノの運営者がマルタだろうと英領バミューダだろうと蘭領キュラソーだろうと関係ない(一方、現在日本政府はこれらの国・地域に日本からのアクセスの禁止を要請している)。

しかし、もしもApple以外のアプリストアを法の力で確立させた場合、悪意ある事業者がオンラインカジノアプリといった違法行為を行うためのプラットフォームを配信するのでは……という懸念があるのだ。

この意見は、確かに一理ある。上述の資料では、

新法により競争環境が整備され、イノベーションの活性化が図られることにより、スマートフォンのユーザーにとって、「選択肢の確保」や「良質で低廉なサービスの享受」といったメリットが期待されます。

と述べられているが、本当にそのようなメリットが発生する保証は一切ない。

Amazonでモバイルバッテリーを購入したいと思い立った時、とりあえず一番安い製品を買えばそれでいいのだろうか? Amazonにある製品はまさにピンキリで、中には認証マークのないモバイルバッテリーも存在する。「安いから」といって安易に飛びつくと、後で痛い目を見るかもしれない。現に、世界各地で低品質のモバイルバッテリーによる火災事故が相次いでいる。

Appleの手が届かない外部ストアの活動を認めることで、そのような「粗悪品を出品するメーカー」が氾濫する可能性も考えられるのだ。

話は未だ固まり切らず

もっとも、国もそうしたネガティブな可能性を考慮に入れている。

「他方で、スマートフォンは現代の日常生活に密着しており、サードパーティのアプリストアやアプリディベロッパーが新規参入することで、ユーザーの安全性等が損なわれる懸念があります。そこで、前述のように、新法では、指定事業者がアプリストアの開放やOS機能の開放を行うに当たり、セキュリティ、プライバシー、青少年保護等を確保するために必要な措置を講ずることができることとしており、これにより、ユーザーの安全性、利便性を確保しつつ、競争を通じてイノベーションの活性化を図ることで、ユーザー利益の向上に寄与することができる仕組みとなっています」

この部分について、では具体的にどのような懸念が例として挙げられるのか、上記の禁止事項の例外となるパターンは何か……という話が記載されていない点はいささか不親切に見えてしまう。が、幸いなことに日本では法改正の前に必ず「有識者会議」というものが開催される。大統領や国家主席のサインひとつで特定プラットフォームのブロックまで実行されてしまう国とは、そのあたりの構造が全く異なる。

『スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する検討会』の会議が前回開催されたのは7月11日のことである。そこから法の施行までにさらなる会議を重ね、より柔軟な法運用を模索する……というのが日本の省庁の行動原則だ。Appleは既に公正取引委員会に対して意見書を送っているが、これが会議で無視されてしまうということはまずあり得ない。今現在はAppleが求めているような「ガイドラインの明確化」に向けた作業と、「例外措置を実施する基準が適正かどうか」を議論するフェーズに入っているのは間違いないだろう。

スマホ新法が良貨を生み出す装置になるのか、それとも悪貨を氾濫させる原因になってしまうのか。我々は、この新法の推移を見つめ続ける必要があるだろう。

【参照】
スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令(案)」等に対する意見募集について-公正取引委員会
スマートフォンソフトウェア競争促進法の概要と期待される効果-国民生活センター
スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する検討会-公正取引委員会

文/澤田真一

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