
6月24日、iPhoneのウォレットにバーチャル化されたマイナンバーカードの搭載ができるようになった。モバイルSuicaやクレジットカードと同じく、ウォレットに組み込むことで物理カードがなくとも行政手続き等に臨めるようになったのだ。
いや、「臨めるようになった」というのは実は正確ではない。「臨めるようになりつつある」と書いたほうがいいだろう。現状、iPhoneにマイナンバーカードを搭載できるようになっても、それを受け付ける側(行政窓口、病院等)の設備導入が未だ完全ではない。このあたりについては後述するが、今現在は「技術革新の過渡期」なのだ。
では、現状どのような場面でiPhone搭載のマイナンバーカードを利用できるのか? それを検証してみよう。
マイナンバーカードをスマホに搭載するメリット

iPhoneのウォレットにクレカを搭載するメリットは、何と言っても「本体のカードを携帯しなくてもいい」という点だろう。
カードそのものがなくとも、スマホさえ持っていればタッチ決済で買い物に臨める。カード番号も今や連携するアプリでチェックできるため、カードは金庫にしまったままにしても支障はない。これと同じことが、マイナンバーカードにも見込めるのだ。
マイナンバーカードは、万が一紛失すると再発行が非常に面倒な代物である。マイナンバー総合フリーダイヤルに利用停止の旨を申し出た上で、警察に遺失届・盗難届を提出しなければならない。パスポートの紛失と同じような流れである。
しかし、これがスマホに搭載されたマイナンバーカードであればどうだろうか。カードそのものがなくなるわけではなく、利用者は遠隔操作で紛失したスマホのデータを消去すればそれで済む(もちろん、これは最終手段ではあるが)。
また、マイナンバーカードとスマホを紐付ければ、スマホの生体認証がそのままパスワード代わりになるというメリットも。
これはどういう意味かというと、たとえば住民票の写しをコンビニで取得する場合は利用者証明用電子証明書を利用する際の4桁の暗証番号の入力が必要になる。が、指紋認証や顔認証(iPhoneの場合はFace IDやTouch ID)を設定していれば、わざわざ暗証番号を入力しなくとも構わないというわけだ。
セブンイレブンで住民票の写しを取得してみよう!
というわけで、その使い勝手を確認するためにもセブンイレブンに足を運んでみよう。
セブンイレブンのマルチコピー機では行政サービスの項目があり、そこから住民票や戸籍の写しを取得することができる。利用時間は午前6時半~午後11時。24時間ではないものの、行政窓口よりも遥かに長い時間対応してくれている。

筆者はとりあえずマイナンバーカードとnanacoを搭載したiPhone 16eだけを持参し、住民票の写しを印刷した。正直、他にいろいろ書くことがないほど簡単な作業だった。
セブンイレブンのマルチコピー機であるため、料金の決済はiPhoneに搭載のnanacoが使える。また上述の通り、利用者証明用電子証明書の4桁の暗証番号はFace IDに置き換えられていて、画面上のテンキーを押す必要はない。これだけでも相当なストレス軽減になっている!

病院での対応は始まったばかり
では次に、このiPhone搭載マイナンバーカードを病院で使ってみよう。
ちょうど筆者は、水分の摂り過ぎで下痢をしてしまった。これがなかなか治らない。よし、この機会だからiPhoneを片手に病院に行こう……と思ったのだが、実は今の時点で筆者の地元(静岡市)にスマホ搭載マイナンバーカード(Android含む)を使った受付に対応している医療機関はない。そもそも、スマホ用カードリーダーの窓口設置の試みはこの7月から関東で始まったばかり。デジタル庁によると、
iPhoneのマイナンバーカードを各医療機関等でマイナ保険証として利用できるようになる予定です。厚生労働省において、7月から一部の医療機関等で実証実験を行った後、9月頃より環境が整った医療機関等から徐々に運用を開始する予定です。
(iPhoneのマイナンバーカードを使える場所と使いかた-デジタル庁)
だそうだ。となると、スマホ搭載マイナンバーカードが病院で使えるのは何だかんだで来年頃になるだろうか……。
それでも新システムは普及する!
スマホ搭載マイナンバーカードを利用できるようになるということは、病院窓口に新型のカードリーダー装置を設置するということである。
市内中心部にある総合病院はともかく、郊外のクリニックはこれに即座に対応できるのだろうか。このあたりは、それ相応の時間がかかってしまうだろう。日本の国政とは、あくまでも「協力要請」を呼びかけるものである。「9月頃より環境が整った医療機関等から徐々に運用を開始する予定」としているが、それはロシアや中国のように強制力のある命令を発布する形ではない。現場からの反発があった場合、それに耳を傾けなければならないのが民主主義国家である。
が、それらも含めて「時間の問題」であるのも確か。そう遠くないうちに、スマホ1台で何でも事足りる時代が必ず到来するだろう。
【参照】
行政サービス-セブンイレブン
iPhoneのマイナンバーカードを使える場所と使いかた-デジタル庁
文/澤田真一
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