
オフロードバイクのアフターパーツメーカー「ダートフリーク」が2025年3月に発売した「GE-N3」(39万6000円)は、休日は親子でパークを楽しめて、毎日の通勤や買い物にも使える電動原付オフローダーだ。
「親子でいっしょにパークを走りたい」という要望にこたえて誕生
ダートフリークでは2017年より「Meow」を発売、以降、子どものための電動バイクをプロデュースしてきた。現在は、キックバイクを乗りこなせるけれどもエンジン付きを乗るほど身長や体力のない子(3~4歳)も安全に乗れる「MeowⅡ」、7歳以上を対象にモトクロスもトライアルも楽しめる「WOOF」をラインナップしており、保護者たちの「親子でいっしょにパークを走りたい」という要望にこたえ、誕生したのが「GE-N3」というわけ。
初回分は即完売したという注目のプロダクトだ。
通称ゲンさん。
子ども用の「Meow」シリーズや「WOOF」とは違い、公道走行可能。エンジン付きバイク50cc相当で、普通自動車や原付以上の二輪免許があれば運転できる。
「オフロードバイクのようにリアが跳ね上がったスタイルではなく、街乗りで違和感がないようシートと平行にしました。
それでいてタイヤとのクリアランスを十分に取っていて悪路走行しやすくなっています。扱いやすいサイズなのでオフロード初心者も楽しめますよ」(ダートフリーク二輪事業部 浅野あかねさん)
タイヤはフロント17インチ、リア14インチ。
原付スクーターより大きく、トライアルのようなブロックが配されていてオフロードでも安定感がある。
サスペンションやディスクブレーキ、ハンドルなど自転車用パーツを採用。車両重量58kgと軽いため、自転車用のほうがバランスがよくコスト的にも有効だ。
体格にあわせてステップ位置を変更できる。シフト操作は不要だがこの調整ができるとできないでは大違い。アンダーガードが標準装備なのも頼もしい。
1回の充電で50~60km走行できる
気になるのは1回の充電でどれくらいの距離を走れるかだろう。
1回の充電で約50~60km走行できる(時速30km定速であれば100km)。
走行モードは3種類。アクセルレスポンスの違いで公道走行用2種類、パーク用1種類となっている。どれを選んでも走行距離は変わらないそうで、近所の買い物利用であれば週1回充電といったところか。
充電時間は家庭用100Vのコンセントで約4時間。
内蔵バッテリーは工具を使えば取り外せるので、ガレージで充電できない環境では自宅に持ちかえって充電するという手も使える。
ただ、「残念ながら容量的にキャンプでみなさんが持っているようなポータブル電源での充電はできません」(浅野さん)とのこと。
ツーリングにも使いたいところだが、1日4~5時間走るとすれば走行距離は最大約150km。途中で1~2回の充電が必要で現実的ではない。
浅野さんによると開発時にバッテリーを2台積みにしようという話も出たそうだが、それでは重くなり、せっかくの操作性に影響が出るため今のスタイルに落ち着いたとのこと。
ちなみにカーナビ代わりにスマホを使えるようUSBポートもほしいところだが、走行距離を考えてあえて不採用になったとも。
「GE-N3」をクルマに載せて出かけ、キャンプ場や宿の周辺に遊びに行ったりパークで遊んだりして、夜にコンセント(100V)を借りて充電するという使い方が正解と言えそうだ。
トランポというとハイエースやキャラバンくらい大きくないと…と考えるが、「GE-N3」1台であれば床がフラットになるなら軽バンでも積載可能。
「GE-N3」は重量58kgなのでさすがに両手で担ぎ上げるのは大変でラダーが必要だが、積載前に燃料を抜く手間はないし車内がガソリン臭くなることもない。
タイダウンベルトの固定場所さえ確保できれば安全に運搬できるし、1~2人分のキャンプ道具とともに余裕で収まる。
セレナクラスのミニバンであれば「MeowⅡ」との2台積みもでき、親子でパーク遊びも夢じゃない。
静かにトコトコ、オフロードを進む
「GE-N3」には鍵穴はなく、エンジンバイクで言うタンク部分に円盤状のカードキーをタッチするだけ。
本体右側のボタンでモードを選択し、走行モードに切り換わってはじめて動く安全設計だ。
3種類の走行モードのなかで「モード1」はバイクに慣れていない人でも安心な、ゆっくり加速するモード。
二輪免許を持っている人や原付に慣れている人は「モード2」が扱いやすいだろう。
公道利用不可の「モード3」はより元気に加速する。登坂性能も高まり、パークでも十分遊べるほどだ。
どのモードでもパワーは変わらず、最高速度は時速55km。
インジェクション搭載車が増えて大半のバイクは暖機運転不要となったが、短時間であってもエンジン音は周囲に響く。
「GE-N3」は非常に静かで、走行時にチェーンなどの摩擦音が聞こえるのみ。早朝の住宅街を出発する通勤時も引け目を感じずすむし、静かに現場まで向かえるので釣りやハンティングの足として優秀だ。
細身でオフ車っぽさを抑えたデザインは、町中で悪目立ちしない。50cc相当なので都市部でも駐輪場を探しやすい。
一方、山道では足つきがいいのでオフロードバイク初心者も安心だ。250ccクラスのオフロードバイクに比べると当然非力だが、山道をトコトコ走る楽しさは体感できるし、久しくレースやオフロードを離れていたライダーの足慣らしにもなり得る。
小さな電動原付だが、十人十色の楽しみ方が見つかる1台だ。
【問】ダートフリーク
文/大森弘恵