
開くとミニタブレットのようなサイズ感になるフォルダブルスマホだが、折りたためる機構を備えていることもあり、どうしても通常のスマホと比べると閉じたときに厚くなりがちだった。トータルでのサイズが大きいぶん、重量も増してしまう傾向がある。そんなフォルダブルスマホの欠点を補い、薄型化、軽量化を果たしたのがサムスン電子の「Galaxy Z Fold7」だ。
同モデルの厚さは、折りたたんだときですらわずか8.9mm。一般的なハイエンドスマホとほぼ並ぶ厚みで、重量も215gと軽い。Galaxy Z Fold7は「Ultra体験」を売りにしており、これまで同社のGalaxy S Ultraシリーズに搭載されてきた2億画素のセンサーも搭載する。超広角カメラも性能が向上し、接写が可能になった。
では、先代のGalaxy Z Fold6と比べて、使ったときの印象はどこまで変わっているのか。厚みや重量が変わったからと言って、本当に普通のスマホのように使えるのか。筆者は8月1日(ドコモ版は8月上旬)の発売に先立ち、実機に触れることができた。ここでは、そんなGalaxy Z Fold7の実力をレビューしていきたい。
ポケットに入れてもかさばらない感動的な薄さと重さ
Galaxy Z Fold7で真っ先に言及しておきたいのが、その薄さだ。特にこれまでGalaxy Z Foldシリーズなどのフォルダブルスマホを使っている人や購入を検討していた人は、サイズ感に驚くかもしれない。数値の上では8.9mmだが、手に取ったときの感覚は通常のスマホとほぼ同じ。画面が重なっているにも関わらず、ここまで薄いのは衝撃的だ。
開くと、その薄さがさらに際立つ。こちらの厚みは、わずか4.2mm。薄さを売りにしていたiPad Pro(M4)と比べても、そん色ないサイズになる。その厚みは、USB-Cの端子とほぼ同じ。さすがに端子を非搭載にするわけにはいかないので、スマホとしての限界に近いところまで薄型化を推し進めた格好だ。Galaxy Z Fold6の発売から約1年で、26%もの薄型化を果たしており、その姿はもはや別物と言える。
薄型化と同時に、画面サイズも拡大している。開いた時のメインディスプレイはより正方形に近づいており、これに伴って閉じたときのカバーディスプレイもこれまでより横長になった。Galaxy Z Fold6まではカバーディスプレイが縦長で、握りやすかった半面、キーボードが小さくなりすぎたり、アプリの表示が崩れてしまったりといった課題があった。
大画面化によってアスペクト比がより普通のスマホに近いづいたことで、こうした問題が解消されている。特に、文字の打ちやすさは一般的なバータイプのスマホとほとんど変わらない。薄さやメインディスプレイの大きさに言及されることが多いGalaxy Z Fold7だが、閉じたときの使い勝手が普通のスマホに近づいている点も見逃せないポイントだ。
開くと8インチとタブレット大になる一方で、重量は215gしかない。この数値は、ハイエンドスマホとほぼ同じ。むしろ、使っている素材によってはそれより軽いこともある。例えば、「iPhone 16 Pro Max」は227g、「Galaxy S25 Ultra」も218gで、Galaxy Z Fold7より重い。サイズから来る先入観もあり、最初に手に取ったときには、「本当に実機?」と思えてしまうほどだ。ポケットに入れたときにも、フォルダブル特有の重さを感じることは一切ない。
カメラは画質向上、Galaxy AIも大画面を生かせるように
カメラはメインのセンサーが2億画素に上がっており、センサーサイズやピクセルピッチが上がったことで、より高画質な写真を撮れるようになった。特に暗い場所での精細感が上がっており、フラッグシップモデルに迫る画質になっているのがうれしい。これまでのGalaxy Z Foldは、Galaxy SのUltraモデルには及ばなかったため、大きな改善と言えるだろう。また、超広角カメラが改善され、接写も可能になっている。
カメラはセンサーが大型化し、レストランの店舗内や夜景などの描写力が上がっている。超広角カメラでのマクロ撮影も可能になった
もう1つ画質が改善されたのが、メインディスプレイのインカメラだ。Galaxy Z Fold6までは、カメラ穴が見えづらいUDC(アンダーディスプレイカメラ)を採用していたが、Galaxy Z Fold7では、これが通常のパンチホールになっている。その差は歴然。メインカメラの違い以上に改善効果が分かりやすく、シャキッとした写真が撮れるようになった。
これなら、ビデオ会議にイマイチな画質で参加するといったことがなくなる。ただし、トレードオフとして全画面表示をした際に、カメラ穴が目立つようになってしまった。コンテンツの一部が欠けてしまうというわけだ。カメラのパンチホールはそこまで大きくないものの、UDCと違って映像の一部が完全に見えなくなるため、気になる人はいるかもしれない。大画面を存分に使えるというのがGalaxy Z Foldのコンセプトだっただけに、この点は少々残念だ。
逆に、Galaxy AIはより大きな画面を生かせるよう、ユーザーインターフェイスが改善されている。要約や翻訳をかけた際に、その結果だけをポップアップの画面として表示できる機能がそれだ。また、生成AIを使った画像編集をした際には、編集前と編集後を同時に表示できるようになった。機能的な進化とは言えないものの、よりGalaxy AIが使いやすくなった点は評価できる。
また、Galaxy S25シリーズから対応が始まった「Now Brief」という機能も搭載している。これは、AIが時間や場所に応じて、必要と思われるコンテンツをまとめて表示してくれる機能。カレンダーの予定を参照するだけでなく、天気予報なり、チェックた方がいいYouTube動画なりを一覧化してくれて便利だ。このNow Briefも、メインディスプレイにレイアウトが最適化されており、一覧性が高まった。
Geminiも進化、パフォーマンスも向上したがSペン非対応が残念
AI関連の機能では、Geminiとリアルタイムで会話ができるGemini Liveが、よりエージェント的に振る舞えるようになった。具体的には、画像を写しながら会話している最中に、その情報をアプリに受け渡すことができる。フライヤーを写しながら予定をカレンダーに登録したり、買い物したいものをSamsung Notesにまとめてもらったりといったことが可能になる。サムスン純正アプリも、これに対応しているのがうれしい。
さらに、Gemini Liveは、画面分割した際にその両方の情報を判別して、アドバイスをしてくれるようになった。例えば画面の左側にスニーカーのショッピングサイト、右側に自分が今日着ている服装の写真を表示させておき、その情報に基づいて最適な一足を選んでもらうといったことが可能だ。よりAIをアクティブに使えるようになっていると言えるだろう。
Ultraな体験には、パフォーマンスの高さも含まれる。Galaxy Z Fold7のチップセットは、クアルコムの「Snadpragon 8 Elite for Galaxy」。Galaxy S25シリーズと同じで、現行のスマホ用プロセッサーとしては最高峰の性能を誇る。動作がサクサクなのはもちろん、ベンチマークテストを行った結果もおおむね良好。性能の高いスマホを求めている人にも、いい1台と言える。
一方で、先に挙げたUDCのように、トレードオフになってしまった機能がほかにもある。Galaxy Z Fold6まで対応してきたSペンが、それだ。元々Galaxy Z FoldシリーズのSペンはオプションという位置づけで、別途購入する必要があったものの、Samsung Notesにサッとメモを取ったり、メールで届いたPDFを開いてその場で校正したりという時に便利なツールだった。
SペンはGalaxy S Ultraシリーズも内蔵しているが、画面サイズが大きいだけに、Galaxy Z Foldシリーズの方が使い勝手は上。それだけに、この機能が使えなくなってしまったのは非常に残念だ。あくまでSペンはオプションで、そこまで重視する人がいなかったため、今回は薄型化を優先した格好だが、過去モデルでSペンを使っていた人は、別の方法を考える必要がある。
もっとも、一般的なタッチパネルに最適化したタッチペンであれば認識するため、メモ程度であれば、これを利用するという手はある。必ずしも筆圧検知まで必要だったかというと、そうではないはずだ。とは言え、タブレット並みに大きな画面を生かす機能の1つとして、Sペンは他のフォルダブルスマホとも差別化要素にもなっていた。圧倒的な薄型化、軽量化で驚きを与えたGalaxy Z Fold7だが、その裏で犠牲になっている機能があることも念頭に置いておきたい。
文/石野純也