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〝失敗が怖くて挑戦できない〟のは性格のせいじゃない!行動経済学で考える「後悔の回避」対策

2025.08.11

私たちは日ごろ、「自分の意思で物事を決定して、最適な行動をしている」、「常にしっかり考えて選択をしている」、「自分の人生は自分でコントロールできている」と思いがちです。

でも実際は、そのときの状況や自らの感情、売り手側の巧妙な仕掛けなど、さまざまなバイアスに左右され、無意識のうちに誘導されています。

・「『限定』や『大人気』という言葉に弱い」
・「セール品に飛びついて後悔する」
・「ネット通販で買いすぎてしまう」

どれか1つでも当てはまるようなら、あなたの思考や行動はパターン化してしまっているかもしれません。

今回は、行動経済学コンサルタントの橋本 之克氏による著書『世界は行動経済学でできている』から一部を抜粋・編集し、行動経済学を「使えるツール」として日常に活かすヒントを紹介します。

【後悔の回避】「失敗が怖くて挑戦できない」のは性格のせいじゃない

■好きになっても告白できないのはなぜ?

学生時代に好きな人ができると、すぐに告白する友人がいました。

失敗も恐れずに告白する姿に、こんな質問をしたことがあります。

「告白して、フラれたらショックが大きすぎるんじゃない? なんですぐに告白できるの?」

すると、友人はこう答えました。

「僕みたいにモテない人の場合、告白しなければ、好きな人と付き合える確率はほぼ0%。でも告白すれば、それが20%にも30%にもなる。合理的に考えれば、告白しない理由はないよね」

この回答を聞いて、なるほどと思いました。

確かに、告白するほうが付き合える確率が上がるのであれば、合理的な判断と言えます。でも、人はそんなに簡単に好きな人に告白ができないですよね。

世の中の人はどのくらい告白をするのかが気になり、アンケートデータを調べてみました。ある調査によると、好きな人に告白したことがある人の割合は約6割、残りの4割の人は告白をしたことがまったくないそうです(*23)。

一方、同じ調査で面白い結果も出ていました。告白経験者のうち半数以上が「これまでの告白成功率は5割以上」と回答しているのです。なんと、半数の人は約2回に1回は成功しているということです!

好きなのに告白をしないままでいると確率はほぼ0%なのに対して、ダメ元でも自分からアタックした場合は半数の人が50%以上の成功率なのです。

告白することの成功率はかなり高いにもかかわらず、約4割は一度もしたことがないのは、なぜでしょうか。

ここに「合理的な判断ができない」という、人間の特性が出ています。

■「やれば良かった」と「やらなきゃ良かった」

私たちは、何かの決断や選択をするとき、いろいろな感情や思い込みが合理的な判断を押し退けてしまい、行動を誤ってしまうことがあります(これこそが行動経済学の本質ですね)。

告白して、もし失敗してしまったら……。心が傷つく、恥ずかしい、相手との関係が悪化してしまうかもしれない。そんな「やらなきゃ良かった」という後悔のリスクを負うくらいなら、何もしないほうがいいと考えてしまうのです。

この現象を、行動経済学では「後悔の回避」と呼んでいます。やりたいことがあるのに、なかなかできずにいる人には、この心理が働いているかもしれません。

これと似た心理的バイアスに「損失回避」があります。これは、人が損に対して強く反応し、避けようとする傾向です。

ただし、後悔による精神的なダメージは、損失の場合よりも大きくなります。なぜなら後悔の場合、そこに至る経緯の中で自分自身が判断や決定をしているためです。単に何かを失ったのとは違い、自分に責任があることが明確なのでショックが大きくなるのです。

後悔には「行為後悔(やらなきゃ良かった)」と「非行為後悔(やれば良かった)」の2種類があります。

出来事の直後は「行為後悔」のほうがショックが大きいです。一方の「非行為後悔」は直後の精神的ダメージは小さいものの、時間が経っても薄れずに長く残りがちです。

例えば、告白して失敗した場合、「やらなきゃ良かった」と思うかもしれませんが、時間が経つと徐々に忘れてしまいます。なぜフラれたのか考えて、反省や改善をすることもできます。

一方で、告白しなかった場合は、大きなショックを受けることはないかもしれませんが、「やれば良かった」という気持ちを何年も引きずることになったりします。

それにもかかわらず、「失敗したくない」「後悔したくない」という感情から、行動しないことを選ぶ場合が多いのです。

「やらずに後悔するならば、やって後悔するほうがいい」という名言がありますが、これも、「やらない人」が多いからこその言葉なのでしょう。

■「失敗したくない」がチャレンジを妨げる

「後悔の回避」の例として、転職について考えてみましょう。

転職希望者のうち実際に転職する人は、何パーセントくらいだと思いますか?

リクルートワークス研究所による「なぜ転職したいのに転職しないのか」(2023年10月19日)という調査では、「転職希望者の約87%は1年以内に転職していない」という結果が出ています。つまり、転職をしたいと思って、1年以内に転職に踏み切った人は、十数%ということです。これは、かなり少ないですね。

「上司が理不尽で許せない!」
「同僚との人間関係がうまくいかない!」
「仕事の割に給料が安くてやる気が出ない!」

このような不満を持ち、「こんな会社辞めてやる」「もうやっていられない」などと言いながらも、実際は転職をしないまま我慢している人が大多数なのです。

これはまさに、「後悔の回避」です。「もし新しい職場が今より悪い環境だったら」

「人間関係がうまくいかなかったら」などのリスクばかりを考えてしまい、「転職しなきゃ良かった」という後悔を回避するために、「変わらないこと」を選んでしまうのです。

新しいことにチャレンジして失敗するのを避けようとして、現状を保とうとすることがあります。この判断は、「現状維持バイアス」と関連しています。「現状維持バイアス」とは、未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状のままでいたいと考える心理的バイアスです。

何らかの行動を起こさなければ失敗はしません。ゆえに結局、「やらない選択」をしがちなのです。現状を変えず「何もしない」という判断をしてしまうわけですね。

この「後悔の回避」は、告白や転職などの決断だけでなく、日々の選択にも影響を与えています。

例えば、「ランチでいつも同じメニューを頼んでしまう」「新商品よりも、ずっと使っている商品を選んでしまう」というような日常生活の小さな選択もその1つです。

会社内での「何か新しい改革をやろうとすると、リスクをああだこうだ言われて反対される問題」も、決断を下す側の心理に対する「後悔の回避」の影響です。

「失敗したらどうするんだ?」
「今までうまくいっていたのだから、変える必要性がないだろう」
「会社の伝統を壊すのか」

現実的には、変わらないことによるリスクのほうが大きいケースもあります。変化を恐れた結果「ゆで蛙状態」になることもあります。それにもかかわらず、目先の「失敗への恐怖や不安」が先にくると、変化を避けることが正しいかのような意見が生まれてきます。

さらに、人は自分の考えを一度決めると、それを裏づける理屈ばかりに注目するようになります。これは「確証バイアス」と呼ばれる心理です。これによって反対意見はますます強固なものになり、結果的に新しいチャレンジができない状態になるのです。

こうした状況に陥る原因は、必ずしも性格や意思の弱さとは限りません。さまざまな心理的バイアスが絡み合った結果なのです。

■「後悔の回避」は投資のプロでも抗えない

投資のプロですら「後悔の回避」から抜け出すことは難しいという例があります。

ノーベル賞を受賞した経済学者のハリー・マーコウィッツは、過去のデータをもとに、リスクの抑制とリターンの獲得のバランスを計算して資産を配分する「平均分散法」の提唱者です。この理論でノーベル経済学賞を受賞しています。

そんな論理的なマーコウィッツ氏でも、自身の退職金の運用方法を尋ねられたとき、「将来の後悔を小さくするために、債券と株式に半々ずつ投資する」と述べたそうです(*24)。

債券と株式のどちらかに偏って投資すると、見通しが外れたときに後悔してしまいます。それを避けるために、単純に半分ずつ投資したわけです。ノーベル経済学賞の受賞者であっても、後悔を回避しようとするのです。

それほど、これは強い心理的バイアスなのです。

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