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「1年の計は元旦にあり」は行動経済学でみると誤りだった!?

2025.08.20

私たちは日ごろ、「自分の意思で物事を決定して、最適な行動をしている」、「常にしっかり考えて選択をしている」、「自分の人生は自分でコントロールできている」と思いがちです。

でも実際は、そのときの状況や自らの感情、売り手側の巧妙な仕掛けなど、さまざまなバイアスに左右され、無意識のうちに誘導されています。

・「『限定』や『大人気』という言葉に弱い」
・「セール品に飛びついて後悔する」
・「ネット通販で買いすぎてしまう」

どれか1つでも当てはまるようなら、あなたの思考や行動はパターン化してしまっているかもしれません。

今回は、行動経済学コンサルタントの橋本 之克氏による著書『世界は行動経済学でできている』から一部を抜粋・編集し、行動経済学を「使えるツール」として日常に活かすヒントを紹介します。

【現在志向バイアス】「1年の計は元旦にあり」は行動経済学的に誤りだった

■立てた目標に挫折してしまう理由

「1年の計は元旦にあり」と言われますが、みなさんは年始に何か「今年の目標」を立てたでしょうか。

「今年中に10キロやせる」
「年間100万円貯金をする」
「資格試験合格を目指して勉強をする」

そんな目標の数々は、予定どおりに達成できましたか?

ちなみに私は、毎年年明けに「今年こそこれをやろう!」という目標を立てていますが、だいたい途中で挫折してしまい、ほとんど達成できたことがありません。

詳しくは後述しますが、これには人間に共通の「習性」が関係しています。

例に挙げた、健康や美容のためのダイエット、お金を貯めるための節約、試験に合格するための勉強……。

どれも現時点よりも先の利益を得るための行動ですよね。

一方、目の前のお菓子を食べる、ネットで服を購入する、勉強のテキストを閉じてオンラインゲームをするなど、目標達成を妨げる誘惑の数々は、今この瞬間に手に入る利益です。

私たちはしばしば、「将来手に入る利益」よりも、「目の前にある利益」を優先してしまいます。「やらなきゃいけないのはわかっているけど、とりあえず後回しにして今はこれを楽しもう」と思ってしまいます。

これを「現在志向バイアス」と言います。

「先送り」にまつわる一連の行動には、「現在志向バイアス」以外にも、さまざまな行動経済学の理論が当てはまります。

■現状維持バイアス……変化を避けて現状を保とうとする心理。変わることによる損を避けようとする(例・今の仕事に不満はあるが転職の決断ができず、同じ会社に居続ける)。
■決定麻痺……選択肢が多すぎて決断を先送りしたり、決断自体をやめてしまったりすること(例・携帯電話の料金プランを見直したいが、プランやオプションが多すぎて、結局変えられない)。
■投影バイアス……今の状況が延々と続くと見込み、リスクを未然に防ぐ発想にならない。
■計画錯誤……計画の見通しが甘いために達成できないこと(例・夏休みの始まりには宿題の計画を立てるが、結局そのとおりに終わらずギリギリになる)。

このように、「ついつい先送りしてしまう」という行動には、さまざまなバイアスが影響しているのです。

■目の前の利益を優先したくなるのは「原始人」の名残?

「現在志向バイアス」とは、人が判断をする際に、未来よりも目先(現在)の利益を優先する傾向を指しています。

目の前のおいしいお菓子を食べる「利益」と、そのお菓子を我慢して将来やせるという「利益」を比較すると、前者を優先してしまいます。

前者の利益を受け取ってしまうと後者の利益を得られなくなるとわかっていても、目の前の利益を求めてしまうのです。

その結果、目標を軽視したり、先送りにしたりしてしまいます。

このバイアスの影響を受けると、お金の価値判断が正しくできなくなることがあります。

次の3つのうち、あなたならどれを選びますか?

(1)今すぐもらえる1万円
(2)1カ月後にもらえる1万100円
(3)1年後にもらえる1万1000円

多くの人が(1)を選んだのではないでしょうか。

金融や投資の基礎知識がある人なら(2)か(3)を選んだかもしれません。(2)は1カ月あたりの利回りが1%、(3)は年間利回りが10%という計算になります。リスクなしでこれほど高利回りの運用ができること自体、ちょっと信じられないような話です。

しかし実際は、多くの人が将来の金額よりも目の前の金額を高く評価し、今すぐもらえる1万円を選んでしまうのです(そういう私も(1)を選んでしまうタイプです)。

ただ、「現在志向」であることは必ずしも悪いことではなく、かつてはむしろ当たり前のことでした。

文明が発達する以前の人間は、いつ食べ物を口にできるかが不確実だったため、目の前に食べ物があれば「とにかく食べる」という現在志向は、生存するために十分合理的だったわけです。

たとえそこまで空腹ではなかったとしても、食べられるときに食べておかないと、力の強い人に奪われたり、腐って食べられなくなったりするかもしれません。

そうした損失を回避するためにも、利益を受け取るタイミングは先送りせず、目の前にある食べ物を口に詰め込むことが「正しい」選択だったのです。

現代の私たちにも、きっと無意識のレベルで当時の習性が残っているのですね。

こうした私たちの「現在志向バイアス」を刺激するマーケティング手法はいろいろあります。

「すぐに効果を実感!」
「会員登録完了後、すぐに使えます」
「○時までの注文は即日発送!」

こういったフレーズは、「効果が実感できる期間には個人差があります」「仮会員登録後郵送で申し込み資料を発送します」「お届けまで約1週間かかります」といったフレーズと比べると、購入意向を高めます。

また、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済も、「現在志向バイアス」に一役買っています。現金で支払うと、その場で手元から物理的にお金がなくなりますが、キャッシュレス決済ではその実感がないために、より多くのお金を使ってしまうのです。

マサチューセッツ工科大学のドラゼン・プレレックとダンカン・シメスターの両教授による、イベントチケットのオークションの実験では、クレジットカード使用のグループは現金使用グループの約2倍の金額を使ってしまうという結果になりました(*17)。

その場でリアルに現金を支払うという行動が伴わないため、お金を失う痛みが少なくなることが影響していると考えられます。

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